ムーンダンサー
更新日: 2014-06-08 (日) 04:54:01
※半ナマ注意
デクス夕一 氷×デクで幸せENDパラレル、シーズン1最後まで見た人向け
出来るだけネタバレ避けたけど、氷そのものがネタバレっちゃネタバレなので注意
性格・設定はドラマ基準、人名表記は小説基準です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
月の満つる夜でないといけないなどと思った事はないが、欲望に従う晩は決まって綺麗な月が出ていた。
だからどう、という事はないのだ。昼であったって別に構いやしない。
だが、異常者をルナティックと呼ぶように、月には人の手を闇へ引く何かがあるのかもしれない。
錆色の月が、建前上は釣りに出た事になっている僕ともう一人の自分とを照らしている。
ビスケ一ン湾から北大西洋方向に泳がせたボートは自分の所有しているそれよりもずっと立派で、
中央には豪華なギャレーが備わっていたが、僕らは海風に包まれる方を選んだ。
もう一人の自分、ビニーはこの数週間思うように獲物が食えず焦れていた僕をここへ誘った。
誰かの意図通りに動かされるのは好きではなかったが、ビニーにあやされるのだけは別だ。
なんの了解も得ぬまま自然に手と手が絡んで、唇が触れ合って、気付けば夢中で服を剥きあっていた。
マイアミの気候に暖められた体臭と潮の匂いが混じって、どれがどちらかわからない。
ボートの下に沈む死者達の生臭さかもしれないという考えが一層の興奮を煽る。
清潔とは言えない場所に、行為に、これ程までに溺れている自分が信じられなかった。
下からの突き上げに呻いて縋りつけば、同じように月夜に中てられているらしいビニーが満足げに吐息を微笑ませて頭を撫でてきた。
まるで、部屋の中にあるものをすっかり把握されているような気分だ。
人の性格は家に例えるのが一番わかりやすい。
腹を割って話す、という言葉の"腹"が玄関扉だとする。
玄関までの距離や鍵の緩さは人それぞれ違って、
例えば人の好い義妹はすんなりと他人をリビングへ案内するだろう。
ラグェルタは年の分だけもう少し玄関アプローチが長い。
益岡はラボに入る者の気質なのか意外と曲者で、玄関先に防犯カメラを設置し──ただし、誰かが訪れるのを待っているかのように──窓から外を伺っている。
大抵は二人ないしファミリー物件で、皆そこに誰かを入れたがっているように見える。
僕の家は、簡単な鍵が一つあるだけだ。
室内をカーテンで隠しこむ事はせず、人を招く為の椅子があり、明るいインテリアで彩られているが、その下に、義父ですら顔を背けた(彼お手製の)隠し部屋を備えている。
僕はそこに住み、地上で客人をもてなすデクス夕一を操っているのだ。
だが──ビニーだけは。自分と同じ、人のナリをした怪物である彼には隠すものが何もない。
生身で抱き合う心地は、他の誰かと比べるまでもなく、正気を失いそうな程に気持ちがよかった。
シリアルキラーのビニーがサディスティックな行為を好む可能性を考えていたが、
彼はいつも信じられない程優しく僕の肌に触れる。
ビニーの目が、彼の中の果てしない奥へと僕を誘っていた。
いくら声を出しても届かない海上で、小さく浅く声を弾ませる僕をビニーはからかって言った。
「目立たないように生きる癖がついているだろう、デックス。
だが、小さな頃のお前は甘えん坊だった。そうしていいんだよ」
気を引いてごらん。耳から脳に焚き染めるように囁かれて身体が跳ねた。
「ビニーも、……したいようにすればいい」
「今は甘やかしたいんだ。長い間傍にいてやれなかったからね」
庇護される感覚は悪くなかったが、もういい大人だ。
しかし、不満を伝えようとして覗き込んだ瞳が保護者ではなくご同類の目をしていたので、
そこでもう我が身を止められなくなった。
向かい合って抱きついていたビニーの身体を繋がったまま押し倒し、自分から腰を振る。
溢れ出る声はすべて彼の名前になった。
二人きりの時にしか呼べなくなってしまった、彼の本当の名前に。
深く体内を抉られながら、同じ風にビニーに分け入ったらと考える。
やはり自分は捕食者なのだ。
"もう一人の自分"は、心得ているように不敵に笑い、また優しく僕の髪を撫ぜた。
その日はオフではなかったから、ボートの中のソファーで仮眠を取り、
朝になってからココナツグローブの僕の家まで二人で戻った。
「邪魔。今日は早いんだ」
出勤時間の遅いビニーが後ろから抱きついて洗顔の邪魔をするのを、
彼の家の契約名で呼んでたしなめる。
「まだ二人きりだろう、デックス」
内腿をなぞられて手元が狂い、髭を剃っていた僕の首筋に鮮血が滴った。
ビニーは赤く汚れた肌を舐め清めると、陽光の下に似合いの可愛らしいキスを寄越し、
それから僕の舌を絡めとった。
「朝食はいつものメニュー?」
「いつもの──」
返事に被さるようにインターフォンが鳴り響いた。
この時間にやってくる不作法者は、間違いなく僕の可愛い妹だろう。
ビニーの起こした事件に何か進展があったのか。
いや、彼の宿泊を確かめに来ただけかもしれない。
とりあえず急いで服を着てくれとビニーに頼んで、ドアの方へ向かった。
今日も厄介事が舞い込んできそうだ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
綺麗に完結したのに未だにデク萌えがおさまらなくてつらい!
初投下がしぬほど恥ずかしくてそれもつらい!
- 幸せな二人にちょっと泣けた -- 2014-06-08 (日) 04:54:00
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