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il 板+缶

il 板+缶 ほのぼのというかなんというか。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

久し振りに訪れたちょっといい居酒屋で、ほろ酔いのいい気分で、何故だか俺は眉間を撫でられている。

「もーそんな無駄に怖い顔だから余計に怖がられるんですよー
 ほら、特にここ、眉間、皺になっちゃってるじゃないですかー」
細い指が、眉間の皺を伸ばすようにぐいぐいと押し当てられる。
「だからー、そんなに怖い顔してると、ここもっと皺が深くなっちゃいますよー?」
皮肉気なうすら笑いを常に貼り付けているような男が、何が楽しいのか、子供のような喜色を目に浮かべて眉間を執拗に撫でてくる。
からかいというよりじゃれあいと言うべき行動に意表を突かれ、呆れてうんざりした挙げ句に忌々しいと振り切っていただろう。普段なら。
そうしなかったのは酔っていたからだ。多分。
じゃれ合いにつき合ってやろうと思ったのも酔っていたからだ。間違いなく。
「警部補殿はもうちょっと皺があった方が貫禄出るんじゃないですかね!」
お返しと言わんばかりに、俺は目の前のつるりとした顔を両手でぎゅうと挟みこんだ。
虚を突かれたように目が見開かれたのは一瞬で、またすぐ糸のように細くなる。
頬を挟まれたままタコのように口を尖らせて、なにするんですかー、とでも言っているのかくぐもった声を出す。目に笑いを浮かべたまま。
両手で挟んだ頬が熱い。顔に出ないだけで酔っているのかこの男は。
そもそも、若干の感謝と、過去に関わった事件の話を聞いてやるつもりもあってこの店を選んだのに、何がどうしていい年をした男二人が子供のようなふざけ合いをしているのか。
思い至って気が抜けて、白い頬から手を離す。

自分より酔っ払った人間が居ると酔いが醒めるの法則で、途端にじゃれ返した自分が大いに恥ずかしくなってくる。何をやっているんだ一体。大して親しい間柄でもないくせに。
酔った男はますます笑みを深くして、なおもこちらの眉間に手を伸ばしてくる。
本気で怒るのも馬鹿馬鹿しく、適当に手を振って白い指先をかわすと今度は手を標的にじゃれてくる。子供から猫か。どっちも相手をするのは苦手だ。
今ここから酔っていいものかどうか、ぬるくなっていく酒を片手に逡巡する俺をよそに、両の目元と口元を三日月にした酔っ払いは、上機嫌の猫のようにあくびをした。

たっぷりと朝の日差しが差し込む玄関フロアの中を、二日酔いの欠伸をかみ殺しながら歩いていると、視線の先にすらりと背の高い黒スーツの男がかすめた。

「……あー、昨日は…」
「あ、昨日はごちそうさまでしたー」
ひょいと礼をして上げられた顔にはいつも通りの薄い笑みが張り付いて、昨夜の子供染みた気配は欠片も見当たらない。
「い・い・え。おそまつさまでした」
反射的に憎々しげな口調で返す。
大方昨夜のあれはこれやは酔って記憶にないのだろう。それならこちらも大いに助かる。
足取り軽く立ち去るその背中を、いつも通りの顰めた面で、恐らくきっと二日酔いの不機嫌さで見送って、

そして、何故だか俺は自分で自分の眉間を撫でた。

「僕、貫禄足りませんかね」
「はいー?」
「いえなんでもないです」
「何かありましたか?」
「いえほんと、なんでもないです」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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