温め鳥
更新日: 2011-04-25 (月) 08:57:23
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| ドラマ イニ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| サプ陣サプ?です。
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なんでやろ。
みんなの命を救うてくれる先生の命を、なんで狙う奴がおるんや。
振り下ろされる刀を前に、何も考えず体が動いた。
佐部利は皆方の身体を思い切り突き飛ばし、そのまま浪人たちの前に立ちはだかった。
「先生!先生逃げてください!」
「何言ってるんですか佐部利君、君も一緒に逃げるんです!」
「あきまへん!」
(皆方先生は絶対に助けな、死んだらあかんお方や)
でも相手は三人もいる。皆方も自分も丸腰だ。
皆方を庇ったとき、実は刃の切先が着物の袖を掠めていたが、佐部利はそれにも気付かないほど動転していた。
それに逃げようにも足がすくんで動けなかった。
(どないしたらええんや…誰か…誰か…!)
だから今にも斬られそうであったその時、
「おまんら!そこで何をやっちゅうか!」
浪人たちの後ろから地鳴りのような咆哮が轟き、見覚えのある姿が視界に飛び込んできたその瞬間、安堵で足腰が萎えた。助かったと。
だが佐部利がそう思えたのもつかの間だった。
「邪魔だ、どけ!」
往来を塞いでいた佐部利の身体を、逃げる浪人が思い切り突き飛ばした。
「あっ」
芯が抜けたようにその身体はぐにゃりとくずおれ、そのまま堤を転がり落ちた。
吉原へそう毒の患者を診に行った帰りに起こった事件だった。
二人は医学所への帰途につき、陽も暮れた人気ない堤の上を歩いていた。
「そう毒の患者への対応は我々ももう教わりましたから、先生じきじきに出向かれなくてもよろしかったですのに」
「いいんですよ、臨床に携わることで新しく発見することや理解できることもたくさんありますから。それに…」
「それに…なんでっしゃろ?」
「佐部利君には、何か心配事でもあるんでしょうか?」
「…何もありまへんけど、なんでそないなこと聞かはるんですか」
「なんだかあまり元気がないように見えたので気になってしまって。私の気のせいならいいんですけどね」
この先生は人の身体だけでなく、心の中までも透かしてしまうんやろか。
恐々としつつも佐部利は平静を装った。心の動きを皆方に気取られてはならない。
「…しかし今日は川の勢いがすごいでんなぁ、先日の大雨のせいでっしゃろか。どうどうとえらい音がしますなあ。
ここいらは暗いし、なんや恐い気がしますわ」
堤の下で逆巻いているはずの濁流を少し覗き込み、佐部利は首をすくめた。
皆方も必要以上に佐部利の心の内へ介入するつもりはなかった。
「そういえばこの時代では治水ってどうなってたんだろう、ダムなんてあったのかな」
「だむ…?とはなんでっしゃろ」
提灯の明かりを頼りに二人でそんな話をしながら歩を進めていると、後ろから出し抜けに声を掛けられた。
「医/学/研/究/所の皆方陣殿か」
と問われ、そうですがなにか、と皆方が言い終わる間もなかったのだ。
量間が集めた人々の尽力のおかげで佐部利は濁流から救い出され皆方により蘇生が施されたが、
その後高熱で昏倒する事態になった。
「おそらく肺炎を起こしかけています」
医学所には尾形や弟子の面々が顔を揃えていたが、皆方の言葉にいずれも苦々しい面持ちになった。
「私のせいです…私と一緒にいたばかりに」
自分が未来から来なければ…命を狙われることなどなければ、佐部利がこんな目に合うことはなかったかもしれない。
自分がこの時代で何か行動を起こすことで負の影響が起こることもありうると、皆方は痛感した。
唇を噛み締める皆方の肩を尾形がいたわるように叩いた。
「それは違います。暴漢の卑怯なる行いのせいです。それよりも皆方先生、彼の治療方法につきまして先生のご意見をお伺いしたい」
皆方は尾形の真っ直ぐな目を見た。彼の存在は幾度となく皆方の迷いを吹っ切ってきた。
そして今もまた。後悔などしている場合ではないと。
「尾形先生、お願いがあるのですが、彼の治療は私に任せてもらえませんか」
「しかし皆方先生」
「ここは私に任せて、皆さんは別の部屋に控えていてください、お願いします」
その皆方の強い言葉に異を唱えるものは、一人もいなかった。
熱に浮かされた佐部利はそのあまりの苦しさに、自分はここで死ぬのだろうかという考えが頭に浮かんだ。
息が苦しい。吸っても吸っても息ができていないように感じる。
咳をするたびに胸が火をついたように痛み、身体の凍えはどんなに火を焚いたとて温もらず、がたがたと震えるばかりだ。
(けど、今ここで死んだとて悔いはない。皆方先生をお助けすることができたんや)
医術の将来、いや日本の将来を明るく照らす皆方をここで失うことは大きな損失だと、そう思った。
涙がこぼれる。いや悔いはない、とは偽りだ。
この先もっともっと皆方先生にお仕えして様々な医術を学びそして、そして日本一の医者になりたかった。
(くそ…俺はもうほんまにあかんのか)
口惜しさに次々と涙が滴る。泣いたとて事態は何も変わらないのに。そう佐部利が自嘲した時、ふと滴る涙を拭うものがあった。
その指先の感触は優しく、触れた部分を蕩かすほどに心地よい。
身体の力みが不意に抜け、佐部利はぼんやりと目を開けた。
(…菩薩や)
眼前には柔らかな笑みを湛えた菩薩がいた。
