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健二←佳主馬

昨日の183-191の前作にあたるものです。
こっちにあげてなかったのであげますね。
サマーウォーズで健二←佳主馬です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

夏の暑い日差しが差し込む中、二つの影が陣内家の畑の中で動いていた。
「佳主馬くん、ほかにいるものあったかな?」
籠いっぱいに入った採れたての野菜を佳主馬の目の前に置いて健二はそう言った。
「もう大丈夫なんじゃない?」
佳主馬はパチン、と最後にはさみでなすびを採ると、自分の籠の中へいれ、籠を持って立ち上がる。
そして汗が一筋流れたのを腕で拭い、健二を見上げた。
「そっか。じゃあそろそろ戻ろうか」
健二がそう言うと、こくりと佳主馬は頷き、二人は家の咆哮へと向かって歩き始めた。
「それにしてもおばあさんって凄い人だったんだね。毎日毎日こんなに人が来るなんてびっくりしたよ」
道中、健二が籠にある野菜を見ながらそう言う。
「まあ、顔は凄く広かったみたいだから」
「そっか」
あれから一週間。
本当に栄が亡くなり、世界を揺るがす大事件が起きたのかと思うくらい陣内家は落ち着いていた。
遺言の通りお葬式も身内だけで簡単に終わらせたのだが、彼女の死を悲しむたくさんの人々が毎日訪れるものだから、掃除や料理、お客のもてなしをしなければならない女性陣は物凄く大変そうだ。
あの事件の時あれだけ活躍した男性陣は、やってきた客達と思い出話に花を咲かせたり、居場所がなくなり毎日毎日落ち着ける場所を探すのでそれはそれで大変だ。
健二は夏休み中は陣内家に滞在することと決めたが、もちろん後者の人間だったため、ここ数日はあちらこちらを行ったり来たりしている。
今日は女性陣に頼まれて野菜の収穫。
佳主馬も母親に言われ、こうして手伝うこととなったのだ。

「佳主馬くん、そんなに持って大丈夫?」
籠いっぱいに入った野菜を持つ佳主馬にそう尋ねる。
「別に平気だよ。お兄さんこそ普段体動かしてないみたいだけど大丈夫なの?」
ハハ、と少し苦笑いし佳主馬の方を見ると、こちらを見ていた目がスッと逸らされる。
「……どうかした?」
不思議に思い、そう尋ねるが佳主馬はこれといった反応もせず歩いている。
おかしいな、何かしたかな?
そう思い、色々考えてみるが特に何もしていないはずだ。
沈黙が続き、微妙な空気となる。
健二は何か話題を出そうと口をもごもごと動かすがこれと言った話題が思いつかず頭を悩ます。
そんな時、佳主馬が独り言のように呟いた。
「夏希姉さんのこと好きなの?」
「えっ?」
急な佳主馬の質問に健二は思わず籠持っている手に力が入ってしまい、そのせいでバランスが崩れ、端から胡瓜が地面へ落ちた。
「だから、」
「え、ちょ、ちょっと待って」
籠を一度地面に置き、胡瓜に傷がついていないのを確認すると、籠の上にもう一度載せる。
「いきなりどうしたの?」
苦笑いを浮かべながらそう尋ねる。
「質問に答えて」

相変わらず目を合わせず、視線を籠の上に落としたまま佳主馬ははっきりと言った。
健二は思わず息を詰まらせる。
いきなりどうしたのだろうか。あまり恋愛とかに興味なさそうなのに。
籠を持ち上げ佳主馬の方を見ると、今度はこちらを見ている。
しかし、いつもの鋭い視線ではなくどこか弱弱しい、何かを求めているような視線を送っているような、そんな感じだ。
「……好き、だよ?」
そう答えた瞬間、視線がさらに弱弱しくなった気がして健二は首を傾げた。
「……そっか」
そのままいつの間にか止まっていた足を再び動かし、佳主馬は家の方へ歩いていく。
「何か悪いこと言った……?」
思わずそう口から出て、健二は少し後悔した。
もう少しまともなことは言えないのか、自分。
「行くよ、お兄さん」
佳主馬は答えなかった。
健二は、小走りになって佳主馬のあとをついていくと頭を悩ませる。
まだ佳主馬のことはよく掴めない。嫌われているわけじゃないんだろうけど。
健二は佳主馬の小さな背中を見て、家に帰ったら聞いてみようと思った。

