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Ground Zero(前編)

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                     | KOF01より、中ボス×ストライカー(部下の方)
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 公式小説読まずに捏造気味
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男が治療室を訪れた時、部下は文字通り死んだように眠っていた。
肉体の損傷は既にないも同然、記憶データの修復も完了している。
しかし、あとは目覚めを待つばかりという状況にもかかわらず、
寝台に横たわる彼の姿は、生気というものをほとんど感じさせなかった。
褐色の肌はやや青褪め、鍛えられた手足は無防備に投げ出されている。
呼吸のたびに上下する胸の動きも、注意深く観察してようやく見えるほどだ。
心拍と脳波を測る計器の音がなければ、遺体安置所と見紛うほどの静謐。

男は寝台の縁に腰を下ろし、改めて部下の姿を覗き込んだ。
シーツの上へと無造作に置いた手が、横たわる褐色の指先と触れ合う。
意図せずして触れたそれは見た目より冷たく、男をわずかに驚かせた。
無論、冷たいとはいえ死人のそれではない。
微かな湿気も感じるところからして、清拭の直後ででもあったのだろう。
しかしその冷たさはやはり、男の記憶にある部下の印象とは程遠い。

――要らぬことをしてくれる。
今はもういない、自らと同じ遺伝子を持つ者に対し、男は内心で呟く。
自らもクローンでありながら、いや、クローンであったからこそなのか。
まだ利用価値のある戦力を、独断で使い潰そうとした愚かな男。

確かに、組織の誇る科学技術は、戦力としての人間を容易に生み出せる。
優れた戦闘員を規格品のように複製し、量産品のように使い潰せるほどに。
だが、男のクローンであった彼は、ひとつ重大な履き違えをしていた。
規格品だろうが量産品だろうが、生み出すには相応のコストを要するのだ。
まして、組織が擁する技術の粋をもってしても、自我までは複製できない。
優れた身体能力と安定した精神、そして忠誠心を全て兼ね備えた人員は
幹部を含めた組織全体を見渡しても、未だ数えるほどしかいないというのに。
その貴重な戦力を、かのクローンは惜しげもなく捨て駒として用いたのだった。

男がそれを知ったのは、作戦が失敗に終わり、事後処理も完了した後のこと。
だが、男は悼むことなどしなかった。組織の技術は、そのためにこそ存在する。
母体から生まれた人間であろうと、培養槽で生まれたクローンであろうと同じ。
不用な者は廃棄される。だが有用な者はそうある限り、死ぬことを許されない。
それこそが己も含め、組織に属する者の宿命なのだと男は考えていた。

肉体の損傷を修復し、あるいはその代替を用意する。
一時は消去された記憶データを復元し、生前のそれと繋がるよう再構成する。
そうした、いわば人間として最低限の蘇生にすら、一年以上の時間を要した。
実戦に参加できるレベルにまで回復するには、さらに時間がかかるだろう。
だが、そのために必要不可欠な――当人の意識が、未だに戻らない。

青年の蘇生が始まってからというもの、男は毎日この部屋を訪れていた。
横たわる彼の傍にしばし留まり、経過を観察してから本来の職務に就く。
肉体の蘇生は成功した。理論上は、いつ意識が戻ってもおかしくない。
だが彼は目覚めなかった。男は毎日訪れ、そのたびに期待を裏切られた。
有能な人材だ。健在でさえあれば、直近の作戦にも同行を命じただろう。
彼の死を悼んだことこそなかったが、不在を惜しんだことは数知れない。
たとえば今、横たわる彼を、片時も目を離すことなく見守るこの瞬間も。

しかし、総帥から直接に与えられる任務は、当然ながら私用に優先する。
時計を見れば、文字盤は既に立ち去るべき刻限を示しつつあった。
戻らねばならない。男は腰を上げ、寝台に置いていた手を離そうとして――

その時不意に、指先に小さな手応えを感じた。

振り返る。
何気なく触れ合ったままでいた、青年の手が震えていた。
目視では見逃しそうなほどの、微かな動き。
だが肌で感じ取るには十分の、確かな動きで。

――意識が、戻ったのか。
男はすぐさま寝台に向き直り、部下の顔を覗き込んだ。
しかし彼はそれ以上動くことなく、変わらぬ無表情で眠っている。
生気を感じさせない姿のまま、呼吸だけを規則的に繰り返して。
ただ指だけが、解けるでも縋るでもなく留まっている。
離そうと思えば振り払うことすら要しないほどの、極小の力で。

