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揺らぐは人の心

某リョマ電
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

旗なびかず 風なし
揺らぐは人の心なり

逃げても、逃げても追われる。斬られた左腕と、素足に草履で逃げ回った足先にはもう感覚がない。
夢の中で、ああ夢だと思う。ああ、また、あの夢だと
「イゾ―!」「何処じゃイゾ~」自分を呼ぶ声がどんどん大きくなる。
恐怖がすっぽりと身体を覆い尽くす。
「わぁあああああ!」
無我夢中で斬りかかった。踏み込む足の間合いが甘かった。
刀の下に潜り込まれ、一瞬の間に後ろをとられ、力任せに押さえこまれる。拠り所の刀も奪われ、両腕をとられる。

「リョオマじゃ!わしの顔を見ぃ!リョオマじゃ!!」
信じられない。そこには幼馴染みのリョマの顔があった。
懐かしい温かい瞳が自分を見ている。
「りょおま!?」
「イゾ!おまんを探しちょったがぜよぉ。」
「・・・りょおま・・・りょおま!」
「りょおまぁああ」
子供のように抱きついてしまった。温かい体温に、土佐の匂いに、夢中にしがみついた。
「大丈夫じゃ、大丈夫ぶじゃ・・わしが助けちゃるきに」
低く、柔らかな声が響く。がっしりとしたリョマの手が背中を支える。
それだけで、どこか安心してしまう。
そのまま、温かい腕の中にいられたら・・・・。

 牢屋敷の格子越しに届く長い影を作る朝の光で目が覚めた。
下士の中でもさらに身分の低い以蔵の牢は、家畜小屋に似ている。
土間の床に、湿った藁、用を達すための置き便器、木桶に水が置いてあるだけの狭い牢である。ただ、その、扱いは家畜より酷いかもしれない。
朝番の牢世話役によって、ようやくイゾの本縄が解かれた。
牢番はだらしなく乱された牢着にも、明らかに情事の後が残る下肢の様子にも無表情に縄を解くと、再び牢に鍵をかける。

一昼夜、小手高手に縛られていたせいで、イゾの肩から先の腕は自分のものでないよう感覚になっている。
それでも、おぼつかない指先で、自分の下帯を解いき、桶の水で湿らすと、身体につい白濁の後の後始末を行った。
タケチが諭した衆道の作法で、大監察ゴトウの事後の後始末をしている自分が、惨めであった。

―だいたい、リョマはいい加減だ。タケチセンセとは大違いだ。-
夢の続きの囚われの現実に立ち返り、イゾは惨めさを払うようにそっと毒ずく。

―ほんとに、大違いだ。
ああ、そうじゃ!そして、いつも自分はリョマの歩尺に巻き込まれて、わけのわからないことになっちゅう。-
「都の女は気おくれしてまう」京で偶然逢った時、うっかり口を滑らせてしまった時のことが思い出された。
それが、どしてわしが組み敷かれて、リョマと情を交わしちょうことになるんろか・・・。
たしか、「ラケチセンセが念兄やったら、くそ真面目なことしか教えてもらっちょらんやろ。それで、京の女を悦ばすことができるか心配じゃ」そんなことを言われて、連れ込み宿に引き込まれた。 
ところがイゾは、おなごの抱き方を教えてもらっとる筈なのに、気が付いたら淫らに身体に火をつけられ激しく揺さぶられ続けた。
「もう・・無理や、リョマ、リョマ・・・」必死に哀願したが、「そんな色っぽい目で見られたら、止まらんぜよ」と、ちょっと困った様に眉をひそめ、目を細める。
終わった後は、いたずらっ子のような顔をして、「タケチセンセには、黙っときいや」と頭をなでる。
タケチセンセやったら、「侍としてだらしない」と叱られそうだが、そのままリョマの腕の中で丸くなる。リョマの心の臓の音が聞こえる。汗の匂いオスの匂いそして・・土佐の匂い。

だが、どうしてだろう。リョマの体にすっぽり包まれても、どこかがで、イゾは自分の帰る処はタケチセンセの処しかないと思っていた。

昨夜見たタケチの姿が、リョマの面影を消していく。『なんちゃ喋っちゃいかん』睦言の様に囁かれた言葉が耳に蘇る。

イゾは「なんちゃ喋っちゃいかん」縄目の擦れた後が残る両腕をさすりながら、自分に言い聞かせるように呟いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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