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無題

オリジナル、某スレのお題からいただいた妄想

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

高層ビルと高層マンションの間に、その家はあった。瀟洒な洋館のはずが、近隣での通称はお化け屋敷である。
かつては綺麗に手入れされていた庭も、持ち主が変わった後は一切構われなくなり、壁には蔦が這っている。
「……いつ見てもすごいな」
今の持ち主はほとんど屋敷の外に出ない。持ち主以外にも何人か住んでいるらしいが、彼は見た事がなかったから、半信半疑である。
「……さて、行くか」
そう呟いて彼は荒れ放題の庭に足を踏み入れた。落ち葉が降り積もった庭は、歩くだけで乾いた音がする。
「ちょっとは手入れしろよな」
彼は一人呟いてから、思い直す。
「ま、これくらいの方があいつらしいか」

カサカサと草を踏み分ける音で、彼が来たことが解った。使用人達に下がるように伝え、彼を迎える準備をする。
……と言っても、座布団一枚出すことくらいしかしないが。
「いるか?」
彼の声に振り返る。窓から室内を覗いている彼に、クスリと笑いかけ曖昧に頷く。
「早くこっちにおいでよ」
「おう、今行く」
窓から普通に侵入してくる彼を見て、私は呆れたように笑った。
「……んだよ」
「ん?……別に」
玄関遠いし……と言い訳する彼を横目に、私は出来た物を確認する。……これを彼に渡せば……。
「…………出来たんだな、ついに」
彼の優しい声に少しだけ泣きそうになる。
「……うん」
「そうか……」

私から手渡されたものを彼は確認する。一応念を押した。
「これで……いいんだな?」
私はコクリと頷いて微笑んだ。
「うん……もう、大丈夫」
「解った」
彼は、私が恋した相手の姿で……私を抱きしめた。彼の口から小さな歌が聞こえる。それを耳にしながら、私はゆっくりと身体の芯から溶かされていく。
歌が途切れた。私の唇に彼の唇が重なる。そこからも、私が溶かされていく。
彼が背中を撫で、耳元で何かを囁いた。私は彼に返事をする。
「……私も……」
…………返事はそこで途切れた。

後日、彼は目の前に広がる瓦礫の山を、ぼんやりと見上げる。
近隣では有名なお化け屋敷が崩れたのは、彼が私と名乗る地縛霊を成仏させた翌日の事だった。
「そんな力があるなら……俺を拒む事も出来たのにな」
私は彼に頼んだのだ。これを書き上げるまで待ってほしい、書き上がったら好きにして構わない、と。彼は待つことを選択した。
「ああ、そうだ」
彼はポケットから文庫を出して、瓦礫にもたれ掛かった。
「本になったぜ、アンタの原稿」
一人呟いて彼は笑う。浄霊したので、ここにはいないはずなのに、風に混じって「ありがとう」と聞こえた気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お題は「廃墟でものを書き続ける男(フェイク済み)」で最後はこんな終わり方を妄想。元スレで書くのは憚られたのでこちらで。


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