あの後、台所に野菜持って行くまで会話はなく、運び終えると佳主馬はさっさと自室へ戻ってしまった。
どうしようかと考えながら自分の部屋でごろごろしていると、突然わっ!と縁側の方から声がして健二は起き上がる。
「な、夏希先輩!?」
「先輩はなしって言ったでしょ」
「す、すみません、夏希さん」
「さん付けもちょっとなぁ……。ま、いっか」
サンダルを脱いで部屋にあがると、縁側に座りこむ。
「どうしたの?元気ないじゃない。何か悩み事?」
「そういう……わけじゃないんですけど……。その、佳主馬くんがよく分からなくて」
「佳主馬がどうかしたの?」
「どうかしたってわけじゃないんですけど、何か変なんです」
先ほどのことをもう一度思い返してみるが、別に悪いことは言ってない気がする。
「うーん……、私もあまり佳主馬とは喋らなくなっちゃったからね」
「そうですか……」
うーん、という唸り声をあげながら二人は考える。
「健二くんはどうしたいの?」
その夏希の質問に健二は考える。
「……仲良くなれたらな、って思います」
「じゃあ話してごらんよ。佳主馬、見てたら結構健二くんのこと気に入ってるみたいだし」
「そう、ですか?」
夏希が頷く。
「何か夏希先ぱ、夏希さんにそう言ってもらえると自信でました」
「よかった。って、もう先輩でいいわよ」
その言葉に健二はハハ、と照れたように笑う。
夏希もつられて笑うと、夏希の携帯が鳴った。
「あ、ごめんね。……うん、わかった。すぐ行く……はーい」
「どうしました?」
健二がそう尋ねる。
「ごめん、ちょっと手伝わなくちゃいけないみたい」
「あ、ありがとうございます。何か相談乗ってもらうみたいになっちゃって」
「別にこれぐらいいつでもいいわよ。じゃあね」

サンダルを履いて、縁側の向こうに消える背中を見送る。
そしてゆっくりと立ち上がると、大きく背伸びをして部屋を出た。
今頃、部屋でパソコンしてるかな。
何を話すかは全く考えていなかったが、健二は佳主馬の部屋へ足を進めた。
向かっている間、何を話そうかと色々考えるが良い話題が思いつかない。
と、いうよりも話題が広がらなさそうだ。
向こうが少しでも興味持ってくれる物があればいいだけどな。
そうこう考えているうちに、佳主馬の部屋の前にたどり着き、健二はコンコンと部屋をノックする。
話すことができたら何とかなるだろう。
それが結局健二の行き着いた結論だ。
暫くしてドアが開くと、佳主馬が健二の顔を見上げ尋ねた。
「何か用?」
「あ、あの……ちょっと話でもしようかなって……」
さすがにちょっと急すぎたかな?と、意味もわからず緊張してしまい、上手い言葉が出てこない。
少し間が空き、チラリと佳主馬の目を伺うと、その視線は鋭かった。
「……入りなよ」
そう言って、薄暗い部屋の中へ健二を案内する。
健二は何故か少し腰を低くしながら中へ入ると、佳主馬に勧められた座布団の上に座る。
「話って何?」
佳主馬はそう健二に尋ねる。
「え、えっと……」
何を話そうか。それにしても何故自分はこんなにも緊張しているのだろうか。
相手は自分より四つも下の男の子だぞ。
暗示のように何度も何度も咀嚼しようとするが、上手くいかない。
あまりにも物を言い出そうとしない健二に痺れを切らしたのか、佳主馬が口を開く。
「何しにきたの?」
怪訝な顔を浮かべ、そう投げかける。
「そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ何?簡潔に、分かりやすく、さっさと言ってくれない?」
「うっ……」
はっきりそう言われてしまうと、余計に言いにくい。

