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アイアン男

洋画、2公開間近アイアン男、1の社長とイソセソ、えろなし。
1のねたばれ注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 「動くと死ぬぞ」
 初めて出会ったとき、君は俺にそう言った。のんびりした声で。飲み食いをしながら。
君が俺の命の恩人であるなどとは、その後の説明で分かった事だ。あの瞬間俺は
激しく君を憎んだ。殴ってやりたいくらいだった。そもそも俺は医者が嫌いなんだ。
 君の説明は簡潔で分かり易かった。俺の体が負った深刻な損傷と、それより更に
深刻な俺達の状況について、君は淡々と語った。同じように無感動な調子で、君は
テロリストと交渉し、通訳をした。俺は君の指示に従った。他人の指示に従うなんて、
二十年ぶりの経験だった。ホールドアップをしながら、俺はジュニアハイスクールの
教師を思い出していた。

 熱プラズマ反応炉を作り終えたとき、君は「普通の人生なら5回分は心臓を動かせる」
と言った。正確な計算だった。そして控え目ではあるが言葉には紛れもない賞賛が
籠められていた。どこかむず痒いような気持ちがしたが、その感情が何か当時の
俺には分からなかった。今は少し分かる。俺は君に感心されて嬉しかったんだ。
人生で何億回も賞賛されるうちに麻痺していたが、そういえば人間は褒められたら
嬉しくなる動物だったな。

 君はとびきり優秀な助手という訳ではなかったが、しかし恐ろしいほど忍耐強かった。
頭の中のプランに手が追いつかず、ヒステリーを起こした俺が汚い言葉で罵っても、
君は眉一つ動かさず俺を諌めた。その眼鏡の奥の変わらない温度の目には、
人を落ち着かせる作用があった。あの地獄のように暑い洞窟の中で、君はいつもきちんと
ネクタイを締め、俺達はジョークを言い合った。まるで一等地のオフィスにいるかのように。

 しかしイソセソ。君は俺を騙していた。君は嘘をついていた。それも酷い嘘だ。
君は出会った時、俺の中に死ぬ理由を見つけたんだ。
 計画通りにやれと俺は叫んだ。しかし君は出て行った。裏のドアから庭に出て行く
ような気軽な足取りで。この地上に俺の命令を聞かない人間がいるという事実を
久し振りに思い出したよイソセソ。どれほど俺が傷付いたか、君に分かるだろうか。
どれほど裏切られた、惨めな気持ちになったことか。君は酷いやつだ。
 だが俺の計画よりは君の計画の方が完璧だった。それは認めよう。君は俺の命を
救い、そして君の目的もきちんと果たした。最後に見た君の笑顔はやはり穏やかだった。

 イソセソ。俺は今空を飛んでいる。こう見えてなかなか忙しい。
そして信じられないことに楽しい。
 速く飛ぶと、或いは高く飛ぶと、君の居る場所が見えるのじゃないかという気が時々する。
いや姿は無理にしても、声くらいは。
 会いたかった家族には会えたか?揃って出てきて俺に紹介してはどうだ?そうしたら俺は
君がどんなに酷いやつかを君の家族に告げ口するのに。・・・いや、嘘だ。そんな事しない。

 空は最高だ。時々戦闘機に撃ち落されたりもするが大した事はない。高くて気分がいい。

 イソセソ。どうだ?出てきて俺と話をしないか?

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • いい! -- 2012-09-18 (火) 19:12:03

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