Top/54-245

オリジナル 後輩→先輩(?)

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                     |  野球部 後輩→先輩(の球) みたいなモノ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  モデルはあるけど別人になったのでオリジナルで
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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とある書き込みが元ネタです
エロも絡みもないですごめんなさい

マウンドの上、モーションに入った先輩の体。片脚を上げて、ぴたりと静止する。
真正面から見るのは初めてで、俺は「きれいなフォームだなぁ」と感心した。見とれていたと言ってもいい。
だから、振り下ろされた先輩の腕から放たれたボールに、意識を向けるのが遅れた。
MAXで150km/hを超える先輩の球は、本気を出していなくてもすごい威力で。ボールはミットから零れ…あまりの重さに俺は尻もちをついてしまった。

「コラァァ!おま、本気で捕手なる気あんのか!?」

先輩がマウンドから降りてくる。怒ってる。

「すん、ませ…」
「本気出しとらんぞ!出とっても140や!それも捕れん奴なんぞ、補欠にすら使えんわ!」

やめやめ!そう言って先輩は、正捕手の先輩と共にブルペンに入っていった。
放心したまま座り込んでいる俺を、同学年の篠之井が覗き込んできた。
俺は「見んなよ…」と呟いて、装備を外すためベンチに入った。
パァン!と、鋭いミットの音が聞こえる。先輩の本気の投球。それを零さず捕った音。
俺も、あんな音を鳴らせたら―――。

野球部に入ったのは――先輩が居たからだ。
エースピッチャー。3年生の、上杉先輩。
その速球は有名で、他校のバッターはみんな「打倒上杉」を目標に日々練習に明け暮れている、なんて噂が立つくらいだ。
と言っても、俺は部に入るまでそんなことを知りもしなかった。

野球なんて、小学生の頃の少年団でしかやったことが無い。上達しないのが面白くなくて、中学ではテニス部に入った。なんとか3年は続けたけれど、上手いとは言えなくて、最後の大会でも同級生の応援しかできなかった。

2度挫折したけれど、それでもやはりスポーツへの憧れはあるのだ。文化系の部活は逃げだと思った。
家から近いという理由で入った兆山高校。運動部が盛んで、花形の野球部は甲子園の常連だった。
部活見学で色々と見て回り、最終日にグラウンドを訪れた。
正直、野球部に入るつもりは無かった。
小学生の時に諦めたものだし、強豪校の部活に今さら素人が飛び込むのも…と思ったからだ。
でも、そんな考えはすぐに掻き消された。

パァン!

鞭で叩いたような、高い音。ぼんやりと立っていた金網の向こうからだ。

「ナイスボー!」

ゴツいプロテクターを着けたキャッチャーが、野太い声でボールを返す。
ひゅっ、ぱす。
投げられたボールが収まった、薄茶のミットの持ち主。
帽子から覗く黒髪と、同じ色の太めの眉。気の強そうな眼。
それが上杉先輩だった。

今の音は、あのひとの投球?

握りを確かめるそのひとを、俺は金網にしがみつき食い入るように見つめた。
すると、視線を感じたのか、顔を上げた先輩と目が合った。
先輩は、俺が部活見学に来た1年生だと分かったんだろう。にぃっ と笑って、キャッチャーに「もっかい、ストレートいくわ」と言った。

足元をならし、ぐっと振りかぶって、踏み出す。

パァン!

さっきよりも、鋭い音がした。
こんなに近くで見ていたのに、見えなかった。目が追い付かない程の速球。
なんだか体がじわっとしてきて、涙まで出そうになった。
すごい…すごい、すごいすごい!!!
余程しっかりと見つめていたんだろう、こちらを見た先輩が ぶはっ と吹き出した。

「おっま、なんちゅー顔しとんねん!は、初めて球場来たガキか…ッ!!」

まさに破顔、という顔で笑った先輩。
そうして俺は、野球部に入ったんだ。

夜のバッティングセンター。仕事帰りのサラリーマンがちらほらと入っているだけで、ひとけは少ない。

「よし…」

持ってきた荷物を下ろし、素早く着替えにかかった。
マスク、レガース、プロテクター…セーフティーカップは着けてきた。
ミットをはめ、ネットの向こうに入る。
球速は…150km/hに設定した。

年代物のピッチングマシンが、ゆっくりと腕を回す。
ボールを持った次の瞬間、びゅん!とバネが弾かれた。
ドッ!

