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消えない雪

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

激団親幹線「バソユウキ」から教主様と殺し屋の話。
このところ黒い話や赤い話が続いたので、たまにはと白い話をと
チャレンジしてみました。が、自分が書くとどうしてもグレーになった気が…
そんな話ですwエロはありません。すみません。

肩に白いものが触れ、視線を上げる。
「雪か…」
そう呟いた怒門がこの時見たものは、重く垂れ込める灰色の空から舞い落ちる
無数の白い雪だった。
「冷えてくるな。今日はこのくらいにして、みな家に戻った方がいいだろう。」
仮住まいとしている村外れの寺の境内で、粥の施しに集まった者達にそう告げれば、
それに彼らは一斉に落胆の声を上げた。
彼らのほとんどは近在の農民。
普段は年貢の取り立てに苦しみ、食うや食わずの生活をしている中、こうして
一日の労働を終えた後、腹いっぱい食える機会を短く切り上げられるのは辛いのだろう。
口々にもう少しと懇願してくる、そんな彼らを宥めて歩く怒門の歩みが瞬間、
不意に引き止められる。
カクリと進む足を止められ振り返った、そんな視線がその時かなり下方で
見留めたものは、自分の服の裾を掴む子供の姿だった。
物珍しげにも羨ましそうに、汚れた小さな手が白い羽織の先を握っている。
それに近くにいた母親らしき女が、慌てて子に離すように声を発する。
しかし怒門はこの時、それを手をかざす事で制した。
そして逆に服が汚れる事も構わずその子を腕に抱き上げれば、周囲からどよめきにも
似た声が上がる。
そんな中で見遣る、子供の服は薄く粗末なものだった。
雪降る寒さの中、剥き出しになった細く小さな手足は冷たく凍えていて、
それに怒門の眉根がたまらず寄る。だから、
「ペナソ。」
近くにいるだろう仲間の名を呼べば、それに彼女は足早に自分に近付いてきた。
「ドウシタ?」
「彼らに分けてやれるような衣類の予備はあるだろうか?なんなら暖の取れそうな
布の類でも構わないのだが。」
「あ~、さがしてミルヨ。たぶん、ダイジョウブ!」
片言ながらも楽観的に言い放つ、そんな彼女の明るさにつられて怒門の表情が和らぐ。
「ありがとう。」
だから短く礼を言って、そのままゆっくり周囲に向き直ると怒門は声を張った。
「みな、今から暖の取れそうなものを用意させる。それを持って今日のところは
家に戻りなさい。そして子供達を労わってやりなさい。この子達はこの国の宝だ。」
優しくも慈悲深く、そう訴えながら怒門は抱かえ上げていた子供を母親へと返してやる。
途端、どこからともなく小さな声が上がった。
「教主様…」
それが引き金となった。
「教主様…っ…緋頭番様っ!!」
周囲から次々と叫ばれてゆくもう一つの怒門の名。
それはやがて波のようなうねりをもって境内中に響き出す。
中には自分に向け手を合わせ、拝みだす者達まで現れる。
そんな彼らに怒門は一度静かに頷いた。
もう余分な事は語らない。それが一番効果的である事は、これまでの経験ですでに知っていた。

人の気配から遠ざかる様に、その時寺の裏側へ向かう怒門の足取りは荒かった。
まっすぐに前に向けられた瞳の奥には、押し殺しきれない怒りの色が浮かんでいる。
その感情の源はすべて、どうする事も出来ないやりきれなさから来ていた。
10数年ぶりに戻った故国。そこはすべてにおいて自分の予想を悪く裏切る国へと変わっていた。
支配層と被支配層の貧富の差はますます開き、そこに住まう民達は日々の暮らしに追われ、
その目に未来に対する希望の光はない。
そして何より自分が囚われた時とほぼ同じくして、この国に持ち込まれた新しい宗教・番教は、
貧しい者達からすべてを取り上げ、欲深き富める者達を際限なく潤すようなそんな教義に
歪められ、広く国中に伝えられていた。
それに怒門はふざけるなっ、と胸の内怒りを露わにする。
自分と友・調辺が心血を注いで学んだ番教はそんな教えではなかった。
それなのに…それを自分達の欲望の為に歪め、それによって築いた財の上にあぐらを
かく者達がいる。
右大臣・希宇木名と学問頭・音津加羅麻呂。
それは自分を無実の罪に陥れた者達の名でもあった。
彼らをけして許さないと怒門は思う。必ずその座から引きずり落とし、八つ裂きにしてやる。
その為に今は力が必要だった。
民の心を掴み、朝廷さえ見過ごす事ができなくなる一大勢力を作り上げる必要が。
そうして大陸から渡った西国を起点に、取りかかった正統な番教・番新教の布教は
瞬く間に各地に浸透した。
それは一人一人の胸にどれだけ希望の光が必要かという事を、突きつけられるような
結果でもあった。
どれだけ今の彼らが不幸であるかの裏返しでもあった。
それが……計画は順調であるはずなのに、怒門の胸に鈍い痛みをもたらす。
「…くっそう…っ」
民やペナソ達の前ではけして口には出来ない悪態をつきながら、怒門は人気のない場所を
求めて本堂の角を曲がる。
先にあるのは裏山に続く小さな庭だった。
しかしそこへと向けた足先が、この時ギクリと止まる。
誰もいないと思った、そこには先客がいた。
葉がすべて枯れ落ちた木々に囲まれる物寂しい空間に一人、雪降る空に手を伸ばし立つ人影。
それは自分の恩人であり友でもある、佐治のものだった。

