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歩くような速さで

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  愛某、缶と彼
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  テラ捏造だよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >>393サンキューサ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 その場に駆けつけたときには既に、目的の半分は果たされていた。
 遠くに、先ほど聞いた悲鳴の主と思われる女性の姿、近くに、よろめき駆けてくる、フルフェイスのヘルメット。
 そして、そのちょうど中間に、倒れたバイクと、バッグを抱えて転がった、男の姿があった。
「ちょ、お兄さん、そいつ止めて! 引ったくり! 引ったくり!」
「言われなくても、見りゃ判るっての」
 男の叫びに呟きながら、両手をいっぱいまで広げ、フルフェイスの進路を塞ぐ。
 狭い路地である。相手は一瞬、こちらを避けるか迷ったようだが、すぐに方針を強行突破に切り換え、一気に速度を上げた。
 恐らく自分が、見た目に甘い、優男だからでもあったろう。しかし生憎、神部健は、そういう理由で軽視されるのが、何より嫌いな男であった。
「はいはい、ストーップ。さもないと、」
 続きを待たずに殴りかかってきた腕を躱して、引っ掴む。そのまま、突進の勢いを逆手にとって反転すると、神部はアスファルトを踏みしめて、一気に相手を背負い投げた。
 ずだん!と大きな音をさせ、フルフェイスが地面に落ちる。したたか背中を打った体が、呻きを漏らして、痙攣した。
「……こういうことになっちゃうよ、と」
 もう遅いけど。と付け足しながら、男の体を引っくり返し、背中を膝で押さえつける。更に両腕を捻り上げると、流石に男も観念したのか、ヘルメットの頭を落として、くたびれた声で毒づいた。
「だいじょぶ? 怪我ない? あ、落ち着いたら、中、調べてね。盗られたもんない?」
 転がっていた男にも、どうやら大事はないようだ。バッグを女性に渡しながら、気遣う言葉をかけている。
 間もなく、事態に気が付いた誰かが通報したのだろう、サイレンを鳴らして近づいてくるパトカーが傍に停まるまで、神部は引ったくりの両腕を固定しながら、待っていた。

 そして、加害者と被害者を、それぞれに合った対応で預かってくれる人間の手に、よろしく頼んで渡したところで。
「ありがとうございましたっ!」
 と、たいそう大きな仕草で頭を下げると、今回の功労者の一人は、まるで子供のように笑った。
「お兄さんが来てくれなかったら、危うく逃がしちゃうところだったよ。バイクを倒すまでは上手くやったんだけど、歳かねえ」
「たいしたもんですよ。走ってるバイクに横から突進したんでしょ?」
「やー、丈夫だけが取り柄だから」
 開けっぴろげな男らしい。
 見た目は、神部と同年輩か、もう少し上というところだろう。カーキのフライトジャケットを着て、髪は短く刈り込まれている。赤銅色と言ってもいいほどよく陽に焼けた肌をして、くるくると動く表情は、いかにも健康的だった。
「しっかし、お兄さん、強いねえ! いや、止めてーとは言ったものの、……あ、気を悪くしないでね? 正直、吹っ飛ばされちゃうんじゃ、って」
「慣れてるんです」
「と、言うと」
「本職なんで」
「……やくざ屋さん?」
 その発想はなかった。
「刑事さん」
「ああ!」
 一気に合点がいった様子で、男は、ぽんと手を打った。
「いや、その、ごめんね、言っちゃ何だけど、」
「ホストか何かと思ってましたか」
「よく言われますか」
「よく言われます」
 しかも本日は非番である。普段からさほど堅苦しい格好はしない神部だが、オフともなれば、オンよりまして、カジュアルな服装をする。
「やー、最近の警察は、イケメン揃えてんだなあ」
 腕を組み、うんうんと頷く男は、フォローしているつもりらしい。鼻で笑うべきところだが、不思議と、そういう気にならないのは、まるであくどさを感じさせない、男の笑顔のせいだろうか。

「ともかく、ありがと。イケメンの上に腕っ節も強いなんて、警察の、いや、日本の、もとい、世界の未来は明るいなー!」
 ばしりと平手で打たれた背中は、それ相応に痛んだが、やはり文句を言ってやるという気持ちは、不思議と起こらない。むしろ何となく浮かれた気分になって、神部は微かに笑った。それを見とめたらしい男が、自身も目尻に皺を作る。
「実はさ、俺も、」
「いた! 馨ちゃん!」
 口を開いた男の言葉は、しかし女性の、辺りに凛と響いた声に阻まれた。見れば、男と同年輩の、颯爽とした女性が一人、低めのヒールを鳴らしながら、早足でこちらに近づいてくる。
「よ」
「よ、じゃない! ちょっと目を離すと、すぐどっか行っちゃうんだから! 一時帰国って言ったって、とんぼ返りなんだから、そんなに余裕はないんだよ!」
「あ、これ、三輪子。俺の、コレね。コレ」
「誰がどれか! さっさと来たまえ! 挨拶に行かなきゃならないとこ、まだまだいっぱいあるんでしょ!」
「わーかってるって、行きます、行きます! じゃ、元気でね、お兄さん」
「お世話さまでした!」
「はあ。こちらこそ」
 嵐のような二人である。
 何が何だか解らないまま、見送る形になった神部に、恋人に腕を引かれて、というより、引きずられながら歩く男は、首だけ捻って振り向くと、大きな声で、こう言った。
「あと、よろしくね!」
 何の「あと」だか、やはり、さっぱり解らない。ただ、何となく右手を上げると、神部は軽く、左右に振った。男が、笑顔で応じるように、ぶんぶんと大きく腕を振る。
「前向け前ー!」
「いて、痛えって、お前! 解った、前向く! 前見ます!」
 騒ぐ男も、その恋人も、以降は、一度も振り向かなかった。二人の背中が角を曲がって、完全に視界から消えるまで、神部はしばらくその場に立って、綻んだ口許を掻いていた。

 そして、翌日。
「ご機嫌ですね、椙下さん」
「そう見えますか」
 職場に着くと、名札を返し、神部はボトルの蓋を開けた。
「実は昨日、友人と、久方ぶりに会いましてね」
「ご友人」
「意外そうですね。僕に友人は似合いませんか」
「いぃえぇ?」
「そう言う君の方こそ、ご機嫌のように見えますが」
「ご機嫌、というか、……いや、昨日、変な男に会いまして」
「ほう」
「何ですかね、こう、無理やり気分を、上に引っ張っちゃうような」
「いますね、そういう人」
「いますよねえ」
「僕は嫌いじゃないですが」
 穏やかな笑みを浮かべた口に、椙下がカップを押し当てる。
「僕も嫌いじゃないですよ」
 その様子を眺めながら、神部も、炭酸水を含んだ。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ (公式で)やられる前にやれ!と思った
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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  • もう、ありがとうございますしか言えないです^^ -- 2010-03-18 (木) 20:06:20
  • ミワコさんまでもがらしい感じでした、面白かったです -- 2011-05-28 (土) 23:42:55
  • 素晴らしいです。公式でも3代目含めてやってくれないかな -- 2013-04-22 (月) 02:20:18

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