「っ、うぇっ!」

ボールは、構えたミットの下、俺の下腹部に投げ込まれた。
プロテクターで殺しきれなかった衝撃にえづく。
だがへたり込んではいけない。すぐに第2球がくる。
びゅん!

「っ!」

今度はなんとか、位置を修正したミットにボールが収まった。
しかしそれは重く、受けた左手がびりびりと痺れ、ぽろりと零れ落ちてしまった。

びゅん!

3球目。今度は捕り逃さない。
ドッ!
感覚がない左手から全身に伝わる衝撃に、しっかとミットを閉じた。
零さずに捕れた―――初めてだった。
右手にボールを持ち替え、ピッチングマシンに向けて投げ返す。
思わず

「ナイスボー!」

と、声を出してしまった。隣に入っていたサラリーマンが噴き出した。
顔が真っ赤になるのが分かったけど、それでも、150km/hを捕れたのが嬉しかった。
俺はそれから、何度も何度もピッチングマシンの球を受け続けた。 

「――っし、そろそろ上がるかー!」

9時を回り、とっぷりと暗くなったグラウンド。今日の練習はこれで終わりだ。
監督の声を受け、部員が手分けしてバットやらボールやらを片付ける。片付けは1・2年生の仕事で、3年生は先に部室で着替える決まりだ。
俺は、タオルで汗を拭きながら歩く上杉先輩を見つけると、トンボを放りだして駆け寄り、正面に回って勢いよく頭を下げた。

「うわっ!ちょ、ビビらすなや!なんや自分いきなし!?」

驚いた先輩が歩みを止める。その声に、他の部員もなんだなんだと集まってきた。

「お願いします!もう一度、俺に、先輩の球受けさせて下さい!!」

地面に向かって、大声で叫んだ。
ざわざわと声がする。「またかよ」「懲りねぇな」

あの日―1週間前、俺は「捕手になります!」と宣言し、頼み込んで先輩に投げてもらった。
先輩は「可愛い後輩の頼みやしな、しゃーない」と了承してくれた。
嬉しかった。絶対捕ってやる、と息巻いた――なのに、結果は散々。まともに捕れもしないなんて、と先輩は怒ってしまったというわけだ。

直角の姿勢で、先輩の声を待つ。緊張で体が震える。
…ため息が聞こえた。

「こん前ので分かったやろ、自分にはまだ早いで。つぅか、こないだまで素人同然やったんに、1週間かそこらで捕れるよぉになると思えへんわ」
「練習、してきましたっ!!」
「はぁ?自分、基礎ばっかで捕球練習なんぞしとらんかったやろ」
「自主練っす!!」
「おー、そりゃゴクローなこって」

呆れてる。周りも、やめとけよ、無理なんだよって空気。
でも諦めない。諦めたくない。先輩の球を、受けたい。

「お願いします!1球、1球だけでいいんです!俺に投げて下さい!!」

必死で頼み込む。土下座しようか、と思ったその時

「…わぁーかった!」

先輩の声。

「え…」
「えーかげん鬱陶しいわ。そこまで必死になんねやったら、えぇわ、投げたろ。ただし!捕れへんかったら、すっぱり諦めーよ?これから先、二度と『投げて下さぃ~』言うな」
「は、はいっ、はいっ!」