本堂の角でしばし声を失ったように立ち尽くす。
そんな自分の存在に気づき、先に声をかけてきたのは佐治の方だった。
「どうしたの?」
ふわりと声色柔らかく、笑う目を向けてくる。
それに怒門はハッと我に返った。
「いや…誰もいないと思っていたから、少し驚いただけだ…」
「ふうん。表の方は終わったのかい?」
つっと視線を流し、境内で行われている施しについて尋ねてくる。
それに怒門は頷きながら、ようやくその足を踏み出していた。
「あぁ、雪が降ってきたからな。今日のところは締めた。そっちは今日はどうだった?」
佐治は普段、番新教の布教の場にはあまり顔を出さない。
その代わり、彼が請け負っているのは施しの場を部外者から守る警護の役割で。
民達が集まればそれを警戒するその土地の代官達は、色々と横槍を入れてくる。
それは時に暴力であったり、時に賄賂の要求であったり。
そんな彼らの動きを佐治はいつも一早く掴み、その対処に一役買ってくれていた。
「うん、彼らもこの寒さの中で働くほど勤勉ではないようだ。動きに特に変化は
ないようだったから帰ってきてしまったよ。」
言いながらこちらに体を向けてくる。
その足元にふと視線が落ちた時、怒門は再びギクリとその歩みを止めていた。
「何をしているんだ…」
唇から零れる声が掠れる。
そして固まってしまった怒門の視線の先にその時あったのは、冷たい地面に直に触れる
彼の白い裸の足だった。

驚きを隠せない、しかしそんな自分の様子にも佐治の軽やかな口調は変わらなかった。
「あぁ、雪が降ってきたから積もるかどうか確かめてたんだ。」
地面が暖かいとすぐに解けてしまうからね、とそんな事を口にしながら、
佐治は続けて、君の国の雪はすぐに消えてしまってつまらないとも言った。
確かにこの地に至るまでの間に数度、空に雪がちらつく事はあった。
しかしそれは比較暖かい西国ではほんの一瞬の事で、積もるほどのものではなかった。
ただ、今、問題なのはそんな事ではなくて……
「馬鹿か!冷たいだろう!」
思わず激しい口調で怒鳴りつけると、怒門は咄嗟に周囲に彼の靴を探す。
しかし見渡す限りにそれは見つからず、しかもたまらず焦る自分の心を逆撫でするように
この時、ゆったりとした佐治の声がまた耳に届いた。
「大丈夫だよ、この程度の冷たさなら凍傷にはならない。」
いったいどんな修羅場をくぐり抜けてこれば、そんな台詞が平然と口をつくのか。
彼は恐ろしい程の腕を持った暗殺者で、その知識や洞察力は常人には測り知れないものがあるが
……でもそのくせたまにこんな、どこかズレた子供のような面を見せる。
それがあまりに両極端すぎるから……不安になる。それ故、
「凍傷にはならなくても霜焼けにはなるだろう!」
こちらも思わずどこかズレた言葉を言い放ちながら、怒門は佐治との距離を一気に詰めると
その腕を伸ばしていた。
そして勢いのまま掴んだ手。それは近い記憶の中の子供のそれよりも更に冷たいものだった。
だから、
無意識に動いた身体。
怒門は彼の手を強く引くのと同時にその身を半転させると、巻き込むような形でこの時、
佐治の身体を背に負っていた。

「……なんの真似だい?」
さすがに驚いたような佐治の声が背後から聞こえてくる。
しかしそれにも怒門は彼を捕らえた腕を解こうとはしなかった。
「抱き上げるのはさすがに無理だからな。」
「いや…そうじゃなくて…」
珍しく戸惑ったような声が続く。
それには怒門はこの時、本当にわからないのかと言う苛立ちも微かに覚える。だから、
「見ているこっちの方が寒くなるんだ。」
「……………」
「こんな状況の雪で遊ぶもんじゃない。」
ついつい語調が強くなる。
そんな自分の様子に、佐治は少しの間黙ろうとしたようだった。
けれど、
「……何を、怒っているんだい?」
それでもやがて、彼から密やかに零された問い。
それは、自分の怒りの原因はそんな表面的なものではないだろうと、容易くこの胸の内を
見破ってくるものだった。
だからそれに今度は、怒門の方が黙り込んでしまう。
息を詰める、その脳裏には浮かんでは消えていく残像があった。それは、