いや、死の淵でこんなにも人の心を穏やかにさせるのは菩薩しかいないと、そう思ったのかもしれない。
「佐部利君、しっかりしてください」
(皆方先生の声や…)
また薄目を開ければ、今度は皆方の潤んだ熱い瞳とふっくりとした唇が目に入った。
(先生のその唇に触れられたなら…そこがきっと極楽浄土やな)
そのうちするするという衣擦れの音が聞こえ、佐部利が首を傾けるとそこには襦袢一枚の姿になった皆方が佇んでいた。
行灯の柔らかい明かりに照らされたその姿は、しっかりとした骨格や筋肉の影を浮かび上がらせ頼もしく見え、
しかしその静寂の表情は仏の迎えに思えた。
(そうか…皆方先生は仏の化身やったのかいな)
あの神がかり的な医術にも納得がいくというものだ、と佐部利は我知らず微笑んだ。
神さんと張り合うても仕方のないことやな。先生も人が悪いわ。
もう意地悪せんと、冥土へ連れて行ってくれはったらええのに。
そう夢見心地でいた佐部利の身体が確かな重みと温もりに包まれ、そしてすぐ耳元で皆方の声が響いた。
「君を死なせるわけにはいかない。君に死なれたら…困ります」
(先生…なんでそないなこと言わはるんですか…先生はほんまにいけずや)
皆方のすべすべとした温かい身体に抱かれ、佐部利の意識は深い闇の底へと遠のいた。
「全くお主も情けないのう。川に落ちたくらいでこのように寝込みおって」
矢間田はぶつくさ言いながら椀に粥を注ぎ、佐部利へ突きつけた。
「そんな風に言わないでください。彼は私の命を助けてくれたんですから」
優しく点滴の針を抜きながら、皆方は佐部利に微笑んだ。
「助かってよかった、本当に」
「私こそ…皆方先生がご無事でほんまに良かった…」
二人を襲った暴漢が誰の手の者かはわかっていないという。
しかしとにかく皆方さえ無事ならそれでいいと、佐部利はその笑顔を見るにつけつくづくと思った。
あれから一晩佐部利は生死の境を彷徨ったが、発病より三日経った今では床から身体を起こせるまでに回復した。
医学所の面々は佐部利の回復ぶりを喜び代わる代わる見舞いに訪れたが、当の本人が絶えず考えているのは熱にうかされていたときのことだった。
(えらい夢をたくさん見たなあ…菩薩やら仏やら…それからなんや皆方先生が着物を脱がはって…)
皆方と素肌を合わせたなどと、そんなとんでもない夢を。
床の中で皆方は時折佐部利の身体を労わるように撫で、優しく、だがしっかりと抱きしめてきた。
全てをこのお方に委ねてしまいたいと、佐部利は夢の中で願ったことを強く覚えていた。
(いや、そんなわけない)
全ては夢だ。熱による幻覚だ。いや、もし例え現実に起こったことだとして皆方にどう確認すればいいのか。いや、そもそも確認などしてどうなるものか。
佐部利がたまらずかぶりを振ったとき、折りよく騒々しい来客が現れた。
「おお、もう飯が食えるがか!飯が食えるようになったらもう大丈夫じゃな!」
土佐の坂元量間が酒壷を片手にひょっこりと顔を出した。
「快気祝いじゃき」
ニカッと人好きのする笑いをするこの脱藩浪人に、佐部利は皆方ともども命を救われたのだ。
「坂元はん、この度は命を助けていただき、ほんまにありがとうございました」
佐部利がそう頭を下げると、量間はからからと笑った。
「いんや、おまんも大した男ぜよ。よう皆方先生を守ってくれた」
気を良くしたのか、量間はどっかりとその場に座り込み、朗々とあの夜のことを語りだした。
「…ほんでのう、こりゃ大変じゃと思うて人手を集めてのう、みんなでおまんを川の中から助け出したちゅうわけじゃ。
丘に上がったときは息しておらんかったぜよ。そこでこの皆方先生が口移しでおまんに何度も息を吹き込みながらこう胸をぎゅうぎゅう押したらば」
「えっ、今なんと?」
聞き捨てならない言葉に佐部利は目を剥いた。
「いや、だから口移しで息を吹き込みながら胸をぎゅうぎゅうと押したらば、見事水を吐きよったというわけよ。
それで助かったんじゃき、皆方先生も命の恩人ぜよ」
(…口移し?)
「しっかし皆方先生でも漁師が溺れやった時みたいなことをするんじゃなあ」
「人が溺水したときの対処方法はいつの時代も変わらないと思いますよ」
そう屈託なく笑う皆方の唇を、佐部利は陶然と見つめた。
(あの唇に触れたんやなあ…全く覚えてへん。当たり前やけど)
「…佐部利君?」
皆方に声を掛けられ、佐部利ははっとなって目をそらした。思ったよりじっと見つめすぎていたかもしれない。
無垢な表情で佐部利の様子を伺う皆方の目は夢に出てきたような熱く潤んだものとは無縁に思えた。
(惜しいことをしたやろか…しかし意識があるときに触れてしもてたら、ほんまに極楽浄土行きやったかもしれんわ)
あの夢の中の、匂い立つような色香の先生に…。
「なんじゃあ、先生とふたぁりきりで過ごした一夜を思い出して、手元がお留守になっちゅうがか?」
「そ、そんなんちゃいます…!あ、あつぅ!」
ぼんやりしていたところを量間にからかわれたので、佐部利はあたふたと椀の粥を啜り、舌を火傷したふりなどせねばならなかった。
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| | □ STOP. | |
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| | | | ピッ (・∀・ )ナンバリングミスorzそして百合百合しくてすみませんでした
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