バッと顔を上げて、何度も頷いた。やった、投げてもらえる、先輩に…!
喜色満面の俺に、先輩は「1球だけやぞ」と念を押した。

急いで準備をする。他の部員たちは、片付けもそこそこに遠巻きにこっちを見ている。
先輩は、マウンドの上で退屈そうにロジンバッグを弄んでいた。

プロテクターを着けながら、俺は、バッティングセンターでの練習を思い出していた。
部活が終わった後。無機質な機械から繰り出される速球を、毎晩必死で捕った。
体に当たったり、怯んだり、捕りこぼしたりもした。たくさんした。
でも、球に慣れることはできた。
今、目の前には、憧れ続けた先輩が立っている。本物の球を投げてもらえる。

「準備、できました!お、お願いします!!」

緊張で声が上擦る。心臓がどっくどっくとはねる。
でも不思議と、体は震えていなかった。

ロジンを捨て、先輩がこちらを見据える。
強気な眉と眼、結ばれた口。真剣な、顔。
ボールを握って、ぐっ と振りかぶり、脚を上げて、踏み込む。
投球フォームはやっぱりきれいで、一連の動作がスローに見えた。
でも今度は、見とれて捕りこぼしたりはしない。

びゅんっ

きれいな「まっすぐ」が放たれる。俺の、構えたミットに向かって。

――パァン!

…左手がじんじんと痺れる。マシンの時よりも、痛い。
衝撃も、体全体に伝わって、あやうく後ろに倒れこむところだった。
でも…ミットに受けたボールは、しっかりと、掴んでいた。

「――と、れた…」

しん、としていたグラウンドが、次の瞬間活気づいた。

「え、捕ったの!?」「まーじで!?ぜってームリだと思ってたのに!」「上杉、手加減してねー!?」

わいわいとしゃべりまくる外野の声は、ほとんど右から左だった。
立ち上がって、ミットの中のボールを呆然と見つめる。
本当に…先輩の球が捕れた。

「捕られてもーたなぁ」

驚いて顔を上げた。
ぼーっとしていて、正面に先輩が居ることにすら気付かなかった。

「全力まではいかんでも、手加減したつもりも無かったんやで?自分、どんな練習しとったんや」

ここいらにオレより早よ投げれるヤツは居らへんやろー?
と、先輩は首を傾げて悩み始めた。
俺は、はっきりしない頭で答える。

「あの…バッティング、センター…」
「はぁ?」
「バッティングセンターで、球速、150にして、それで…」
「そんで捕っとったっちゅーんか!? ふはっ、ぉまっ、ちょぉっ…!!」

バッセンて…っ!
先輩が、膝から崩れてひぃひぃと笑いだした。
俺はまだ呆然としていて、部員が「どうしたどうした」と寄ってきても、説明できなかった。

そうして俺は、キャッチャーとしての華麗なる球児人生を歩み始めた。
…なんて、言えたらカッコイイんだけど。残念ながら、高校でも活躍は期待できそうにない。
1球勝負の後、先輩は俺に言った。

「ま、本気やなかったにしても、捕れたんは偉いわ。でも、正捕手になるには“捕れる”だけではアカン。アタマも、肩も、他にも色々要るんや」

とりあえず自分は体やな、地肩から話にならん!と一蹴された。これは事実だから反論できない。

きっと俺には、もう先輩の球を捕る機会は無いだろう。
3年生の先輩は今年引退するし、最後の試合までに俺の肩が劇的に強くなって、ゲームメイクもできるようになんて、なるわけないから。
でも、それでいいと思う。正捕手になれなくても、これから3年間がまた補欠続きだったとしても。俺は、あの日打ち抜かれた先輩の球を、何かに打ち込むことを教えてくれた特別な球を、しっかりとこの身で受けられたんだから。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ サルサンヒッカカリマシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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『この前バッティングセンターでマスクかぶってキャッチャーの練習してたやつがいた
それだけでも面白いのに取ったボール返しながら「ナイスボー!」とか言ってるからもう泣いた』
より妄想。ただの青春のメモ書きになったよ…。


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