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再見

1乙です
ピンポン ドラチャイ
56-429 56-448 56-456 の続き
56-456の半年後 じわじわとしか進まない二人だよ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「コンちゃんさー、つうかさー、普通見えねーでしょ」
「見える」
「おっかしーだろー。なんでホームにいる孔ちゃんが、ロマンスカーに乗ってる人間ハアクできるのよ」

あるうららかな土曜日の午後、孔は木村に誘われて、町田まで遊びに出た。
木村は時々、思い出したように孔を遊びに誘ってくる。
江の島からは小田急線で一本。程々に遠く、程々に近い。
初めて行く街は、賑やかでおもしろかった。
駅ビルを冷やかし、木村のナンパに呆れながら付き合い、109の前でたむろする女の子の化粧に圧倒され、ラーメンを食べ、そろそろ帰るべぇかと言う木村と二人、駅のホームで急行を待っていたところだった。

向いの新宿行きのホームに、藤沢から町田を通過して終点へ向うロマンスカーが入ってくる。
停車しないロマンスカーは、駅の構内に入るとスピードを落とす。
見るともなく乗客を眺めていた孔は、その中に見覚えのある顔を見つけて声をあげた。
「風間!」
ほんの一瞬だったが、確かに風間だった。
向こうもこちらのホームを眺めていたらしい。
風間は一瞬驚きの表情を見せ、手を上げ、笑った。
風間の姿はあっという間に視界から消えた。

孔は少し興奮気味に、よそを向いていた木村に「風間、いたよ今! ロマンスカー!」と言った。
「あ? 風間って誰?」
「誰て…海王の、風間。私、試合した」
「あーあーあー、あの『海王の風間』」
「そう」
「ロマンスカー? 乗ってたの見えたの?」
「うん」
「うっそでしょー。通過列車よ。走ってたじゃん」
「私うそ言わないよ」
と続き、先の会話になったのだった。

「木村、卓球の玉と、今のロマンスカー、どちら早い?」
「そりゃー、ロマンスカーに決まってるでしょー」
孔は額に手を当てた。
「木村が卓球へたな理由、今わかた」
「なんだよそれー」
停車した片瀬江ノ島行きの急行に乗り込みながら、孔は今見た風間の姿に思いをはせた。
髪が伸びてた。
髪が伸びた風間を見てみたい、と言ったのは自分だ。だが、
…なんだか知らない人みたいだ。
知らない人間もなにも、実際何も知らないのではあるが。
孔は風間と親しく付き合ったことはない。
繋がりは卓球だけ。
星野が渡欧するというので空港に見送りに行った時に顔を合わせて以来、接点はまったくなかった。
あれから半年の間に髪が伸びたのだろう。空港で会った時は眉はあったが、髪の毛はまだ剃っていると言っていた。
私服で、髪が伸びて、普通の様子をしている風間に少しどぎまぎした。

木村が吊り革につかまりながら孔に言った。
「ねーねーねー、やっぱりつるっぱげだった? 海王の風間」
「つ…つる?」
「あー、髪の毛なかった?」
「あたよぉ。まゆげもある」
「へぇー、やっぱ伸ばすんかー。あたりまえかぁ」
「かこよくなてたよ」
「想像出来ねー」
孔は笑った。確かに想像出来ないかもしれない。
「木村、『卓球通信』見てないか?」
「えー? 読まないし見ないよー。俺卒業したじゃん卓球。ゲンエキの時も見たことねー」
「風間、載てるよ」
「なになに、孔ちゃんたら、わざわざチェックしてんの?」
図星を指されて、孔は一瞬言葉に詰まった。
卓球通信を手にしたら、風間を探してしまうのは事実だが、それは星野の記事を探すのと一緒だ。
木村の言い方はまるで、違う意味に聞こえる。
「そんなこと言てない。本見てたら目に入る」
「あー、何赤くなってんのよー」
「赤くなてない」
本気で孔が怒りそうだと見たのか、木村は口を閉じた。

孔は突然暑くなって、Tシャツの首をつかんでパタパタと空気を送り込んだ。
しばらく無言が続いたが、木村はどうにも落ち着かないらしく、口の端をもぞもぞと指で掻いている。
孔は木村のそぶりに気がついたが、無視して吊り広告を見るふりをしていた。
我慢出来なくなったらしい木村が孔をつついてくる。
「孔ちゃーん」
「なに」
「怒ったのー?」
「怒てない、別に」
「怒ってるじゃーん」
「怒てない」
「拗ねないでー」
「拗ねてない」
「んもー、そんなかわいい態度取っちゃったらさー」
「なに」
「恋する乙女みたいって言われちゃうよー、俺に」
孔は黙って木村の足を踏んだ。
「ぐわー! いでででで! 言わない言わない!」
「よし」
「孔ちゃん乱暴」
「人からかう、木村悪い」
「だってさー、孔ちゃんなんか嬉しそうだしさー」
「嬉しそう? …そう?」
孔は慌てて顔をこすった。
嬉しそう? そりゃ、まあ、久しぶりに旧友に会ったようで嬉しい。
旧友と言えるかどうかは別として、風間に会えたのは嬉しい。
風間もこちらを認めて、笑ったのが嬉しい。
あんなところで偶然、お互いを認識できたなんて、ちょっと奇跡みたいじゃないか。

藤沢に着いたところで電車を降りると、孔は知らずに息をついた。
風間もここからロマンスカーに乗ったのだ。今までも気がつかないだけでどこかで交差して、どこかですれ違っていたのかもしれない。

「孔ちゃんこれからどうするー?」
「ん…帰ろかな」
「そかー、じゃまたなー。俺、飯食ってくわー」
「バイバイ」
孔は少し迷ったが、一駅分、歩くことにした。たいした距離ではない。夕焼けがきれいだ。
一人になって、自分の思いに沈み込めるのがありがたかった。
孔の頭の中はいま、風間のことでいっぱいだ。
会えてよかった。一瞬だったけど、顔が見れて嬉しい。
風間はもうとっくにロマンスカーを降りただろう。どこへ行くのだろう。
…誰と、会うのだろう。
先程の風間の顔が浮かぶ。
驚き、そして笑顔になった風間。
いったい俺は何だって好きな女の子のことを考えるみたいに風間のことばかり考えているのだ、と思いながら、なんとなく温かい気持ちを抱えて、孔はゆっくりと歩き出した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナンバリングミス失礼しましたorz 1/5が2つあるよ


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