何故か、ひどく弱々しいと感じた。
十分な戦闘能力を持つ部下であることは、熟知している。
当然だ。彼はそのように造られ、強化を受けてきた。
しかし、意識の戻らぬまま、男の指に触れて眠る彼の姿は
それとは無関係に脆く見え、このまま立ち去ることを躊躇わせた。

再び寝台に腰を下ろし、先刻微かな震えを感じさせた手を取る。
両の掌で包み込むと、またしても応えるように指先が震えた。
それは目覚めの前兆なのか、単なる筋肉の反射にすぎないのか。
組織の科学技術をもってしても、他者の意識までは読み取れない。
しかし男は、その手を離さずにいた。
それで部下が目覚めるなどと、予測したわけではない。
ただ、そうせずにはいられなかった。理由も、根拠もなく。

最初に感じた冷たさは、時間の経過と共に薄れていった。
当然だ。人工的に創り出されたとはいえ、生身の肉体である。
本質は母体から生まれた人間と変わらぬ、血の通ったそれだ。
負傷すれば出血を伴う。死が迫れば、恐怖を感じる。
違いなどない。何一つ。

ふと。
傷痕に横切られた、青年の瞼がわずかに動いた。
見守る男の眼前で、それはゆっくりと開かれる。

長い眠りから覚めた青年は、無防備な表情でひとつ息をついた。
眩しげに数度瞬きをした後、当て所なく視線を彷徨わせる。
やがて彼は、手を取られているのに気づいたようだった。
未だ焦点の曖昧な視線が、男の手から腕、上半身へと伝う。
そして視界に男の顔が入り、二人の目が合ったその瞬間――
青年は突然その瞳を見開き、怯えたように顔を強張らせた。

「どうした」
呼びかけても、青年は応えなかった。否、応えられなかったのか。
喉の奥からは声の代わりに、引き攣った呼吸音が漏れるばかりだ。
握っていた手は緊張に強張り、瞬く間に冷たい汗を帯び始めていた。
心拍数を測る計器の音が、まるで警告信号のように速さを増す。

視線が合ったことがきっかけであったかのような、唐突な豹変。
男は少なからず驚いたが、同時に思い当たる節もあった。
蘇生の際に再現した、青年が一度死を迎える直前の記憶データ。
現場の崩壊に伴い、本部の指示を仰いだ彼の瞳に映ったのは
自らを切り捨てると宣告した上司の顔――男と同じ形のそれであった。
実際にその宣告を行ったのは男ではなく、そのクローンであったのだが
同じ造作の顔を目にしたことが、想起の引き金となったのだろうか。

意識が戻って間もないのは、かえって僥倖であったかもしれない。
身体を十分に動かせる状態であったなら、彼はすぐさま手を振り解き
状況もわからぬまま跳ね起きて、半狂乱で逃げ出した可能性もある。
その想像すら容易にさせるほど、彼の表情が示す絶望は深かった。

本来なら直ちに医療班を呼び、引き継ぐべきであったろう。
たとえば薬で眠らせてしまえば、落ち着かせるのも容易だ。
だが、男はそうしなかった。
今はそれよりも、必要なことがあるように思われたのだ。

見開かれた瞳を覗き込み、呼びかける。
「私だ」
名は、あえて名乗らなかった。
男のみならず、彼のクローンにもしばしば用いられるその名は
それに裏切られた青年にとって、恐慌を深めるものでしかない。
「00だ。……判るか」
代わりに男はコードネームを名乗り、青年の手を強く握った。
自分こそがオリジナルであり、敵対の意思がないことを伝えるために。

はたして青年は、半ば朦朧としながらも、男の意図を理解したようだった。
クローンとオリジナル――姿形は同じでも、態度は違うのが伝わったのか。
未だ弱々しくはあったが、握り返してくるのが今度は明確に感じ取れた。
口を開き、掠れた声で何か言おうとするのを、男は首を横に振って制する。
意識が戻ったばかりなのだ。今は、負荷をかけるべき時ではない。
話を聞くのは、青年が心身ともに落ち着いてからでも遅くはないはずだ。
何より、長らく拠り所を失っていたその表情が、あまりに痛ましかったので。

青年が意識をはっきりと取り戻すまで、男はただその手を取って傍にいた。

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つけ方はこんな感じでいいのかな。変なとこあったらスマソ。
読んでくれた方、ありがとう。


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