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板缶

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                     |  ilの板缶その5モナ‥‥。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  復旧とともに規制解除北モナ
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「あんた、なんで俺みたいなオッサンがいいんだよ?」
物好きな・・・と、呆れたような口調で訊かれるたびに神部は笑って、
「人の好みってそれぞれでしょ。伊民さんは、俺の好みのタイプなんですよ」
そう答えてきた。その言葉に嘘はない。
しかし、それだけというわけでもない。

伊民という男は、これまで神部の周囲にいた連中とはまるで違う、強面の現場要員だった。
神部よりいくつか年上だが、階級はただの巡/査部長だ。昇進試験のための勉強なぞ今さらする気もないとばかり、犯人検挙の手がかりを求めていつも現場を動き回っている。
グルメでも口がうまいわけでもなく、このご時世にまだタバコを吸っていて、特にセックスがいいわけでもない。わりと無趣味な仕事バカ、根は優しいけれどそれを言葉ではうまく表現できないタイプだ。

ただ彼は、低い、いい声をしていた。すらりと背が高く、のっぽの案山子にスーツを着せたようなその立ち姿は、遠くからでも神部の目についた。でたらめな食生活をしているわりに痩せていたが、脱がせてみるとガリガリというのではなく無駄な贅肉がついていないだけで、しなやかな筋肉をまとっていた。
長くすんなりと伸びたその腕は、男の神部を抱きしめてもまだ余るくらいだった。

最初はほんとうに、ただ外見が気に入って近づいてみただけだったのだ。
その次には、このワーカホリックなノンケの心がだんだん自分に傾いてくるのを見るのが楽しくて、しかたがなくなった。
そしていまでは、・・・完全に彼にのめり込んでしまっているという自覚が、神部にはあった。
決して口に出しては言わないが。

***

警/察官の非番というものは、休暇ではない。待機時間だ。ましてや捜/査一課の刑事ともなれば、休日といえどもいつ呼び出されるかわかったものではない。
とはいえ、彼らにも私生活というものはあり、その気になれば束の間のプライベートタイムを恋に費やすこともできた。

「・・・なあ、いいだろ・・・?」
耳許で囁く声が、濡れて聞こえた。
返事のかわりに神部は微笑み、タバコとビールのにおいのするキスを受け止めた。

伊民の部屋にはもう何度か招かれたことがあった。実家住まいの神部と違って、伊民は気楽な一人暮らしだ。
いつものようにリビングのソファでテレビを見ながら軽く飲んだあと、ふわふわと気持ちのいい気分になって寝室へ来た。

狭いベッドにふたりして倒れ込み、ゆるく抱きしめられると、伊民の体温と匂いに包まれるような気がした。耳朶を甘噛みされ、項に口づけが降らされる。
まだスーツの上着を脱いだだけだった神部のほうが、先に着衣を剥がれた。伊民も、プルオーバーの上だけはさっさと脱いで、ベッドの脇へ投げ落とした。
すると、神部の好きな、すらりと引き締まった身体が現れた。薄い皮膚と脂肪の層の下にあるのは、見せびらかすためにジムでつけたようなのではない実用的な筋肉だ。
骨柄の大きい伊民の、肩から二の腕へと連なるおおらかなラインの美しさに目を奪われながら神部は、その腕が鳥かごのように自分の頭を囲い込んでくれるのを見上げていた。
もう一度、キスが降ってくる。最初のように甘く優しいだけではない、深いキス。歯列を割られて舌を引きずり出され、呼吸もままならないほど求められる。
酸素の足りなくなった頭で考えるのは、この人ともっと近くなりたい、ただそれだけだ。
布越しに腿に当たる伊民のものがもう熱を持ち始めている。それが素直に嬉しい神部は手を伸ばして触れようとしたが、すぐにその手を掬いあげられて、伊民の首の後ろに回されてしまった。
「・・・いいから、あんたはしっかり俺につかまってろ」
「ずるい。俺だって触りたいのに」
「そんなことされたら、今すぐ突っ込みたくなっちまう」
痛いの嫌いだろ、と笑いながら伊民は、大きな手のひらで神部の胸や脇腹を愛撫しはじめた。男の身体に触れる手つきにもうためらいはないのに、なかなかその下までは触れてこない。
きっと伊民は急ぎたくないのだ。胸の上に顔を伏せられると、癖のない彼の前髪が鎖骨の上をさらさらとくすぐっていった。
神部はその頭を抱いて片膝を立て、ふーっとゆるく息を吐いた。腰の周りに、痺れるようなぞわぞわとした快感が集まりつつあった。

仕事を離れたこの夜、神部は申し分なく幸せだった。
・・・伊民が今しも脱ぎ捨てようとしていたチノパンのポケットで、携帯が鳴り始めるまでは。

***

楽しい時間を邪魔したのは、携帯に最初から入っている有名な映画のテーマ曲だった。神部は、伊民がこの音を誰からの着信に割り当てているか知っていた。
出ないでほしい、と言いそうになったが、とても言えなかった。

