Top/57-98

そしてまた太陽が昇る

投下される方がいらっしゃらないようなので、またちょっとスレお借りします
規制続きなんでしょうか…

ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 57-19 57-87 の続き

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

夕暮れの薄暗い部屋の中、ベッドの上で胡座をかいた風間は、手の中で携帯電話を玩んでいた。
傍からは瞑想中にも見えただろう。
後頭部を壁に軽く預け、静かな呼吸だけが続いている。
風間は今、自分の中で一つ決着を付けたところだった。

体が満たされる瞬間、精神の一部も満たされる。
全てではないところがおもしろい、と風間はいつも自嘲気味に考える。
満たされる部分、それは大概気がつかないところにあるものだ。
餓えていたことに、満たされてから気がつくのだ。
そしてその満たされた部分がまた、飢えた部分を刺激して、怒りにも似た飢餓感はもっと強くなる。
何か満たされないものを抱えて、それが何かもわからずに、餓えている。
時折会って、お互いの飢餓を満たすために屠りあい、別れる。

二人の間にあるものは、愛でも情でもない。

女との、恋人とは言わぬ、この関係を何と表すのか風間竜一には見当がつかない。

星野を見送りに行った空港からの帰り、孔を車に乗せてアパートまで送ったことがあった。
しばらくしてから女に会った時、女は少しばかり目を細めて風間を見、
風間君…好きな人が出来たでしょう
と言った。
そんな人はいない、と風間は答えた。
女は笑って、
風間君って時々40歳くらいのおじさまなんじゃないかと思うことがあるんだけど、かと思うとやっぱり20歳そこそこの男の子なのよね…
と、吸っていた煙草を揉み消した。

風間が孔と偶然に再会し、孔のアパートで酒を飲んだ夜、風間の背中には前の晩に女が付けた爪の跡があった。
風間はその時ひどく乾いていた。
孔を車で送ってから、風間に常につきまとっていた餓えと乾きは強くなったようだった。
怒りと、焦りと、もどかしい感情が風間を支配していた。
行為に表れたのだろう。そのため、爪を立てられたのだ。

孔と飲むのは楽しかった。
正直に言えば、孔と居ること自体が楽しかった。
昂揚したような、どこか興奮しているような、感じたことのない感情が風間に襲いかかる。
自分を律しながら、孔との時間を楽しんだ。孔も楽しそうだった。
一変したのは、濡れたTシャツを着替えようとして、風間が孔に背中を向けた瞬間だった。
空気が変化したのが気配でわかった。
「せなか」
と言われて、前の晩に女と会ったことを思い出した。
「かのじょか」
と問われて、恋人ではない、と答えた。
女との関係を説明する気はなかったし、実際、説明のしようがなかった。
恋人ということにしておけば孔は納得したのだろうが、それは風間の中の実直さが許さなかった。
孔はきっと誤解しただろう。不実な関係を楽しむ男と思っただろう。
それはそれでいい。

問題なのは、孔に背中の爪の跡を見られたことが、風間自身に予想外に大きなダメージを与えたことだ。
まるで不貞のあとを見られたような。
孔は久し振りに会った良い友達で、スポーツを介した戦友だ。
浮気と言う表現は現実にそぐわない。
しかし…なぜ、孔を裏切ったような気持ちになるのか。
いや、違う。孔ではない。自分を裏切ったような気持ちが風間を襲うのだ。

風間の中で、答えはもう既にあった。本当は最初からあったのだ。
気がつかないふりをしていただけだ。
孔の気持ちが自分に向くことなど有り得ない。
初めての自分の恋愛は不毛なまま終わるだろう。
まあいい…。自分に正直でないより、ずっといい。

風間は不器用な男だったのだ。
自分が器用な男ではなかったことに、風間は安堵と同時に軽い失望も感じた。
そして、風間はまだ若かったのだ。
驚くほど老成しながらも、未熟な部分があることに、自分でも気がつけない程、まだ若かったのだ。

風間は掌の中の携帯電話を開き、ボタンを押した。
何度かのコールの後、女の声が聞こえる。
風間はゆっくりと口を開いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ようやくそれぞれ自分の気持ちに気が付いたナリ


このページを共有:
  • このページをはてなブックマークに追加 このページを含むはてなブックマーク
  • このページをlivedoor クリップに追加 このページを含むlivedoor クリップ
  • このページをYahoo!ブックマークに追加
  • このページを@niftyクリップに追加
  • このページをdel.icio.usに追加
  • このページをGoogleブックマークに追加

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP