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愛した人

携帯から失礼します
オリジナルで別れの話です
とある泣ける歌を聞いて、それをネタにしてますが、キャラはオリジナルです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

目の前のグラスが、まるでスローモーションみたいに、ゆっくりと床の上へ落ちていく。
でも、衝撃音は耳を素通りしていった。
ただ、目の前にいるハルの、怯えたように竦められた細い肩と、零れ落ちそうに見開かれる濡れた瞳だけが、酷く印象に残っていた。

「……ッてぇ、」

指先に走った痛みに、僕は小さく舌打ちした。
しゃがんだ足先へと、再び転がっていく破片が傷付けた指先に、見る間に血が滲んでくる。
フローリングの床に散らばるガラスの破片と、無残に花弁を散らした花と水、そして、それに紛れるような涙の跡。
さっきまでハルが立っていた場所に、ポツンと残された丸い水滴を、血の滲んだ指先に掬い取ると、苦い痛みが広がる。

バラバラになった花とグラス。

かき集めたって元には戻らないそれは、まるで俺達を表しているみたいだった。
じわじわと足元が崩れるような感覚に、僕は拳を握りしめた。
柔らかな癖のある薄茶の髪も、少女めいた顔も、細く小さな身体も、僕とは真逆なハル。
出会って恋に落ちて、それから二人で重ねた日々が、過去へと流れて朽ちていくような気がする。

散らばった破片もそのままに、暗鬱とした気持ちのまま僕はソファーに横たわった。
見上げた天井のライトに、キリッと目の奥を苛まれて、その痛みから逃れる為に瞼を閉じる。
浮かんでは消える、過去のハルの優しい笑顔と、見慣れてしまった今の泣き顔。
愛しい気持ちも、やる瀬ない気持ちも、ゴチャゴチャになって傷付け合った心は、もう無理だと告げている。
今の歪んだ関係が一番ハルを傷付けていることが、辛くて苦しい。
たった一言で愛しい人を解放してやれるのだと思えば、この頬を伝っていく涙も他人事のように思える。
もう僕は、ハルへと繋いだ鎖を手放さないといけないのかもしれない。

「……もう、終わりにしよう」

あの激しい喧嘩から数えて5日目の雨の休日。
朝からの憂鬱な天気のせいだけではなく暗転した部屋で、僕はハルに終わりを告げた。
苦い決意を固めて、覚悟も決めて、伝えた別れの言葉の衝撃は、予想以上の痛みで胸を貫く。
大きく見開かれたハルの瞳に映るのは、痛みに歪んだ僕の顔。
微かに震えるその細い肩を見ていることが耐えきれなくて思わず抱きしめた。
この愛しいという気持ちは嘘なんかじゃない。
そう腕の力に込めるけれど、でも、もう戻れない。
掛け違えたボタンを掛け直すには二人でいた時間が経ち過ぎていて、ハルも僕も、充分過ぎるくらい互いに傷付け合って、僕らの心は傷だらけだった。

「……わかった」

そう言って、そっと僕の胸を押し返すハルの、冷たい指先が痛い。
サイズの合わない、肩の位置が落ちた僕のTシャツを着たハルが、僅かな温もりを残して僕の腕から離れていく。

「……俺、ショウの事、すごく好きだったんだ」

狭い部屋からすぐの玄関で、独り言みたいにハルが呟く。

「さよなら、ショウ」

こちらを振り返ったらしいハルの姿は、見れない、見てはいけない。
ただハッキリと残された別れの言葉だけが、残響として耳に届く。
半身をもがれたような痛みに、僕は立ち尽くすしかなかった。

どのくらいそうしていたろう。
外の雨が止んで、カーテンの間から陽の光が滲んできた。
生まれ変わって、またキミと出会えたら…、そんな女々しい事を考えながら、ハルのいない玄関へ、ようやく顔を向ける。

さよなら、愛しい人。
もう振り向かないで、歩き出して。

声にならない願いを噛み締めて、僕はカーテンを開き、眩しい光の洪水を部屋へと招き入れた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最後、2つ分けになってしまいました
不手際ですみません


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