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赤僕/藤拓

・久々に読んだら辛抱溜まらんくなったのでやった。
・書きたい部分だけ書くので場面が突然変わります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

人の告白になんて出くわしてもいいことはない。まして、実らなかったらなおさら。
拓也が次の授業の準備の為に渡り廊下を歩いていると、風に乗って藤井の声が届
いてきた。
曰く、俺、そういうの興味ないから。
いくら鈍い拓也であろうと、人通りの少ない渡り廊下近くの校舎の裏は場所柄告白
スポットとして多用されることは知っていたし、二人の姿は見えなくても、藤井のその
言葉の意味が何を意味するのかは理解できた。
藤井の言葉の直後、軽い足音が校舎の奥に駆け足で消えていく音が聞こえる。その
後、渡り廊下側に藤井の姿が見えた。藤井は頭をかいていたが、拓也の姿を見つけ
て目をぱちくりと見開く。
「榎木」
どきりとする。あんな場面に出くわしたのもあったし、偶然とは言え結果的に立ち聞き
してしまった罪悪感もあった。
「ふ、藤井君」
「どこ行くの」
「あ、えと、次の授業の教材を……」
「国語だっけか」
「う、うん」
中学生になり、藤井君は今までに増してモテるようになった、と拓也は思う。女の子に
呼び出されるなんてしょっちゅうであったし、同学年だけでなく先輩からの呼び出しも
あるようだ。
(藤井君かっこいいもんなぁ)
当然だよね、と拓也は納得しながらも、何でか抑えられないもやもやを抱えていた。
恐らく告白玉砕の場面に立ち会ったせいだろう。
「手伝うよ」
「え」
「あのセンセ、いつも教材多いだろ」
「あ、ありがとう」
藤井の靴は上履きだった。校舎の周りはコンクリートで固められており、数歩以内で
あれば土を踏むことはない。藤井はそのまま渡り廊下を伝って、南校舎へと入る。
(僕が聞いてたこと、知らないのかな)

それとも誰に聞かれようが気にしないんだろうか。そうかもしれない。藤井君動じない
もん。負けず嫌いで兄弟思いで努力家だけど、やっぱり根本はクールなのだ。
告白の返事だって、「ごめん」とは言わなかった。
(興味……ないのかな)
拓也はまだ実でいっぱいいっぱいで、恋はよく分からなかったけれど、大人びた藤井
が興味ないというのは不思議に思えた。
(藤井君だって一加ちゃんとマー坊いるもんなぁ)
大変なのかな。大変だよなぁ。でも確かに恋にときめく藤井君のほうが想像できない
かも。そんな失礼なことを思いながら、拓也は藤井に半分教材を持ってもらって教室
へと戻る。
「なあ」
「ん、あ、何?」
「榎木ってモテるよな」
「ふえ!?」
「何だよ」
「え、だって」
何でそうなるんだろうか。先程まで告白されてたのは藤井君のほうなのに。
「モテるのは藤井君のほうじゃない?」
「んー、あのさ、榎木は告白されたら付き合おうって思うか?」
これ相談されてるのかな。真面目な拓也はううむと真剣に考える。拓也に現在好きな
女の子はいない。もう少し実が成長したら自分にも恋ができるようになるのだろうか、
と漠然とは思うが、現在は難しいだろう。
「付き合わないかな。僕、好きな女の子いないし。告白されたら嬉しいけど、きっと同じ
くらい申し訳ないと思うよ。応えられないもん」
「ふーん」
「藤井君は……」
どうなの、と聞こうとして拓也ははっと先程の場面を思い出した。興味ないんだっけ。う
っかり聞いてしまった。
「俺、好きな奴、いるから」
(えっ……)

「顔にすぐ出る」
「うわっ!ご、ごめん」
「いや、悪いこたねーけど」
(藤井君が……)
彼女を作る。先日まで小学生だった拓也にとって、恋人ができるというだけで大人な
気がする。小学生の時もあの子が好きこの子が好き、という話はあったけれど、結局
付き合うだとかそういう浮いた話はなかった。
告白したら、女の子は迷うことなく了解するだろう。何せ相手は藤井君だもんな。
「榎木」
藤井は教室へと入る前に、拓也を振り返った。
「応援してくれるか?」
「……うん」
藤井の恋を応援する必要があるのかは拓也には分からなかったが、にこりと珍しく微
笑んだ藤井に思わず首を縦に振った。もやもやは広がるばかりで、拓也はそっと胸を
押さえた。

□ 一時STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ココ、バメントブ!ギョウカン ヨンデクダサレ

「な、何でか分からないんだけど、でも何だか……」
拓也は必死にこの感覚を藤井に伝えようとする。制服のが皺になることも構わず胸を
掻き毟って、心臓を上から押さえるが言うことを聞かない。
「藤井君だけ大人になっちゃうみたいで、嫌なのかと思ったんだけど、」
藤井は黙って聞いていた。拓也の必死を笑うこともなく、受け流すでもなく、真剣な表
情で聞いてくれる。
「違うみたい、で……おかしい、のは分かってるんだけど」
でも、何だか、嫌なんだ。
何が言いたいのかめちゃくちゃだと拓也は思う。もやもやして、自分が汚いみたいで、
言いたいことも言えず拓也は目に涙を堪えた。

でも、何だか、嫌なんだ。
何が言いたいのかめちゃくちゃだと拓也は思う。もやもやして、自分が汚いみたいで、
言いたいことも言えず拓也は目に涙を堪えた。
「俺が誰かと付き合うのが嫌なんだな」
うん。拓也は頷く。
「俺が告白されるのも嫌なんだな」
うん。
「俺と遊べなくなるからか」
うん。
「それだけじゃないだろ、榎木」
え。
「俺のこと、好きなんだろ」
拓也が藤井の言葉に顔を上げると、藤井の顔がすぐ傍にあった。教室の西日を浴び
て左側半分を赤く染めた藤井の顔は、近距離で見てもやはり整っていた。
「藤井君、を?」
「そうだよ」
「だって、友達なのに……」
「見たこともない女にいつの間にか惚れてるよりは普通だろ」
「でも、僕、男だし……」
「偏見ある?」
そう言われれば、ない。黙り込んだ拓也の額に藤井はちゅっとキスをする。
「……え?」
「ラッキー。俺も、榎木のこと好き」
え?え?真っ赤になって西日のせいだけでなく顔を赤く染める拓也に、藤井は目を細
めて笑いかける。
「俺、告白しようと思ってたの榎木なんだぜ」
キスされた額が熱い。拓也はじわじわと上がる熱に、額を押さえた。まだ感触が残っ
ている。
「応援してくれるんだろ」
意地悪そうに笑う藤井の顔はやっぱりかっこよくて、拓也はうわあ、と口を押さえて机
に突っ伏した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
・一個ナンバリングが余りました
・すごく…王道な感じです…
・楽しかったです。ありがとうございました!

  • きゃー!!藤拓ごちそうさまでした!! また、書いてほしいです>< -- ワンわん? 2011-03-25 (金) 10:59:22
  • 赤僕久々に読み返して検索でたどり着きました。萌えました〜! -- 2011-07-25 (月) 07:32:11
  • 同じく再読してて萌え滾って、ここに来ました!藤拓大好きです!超萌え作をありがとうございます! -- 2012-03-13 (火) 22:28:56
  • 前々から、赤僕シリーズを読みあさっています!I Love 藤拓です!ありがとうございます! -- 2014-08-12 (火) 15:25:14
  • 最高です!やっぱり藤拓ってものすごく萌えるCPですよね! -- 小間? 2016-08-31 (水) 00:14:33

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