腹をすかせた農民達。凍える子供。自分に縋るような目を向ける者達。

それらに怒門は、今更ながらに隠しきれない罪悪感を自覚する。
自分は純粋に彼らを救おうとだけしている訳ではない。
むしろその利用を考えている。
だから、そんな目で自分を見る必要はない。いや、見てくれるな……
歩み出そうとしていた足が知らぬ間に止まっていた。そして、
「すまん…」
佐治を背負ったままうつむく唇から零れた言葉。
「…すまん、八つ当たりだ…」
絞り出すように告げた、その謝罪に佐治は一瞬の沈黙の後、小さく吹き出したようだった。
そのまま背に凭れかかってくる重さがある。
肩越しに前に回された二本の腕。
それをキュッと軽く絡めながら佐治はうつむく怒門の耳元、楽しそうな囁きを落としてきた。
「君は本当にまっすぐな男だね。」
「……………」
「強くて弱い。そんな君の怒りは僕には心地の良いものだけど、でも自分以外の
感情まではあまり抱え込まない方がいい。目的がある時に誰かの為なんて、
身の丈以上の事を考えると、逆に己が身を滅ぼすよ。」
静かにもひんやりと、告げられるその言葉に臓腑が冷える思いがする。
だから、
「あぁ、すまん。」
もう一度謝罪を繰り返す。
するとそんな怒門に、佐治は尚もクスクスと笑いながら告げてきた。
「まぁ、いいよ。その時は僕がちゃんと行き先を正してあげるから。だって僕は
君の行く道を切り開く“サヅ”だからね。」
かつて、捕らわれた牢獄から外の世界へ自分を導いた、その道具から取った名の由来を
口にして、佐治はこの時再び怒門の目の前、サッと片手を空に向け伸ばす。
そして手の平に受ける雪。
それは彼の肌に触れた途端、すうっとその形を無くした。
「あぁ、君に触れてたから温かくなってしまった。すぐに消えてしまう。」
子供のように素直な口調で残念そうに呟かれる、その言葉に怒門は無意識にその唇を
噛み締めていた。
雪が解ける。それは仕方のない事だった。
人が人である限り、その体温に雪は耐えられない。
けれどそんな体温の中でも彼のそれは一際冷たくて、だから自分程度の人肌ですら
温かいと言う。
それを怒門はこの時、ひどく切ないと思った。
だからゆっくりと視線を上げながら、胸の内で呟く。

誰も苦しまず、彼も冷やさぬ―――そんな消えない雪があればいい

そして見上げた空に舞う雪は、この時怒門にかつて見た懐かしい記憶の光景を思い起こさせた。
だから、
「触れても消えない雪ならある…」
ポツリと零した、その言葉に背の佐治が「えっ?」と身を乗り出してきた。
「本当に?」
好奇に満ちた声で問うてくる、それに怒門はあぁと答えてやった。
「正確には雪ではなく花なんだが、その花びらは白くて、風に吹かれて散る様はこの雪に
とてもよく似ているんだ。」
「どこにあるんだい?」
「この国なら大抵の所に木がある。が、一番見事に咲きそろうのは、都の南にある山の
ものだろうな。」
「咲くのはいつ?」
「春だ。あれは冬を終え、春の訪れを知らせる花だから。」
「春か、ならちょうどいい頃だね。」
告げられる、そんな佐治の言葉は無邪気にも明確に、この先自分達の行く道を指し示していた。
冬を越え、春の頃には辿りつくだろう、目指す都。
そこで繰り広げようとする自分達の行動はひどく血腥いものだけれど。けれど…

「見てみたいね、その雪。」

今、歌うように軽やかに口にされるそんな佐治の言葉は、これまで一度として
口にされた事のない珍しい彼自身の願いだったから、それに怒門は背にした身体を
もう一度ちゃんと負い直しながら、この時その足を寺の方角へ向けていた。
中に入ったらすぐに湯を用意して、この手と足を温めてやろうと思う。
そして体温を戻したその手で触れても消えない雪を……

「見に行こう。」

連れてゆく。約束する。
そうでもしないと彼はある日一人勝手に、フラリと雪のように消えてしまいそうだから。
見たがる散り際が一番美しい花はひどく彼に似合いすぎていて、その柔らかい笑みを
霞みの中にさらってしまいそうだから……
だから、

「一緒に行こう。」

繰り返し告げる、そんな自分の言葉にこの時、返される佐治の返事はなかった。
ただその代わり、先程よりも更に深くペタリと背に寄せられる身体と共に、
フフッと耳元に零される笑みがある。
その腕の中の重さと温かさを、怒門はこの時素直に大事だと思った。

そう彼も温かいのだ。

その温かさに自分はこれまで幾度も救われ、支えられてきた。
だから、彼の願いもかなえてやりたい。
言葉ではなかなか上手く伝えられない心。
それを確かに彼に届ける術が欲しいと、雪舞う空の下、怒門は切実に願っていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

引っかかったので最後だけ携帯で。長くてすいません…
舞台で見た籍春おんぶが衝撃的で、トキメイタ後かなり突き落とされましたw
でもやはりトキメイタのでこの2人でも。


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