「・・・伊民」
苦虫を噛みつぶしたような顔をして、それでも当然のごとく伊民は電話に出た。神部の顔のすぐ近くでシンプルなストラップが揺れた。携帯からの声も、すっかり聞こえた。
相手は彼の同僚刑事の芹澤だ。歩きながら話しているのか、ややスタッカートのかかった口調で、事件の発生を告げている。
『先輩、新宿で殺しです。ガイシャは帰宅途中の会社員。強殺みたいです。犯人の目撃証言あり、若い男。ナイフ持って逃げてます。緊配かかりました。あと、神田で男女の変死体。こっちはまだ所轄が現着したとこで、詳細不明です』
「非番にも招集かかってんのか」
『あー・・・まだですけど』
電話の向こうの芹澤は、なんとなく意外そうに言い淀んだ。
『サーセン。でもたぶん、時間の問題だと思うンすけどね・・・?』
「・・・だろうな」
うんざりだと言わぬばかりにため息をついた伊民が、すいっと身体を起こした。
わりぃな、と唇だけで神部に言って、そのままベッドを降りてしまう。伊民はまだ話し続けていたが、芹澤の声は神部には聞こえなくなった。
「おう・・・了解、坂の下まで行っとくわ」
芹澤は、現場へ向かう途中で伊民を拾っていくつもりなのだろう。この時間なら、霞ヶ関の警/視庁からここまで、ゆっくり走っても20分かからないかも知れない。パトランプをつけてぶっ飛ばしたら、もっと早く着けるだろう。
大急ぎで身支度しなければならない伊民がクローゼットから取り出したスーツとワイシャツを持ってリビングへと出て行くのを、神部は黙って見送った。

「おお、持って帰ってる・・・バカ言え、てめえ」
すっかり仕事モードに切り替わった伊民の口調はピリピリと感電するような緊張感をはらみ、つい数分前までの低く豊かな声音とはまるで違っている。
どちらが本当の、というわけではなく、どちらも伊民そのものである、二種類の声。
「・・・担当、誰だ? ・・・チッ、ツイてねえなあ」
その声を、神部は少し遠くに聞きながら、自分も身体を起こしてベッドの上で膝を抱えた。

どうせ、特/命係に事件の情報が回ってくるのは明日の朝だ。テレビのニュースで知るほうが早いくらいかも知れない。それまでに犯人が逮捕されてしまえば、あの特殊なムードの職場では朝の軽い話題にしかならないだろう。

「・・・ひでぇな、そりゃ。なんでそれで人着割れねえんだよ」
リビングでごそごそと着替えながら、伊民はまだ話し続けていた。器用なことだ。
それにもまして、かなり「その気」になっていたはずの伊民が、こんなにも素早く出かけようとしていることに、神部は驚かずにいられなかった。たった数分しか経たないのにもうおさまったのだろうか、と。
「わかった、もう出るから切るぞ。ちょっと待たすかも知れねえ」
声が急に近くなった。次の瞬間、もうすっかりスーツを着込んだ伊民がドアの向こうから顔を覗かせて、簡単に言った。
「わりぃ、行くわ」
「はーい」
「鍵、置いとくから。寝てってもいいし、好きにしてくれ」
「帰りますよ」
「そっか」
伊民は一瞬、なんとも言えないような顔をして神部を見たが、それきり何も言わずに出ていった。

玄関のドアが閉まるのを待って、神部はやれやれと息をついた。
どうせ伊民というのはあんな男だろうと思っていたが、ほんとうにそうだった。素っ気ないにもほどがある。
・・・それはいい。しかたがない。
実を言えば、そういうところも好きなのだ。

神部とて、法学部を出てわざわざ警察官を志した動機は、この手で誰かを助けたいと思ったからだ。世間にはびこる悪人や犯罪者たちを捕らえ、彼らのために不幸になる人間をひとりでも減らしたいと願ったからだ。
伊民は、まっすぐにその道を行っている。若い頃の神部が憧れたとおりの刑事の姿だ。
たとえ相手が武器を持っていようが、どんなに危険な場所であろうが、伊民は真っ先に飛び込んでゆくに決まっている。彼の鋭い目で睨みつけられ、怒声を浴びせられれば、どんな犯罪者も震え上がるだろうと思われた。
肩幅の広いその背中と、向かい風に負けまいと顎を引いた横顔が、神部を惹きつけてやまないのだ。
ある意味では妬ましくもあり、自分の置かれた立場と引き比べていくばくかの寂寥感に襲われることもあったが、それで伊民を責めるような気持ちなどには到底なれなかった。
そんなこと照れくさくて、本人にはとても言えそうになかったが。

***

しばらくしてから服を着てリビングへ出ていき、灯りをつけると、伊民が置いていった鍵がテーブルの上で鈍く光っていた。
神部はそれを取り上げてしげしげと眺め、手のひらに載せて、きゅっと握った。
それから自分の携帯を探して、メールを打った。

『これから知らないふりして現場行ってもいいですか』

思いがけず、すぐに短い返信があった。

『特/命係の出る幕はねえ!』

その最後に怒りマークの絵文字がついているのを見て、神部はふふっと笑った。

『この鍵、俺が持ってていいですか?』

今度は違う絵文字がひとつだけ、返ってきた。
神部は微笑みを深め、鍵と携帯をポケットにしまって、部屋を出た。

<おしまい>

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 | |                | |     ピッ   (・∀・ )いつも感想嬉しい、つい書いてしまうモナ
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いつもぬるくて、しかも時系列バラバラですみません。
これからもこっそりと書いていきたいので、もし気づいたら読んでやってください。


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