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冬の猟犬

生。将/棋/星/人がhubなコピペネタ。冬編。
山魔。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )コピペニマジレス カッコワルイ!

ショーケースの中の、空白地帯をねめつける。
「えー、このお店にはモンブラン置いてないんですか?」
「申し訳ございません、生憎と切らしておりまして・・・」
「中に栗は入ってなくていいんです。どうにかなりませんか」
「そういわれましても・・・」
玉子雑炊玉子抜きが許されて栗抜きモンブランが買えない世間の理屈がよくわからない。
おそらくこれは敵の盤外戦術だ。

地球は現在、外宇宙からの侵略を受けている。将/棋/星/人が攻めてきたのだ。
というか、四冠が既に将/棋/星/人だった。大変コメントしづらい状況である。
人類代表を決めるための全キシ参加キ戦を催す時間的金銭的余裕も無く、実績と相性を考慮したうえで吟味し

た結果
季節は春でも夏でもなく冬だったので、人類代表の白羽の矢は僕に立った。

(ボナソザのときとおんなじだ)
自分の立ち位置はよくわかっている。勝っても何も得るものが無く、負けると全てを失う大一番に
連盟が投入できる最強の尖兵。箔はあっても格はない、可愛げもない若造タイトルホルダー。
別にそのことには不満はない。
出来る準備は怠らず、獲る物は獲り、勝負所と見れば頭から突っ込むだけだ。
もし自分以外がその役を受けたなら、僕は屈辱と心配で毎晩のた打ち回るだろう。

しかしこの場所は見晴らしはいいし気持ちいいけど、高くて寒くて少し怖い。
もうちょっと誰か他に居てくれてもいいのに、とも思う。
こういうとき想うのはたいてい同期でも兄弟子でもなく関西の彼で
こうしているときもきっとあっちで息をするように女の子に粉をかけているんだろうと思うと腹も立つ。

出会いはなかなか衝撃的だった。
史上4人目の中学生デビューを果たした僕の前に立ちはだかった3歳年長の関西の新鋭は
甘いマスク(笑)でちょっとニヒル(笑)で影を背負った(笑)美少年(笑)通称王子(笑)。
・・・漫画かよ、と。
果たしてその実態は、研究将/棋全盛のこの時勢に天然記念物級のアホ力戦で、
話してみると意外と人懐っこくて楽しくて、手合いがつくのは楽しみになった。
よく訓練された猟犬の攻め将/棋と獣道から回り込み翻弄する受け将/棋は、噛み合ってよく燃えた。
彼の成績もキ風そのままに良くも悪くも期待を裏切って迷走し、水をあけたつもりでも
准尉戦では後ろにぴたりとつけられて、結局同じクラスにいる。

・・・回想は唐突に断ち切られた。なぜか本人がすぐそこに立っていた。
相変らず格好だけは冗談のようにかっこいい。

「岸会会長からの任命を受け、関西/本部代表として立会いに参りました。明日は宜しくお願いします。
 ・・・こちらはずいぶん寒いね」
「こちらこそ。宜しくお願いします・・・立会いって? 聞いてないんだけど」
なんだか可愛い女の子のにおいがするなあ、などといいながら彼は身を寄せてきて、不意に声を低くする。
「渓川先生はこの件では関西から出さない。本人が行くといっても断固阻止する。
 九募先生は戦力として温存。これが関西の決定や。渡部さん、ごめん」
「それは渓川先生が居ない所で決めたんだ」
「よくご存知で」
「ん、僕もそれでいい」
渓川先生は将/棋/星/人に狙われている。
馬に蹴られて死ぬなら本望だ。できるなら、日本の隅っこまで連れて行って8八銀と蓋したい。
ふと目を上げると、至近距離で彼がニヤリと笑った。
「何?」
「かためてどーん、って顔してた」

つ、と彼が身を離して、木枯らしが寒いことにあらためて気づく。
「代わりといっては何だけど、俺のことは好きに使っていいよ」
「こんなときに大盤解説もないだろうし。何て言われて来たの?」
「もし渡部さんが『じつはわたしも将/棋/星/人でした』とか言い出したら、全力で懐柔しなさいと。
 そうでなきゃただの応援。あ、これは差し入れ。渡部さんの好きなモンブラン」

そう、ずっと持ってる紙袋は気になっていた。将/棋/星/人の魔の手も大阪までは及ばなかったらしい。
わくわくして中を覗いた分・・・・・・失望は大きい。
「山咲さん、これはマロングラッセという食べ物だよ」
「へー、そうなんだ」
この言い方はきっと三日で忘れる。
もし僕が将/棋/星/人だったなら、彼は「モンブランとマロングラッセを間違えて交渉を決裂させた男」
として歴史に名を残しただろう。惜しいことをした。

「実はあんまり深刻には考えてないんだよね。
 これで負けたらもう二度と将/棋指せないっていうなら僕も本気で困るけど」
「・・・言ってる意味がわからないんだけど」
「いやほら、例えば囲/碁/星/人が攻めてきて、負けたら以後将/棋禁止とか」
「その場合、勝負は囲/碁でするでしょ」
「ああ、そっかなるほど」
全くこの人は・・・と思ったところで携帯が鳴り、失礼といって出ると、電話の向こうの連盟事務局は
関西/本部がこの対/局には一切干渉せず第二次防衛線として待機すると通達してきたことを伝えた。

「もう一度聞くけど。君 は 何 で こ こ に い る の」
「渓川先生に、訊きに行ったんですよ。先生なら、こういうときどうして欲しい?って」

決戦の地は、センダガヤ。いつものあの建物だ。
夕暮れに風花が舞い始め、ふらふら歩く彼は風除けにすらならないけど
伴走する伏兵の存在を僕はしっかり胸に留めておく。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

人称がブレるのは仕様。
改行がブレたのはただのうっかり。

  • やっぱ素敵です。もっと読みたい。 -- 2017-07-18 (火) 22:59:06

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