健二は目に見えてわかるほどうろたえてしまい、両手で何か表現しようとしているのか忙しなく動かしている。
「……その……、えっと……」
佳主馬はじっと健二の方を見てる。
チラリと様子を伺ってみると、鋭い視線が健二を刺した。
思わず視線が下がる。
「……か、佳主馬くんと……仲良くしたいな……って……思って……はなしを……」
言っている間中、というより言った後、あまりの恥ずかしさに健二は顔から火が出るかと思うぐらい顔を赤くさせた。
思えば仲良くしたいと思う相手にいきなり「仲良くしてください!」なんて言うわけないのだ。
自分の気持ちをこれだけダイレクトに言うのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。
何の反応もない佳主馬の様子を伺おうと顔を少し上げると、顔を俯かせたまま動かない。
薄暗いため表情はよく見えなかった。
「か、佳主馬くん……?」
「お兄さん恥ずかしくないの?」
早口でそう言われたため、何だか怒られてる気がしてきた。
健二は肩をしゅんとさせる。
「……すっごく恥ずかしいです」
健二は恥ずかしさのためか、後頭部をひたすら手で擦っている。
「いきなり、何でそんなこと」
「何でって言われても……、避けられてる気がしたし……」
「バッカじゃないの?」
「うぅ……」
年下にここまで言われるとさすがに自分が情けなくなってくる。
健二はハァ、とため息をついてもう一度佳主馬の顔を伺った。
「……佳主馬くん?」
石のように俯いたまま動かない佳主馬に健二は不思議に思い声をかけた。
「佳主馬くん」
もう一度その名前を呼ぶが、反応はない。

健二は腕を伸ばし、佳主馬の体を揺さぶろうと肩に触れると、「うわっ!」と大きな声をあげて後ずさる。
「ど、どうかした!?」
そう健二が尋ねると、佳主馬は目をパチパチと瞬かせて健二の顔を見た。
「な、何にもないから!」
「で、でも……」
「大丈夫だから!」
そうはっきり言われて、健二は伸ばしたままの手をそろそろと戻す。
ただ、目が合ったまま離れず、気まずい沈黙が流れ始めた。
そのまま暫くして、ようやく落ち着いたのか佳主馬はフッと目を逸らす。
そしてパソコンの方を向いて、カチカチと操作し始めた。
「その、佳主馬くん?」
「何……?」
どうやらメールが来ていたみたいだ。
パソコンの画面ではキング・カズマがメール持ってOZの中へと消えていった。
「僕のことは嫌いじゃないんだよね……?」
マウスを動かしていた手が止まる。
そしてまた暫く間が空く。
どこか遠くで子供達のはしゃぐ声が聞えた。

「……嫌いじゃない。っていうかお兄さんのこと凄いなって思うよ」
こちらを振り向く気配はない。
「一週間前はお兄さんが居なかったらもっと大変なことになってただろうし、もう陣内の皆お兄さんのこと認めてる。夏希姉さんも……ボクも」
佳主馬の小さな背中は動かない。
「……ごめん、今からすることあるから出てってくれる?」
「うん、わかった」
健二はゆっくりと立ち上がり、佳主馬を見下ろす。
「ボク、お兄さんのこと嫌いじゃないから」
「……そっか。じゃあ、また後で」
「うん」
そう会話を交わすと、健二は佳主馬の部屋を後にした。
あまりよくわからないままだが、今度はもう少しまともに会話が続くといいなと思い、健二はゆっくりと廊下を歩いて自室へ戻って行った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

健二視点なんでにぶにぶです。


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