Top/56-29

R.u.i.n.a 廃.都.の.物.語 メ.ロ.ダ.ー.ク×エ.メ.ク

一応以前投下したものの続きです。
バレンタイン小品

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 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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その日、神殿の厨房は朝から甘い匂いに包まれていた。
その匂いに起こされるようにして寝床から離れたエメクは、
生来の低血圧によりあまり働かない頭のまま
顔を洗い、身支度を整えた。
そして最後に胸もとの紐を結んでいる最中……
彼は恐ろしい可能性に気がついたのだった。

「…………!!!」

ただでさえ白い顔が一気に蒼白になる。
彼は慌てて、普段は厳重にしまってある神器をひっつかむと
厨房に向かって飛び出していった。

「メロダーク!!」
「ああ、おはよう、エメク」

悪夢は現実のものとなった。
厨房に立っていたのはエプロンを着けた彼の信者であり、
その手には甘い匂いを放つ鍋が握られていた。
以前は表情に乏しかった男は、今は穏やかに笑って朝の挨拶をしてくれる。
元の造作がいいのだから、その様子を見ると世の女性は羨ましがるのかもしれない。
確かに顔も性格も悪いところなどひとつもない。
ちょっと融通は利かないし、ちょっと脱ぎ癖もあるけれども。
しかしそんな彼にも致命的な欠点があることを
エメクや彼の仲間たちは身を以って知っている。

「う、うん、おはよう。いい匂いだね?」

半笑いで、オールを手に持ったままエメクは言った。
言いながら、視線は素早く厨房の中をチェックしている。
どうやらまだ不定形生物の類は発生していないということが確認できて、
エメクは心中で胸をなでおろした。

鍋から漂ってくるのもごく普通のチョコレートの匂いだ。
どうやらまだ湯煎にかけただけのところだったらしい。

「買出しで港に行ったら、たまたま入荷されてたんだ。
 お前もエンダも好きだったからと思って」

……それに今日はバレンタインだからな、と少しはにかんで付け加える姿は
本当に悔しいくらいの男前だ。
エメクの好きなものを買ってきてこうして振舞おうとしてくれる心遣いもありがたい。
しかし、そのチョコレートは頼むからそのまま食べさせてくれと願うエメクの心は
多分一生届くことはないのだろう。

「ええと、じゃあさ、僕にも手伝わせてよ!二人でやった方がはかどるし」
「……気持ちはありがたいが、今日はこういう日だからな。
 私が作ったものをエメクに贈りたいと思う」

エメクの決死の提案はにべもなく却下された。
しかしそこで諦める彼ではない。何しろここで引き下がってしまったら、
携えてきた神器が本当に必要になってしまう事態になるのが目に見えている。
あの皇帝をも倒した彼らに、本当なら怖いものなどあるはずはないのだが
皿からニョキニョキと立ち上がってくるブラックプリンや、
鍋からにょろにょろと触手を伸ばしてくるイドや、その他なんだか良く分からないものたちは
ビジュアル的になかなか厳しいものがある。
神殿なのに魔物が沸くことがあるなんて、噂になったら困るし。

「それならさ、僕だってメロダークにチョコレート食べてもらいたいよ。
 ね、二人で作って、あとで交換しよう?」
「…………」

頭ひとつ分低い自らの神からそんな風に言われて、否定するすべをメロダークは持たなかった。
少し照れた様子でこっくりと頷く彼に、エメクは安堵したが
今しがた言った事は単にメロダークを説得するための方便でもなく、9割がたは本心なのだった。

それをこんな風にいいわけのように使ってしまったことに、彼は少し良心の呵責を感じた。

「ケーキにしようと思っていたんだが。レシピはひばり亭から借りてきた」
「うん、難しそうだけど、この通りにやれば大丈夫だよね。……多分」
「そうだな」

――そして、いくつかの困難はあったもののケーキは概ね問題なく完成した。
この「概ね問題なく」という様子が示すエメクの苦難と奇跡は余人の知るところではない。
途中で様子を見に来たアダは、仲睦まじく厨房に並んでいる若夫婦を見て目を細めた
(彼女はそこの所をあまり気にしていないらしい)。
デコレーションは、甘い匂いを嗅ぎつけてきたエンダとエメクが協力して
二人で大きなハートマークを描き、
結局交換などするまでもなく4人で仲良くお茶の時間に食べることが出来たのだった。
相当大きなホールケーキだったのだが、2分の1はエンダの口の中におさまっていた。

メロダークは、普段はなぜか敬遠されてしまう己の料理が
エメクの協力の下と言えど、他人に喜んで食べてもらえたということに深い感動を覚えたらしく
「小料理屋を開く」という夢をより強固なものにしたようだった。
そしてやはりいつかのような、雨に濡れた野良犬の瞳をして言う。

「私が店を開くことになったら、ここは出て行かなければならないのだろうな」

確かに店を建ててしまえば、「身を置く所がない」という
ふれこみだった彼のいる理由はなくなってしまう。

「……僕は、メロダークがずっといてくれたら嬉しいけど」

この言葉が彼に対する十分な抑止力であることを知って、エメクは答えた。
だからなんで、本当に思っていることなのに、こんなあざとい形でしか伝えられないんだろう。
エメクは本当にそれを歯がゆく思いながらも
とりあえずは自らの安全のために、そしてホルムの人々の安全のために、
彼の夢を阻止し続けることを固く誓ったのだった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ この男は放し飼いにすると危険なので、
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) エメクがきちんと手綱を引いとくべき。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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  • メロダーク -- 2013-01-28 (月) 02:03:30

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