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望み

元チ一ムメイ.トの二人

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

試.合が終わり、久しぶりに取材を受け、おかげで一人遅れて控え室を引き上げることになった。
試.合直後の忙しない喧騒は大分おさまり、廊下ではスタッフが数人行き来している。

自分のいた時より大分綺麗になったな、と辺りを見渡す。
今までに味わったことのない高揚感がじわじわとよみがえる。
長いグラウ.ンド生活の集大成だと思って立った場面。
放った一発は晴れ渡る青い空に、美しい放物線を描いた。
最後の思い出の舞台にしてはあまりに劇的だ。
まだいけるかもしれない。
何度も繰り返した甘美な期待。その都度味わった絶望。
でももしかして、今度こそは。

背後から自分を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。
「よう、ヒーロー」
小柄な元チ一ムメイ.トが、土で足元の汚れたユニフオ一ムのまま寄ってきた。
今日初めて敵として彼と対峙した。彼の走りを止めた場面で、彼は嬉しそうに笑っていた。
数年前、離れる時にくれた言葉の通り、彼は思い続けてくれていたのだ。
胸が熱くなった。
「言っとくけど、わざと刺されたんじゃないからな」
「でも俺のことめっちゃ意識してたでしょ。バレバレですよ」
「お前もな」
互いに笑う。
違う色を纏ってはいるけれど、同じチ一ムにいた数年前と同じ絆で結ばれている。
互いの困難と、望みが重なっていたからなのだろうか。

いつの間にか周囲に人がいなくなっていた。
「まあ今回は勝ったから良いけど、次は刺すなよ」
「ああ、その前に出さんかったらええんですね」
彼は「違うだろ」と口を尖らせる。笑いながらも、言葉を噛み締める。
次。
本当にあるのだろうか。望めるのだろうか。
「これから、何度でもお前とできるんだな」
「年に四回だけですけどね」
「最後にまだあるだろ」
昨日までなら、まるで絵空事のような会話だ。けれど、目の前の彼が言う。
信じられる。
彼はそんな気持ちを見透かすように、笑った。

鮮やかなリストバンドの手が延びて、腕に触れる。
「お前がここに戻ってくれて嬉しいよ」
彼の頭が肩に寄りかかった。じわりと感じる心地よい体温。
「俺の、望みだ」
ぽん、と優しく肩を叩かれる。
「またな」
彼は背を向けて、歩き出した。
その小さな背中に何か声をかけようかと思ったが、やめて彼とは反対の方向に進む。
余韻はここまでだ。次はもっと強くなるんだ。やることは沢山ある。
また、彼と戦いたい。この望みを叶えるために。
立ち止まって振り返る。
だがもうそこに彼の背中は見えなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(;∀; )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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