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Melt2

138の続きです。連続投下すみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
おもわず、裏の林まで走ってきてしまった。――スキ、すき、好き。少し掠れた、熱に浮かされたような声で言われた二文字が、ぐるぐると頭の中を回る。
息が苦しい気がして、ずるずるとその場にしゃがんだ。心臓もなんだか痛い。
「す、き……」
自分で口に出して恥ずかしくなった。そんな言葉、ネットの中だけだと思ってた。キング・カズマじゃない、僕に向けられたもの。血縁以外では、記憶を辿る限り初めての好意。
でも、相手は男で、年上で、僕の従姉の婚約者で、数学オリンピックになり損ねた健二さんだ。いやオリンピックは関係ない、落ちつけよ僕!
「佳主馬くんっ」
「うわああああ!」
「……あ、ご、ごめん」
申し訳なさそうに眉を下げたお兄さんが、地面にへたり込んだ僕を立たせてくれた。
それにすら、鼓動がはやくなる。死ぬんじゃないのこれ。ていうか、かなり格好悪いよねこの状況。
「その、さっきは、いきなり蹴って、ごめん…なさい」
「僕の方こそ、びっくりさせてごめん……」

歯切れの悪い会話が沈黙に変わる。まだ触られた所が熱い。ちらりとお兄さんをみると、情けないような、頼りないような、胸が痛くなる笑い方をしていた。
「どうして、悪くないのに、謝るの」
「悪いよ。佳主馬くんがどう思うかわかってて、あんな事言ったし、しようともしてた。……佳主馬くんが欲しかったのはあんな答えじゃなかったよね、だから僕が」
「もういい」
なんだろう、苛ついた。僕に発した言葉を取り消そうとしてるから?それとも、悪くないくせに自分が間違ってると思い込んでるから?違う、そんなんじゃない。
「おにいさん」
ぐ、と背伸びをして、襟をつかむ。そのまま引っ張ると、お兄さんの顔が間近にきた。
「か、佳主馬くん…?」
「僕の目をみて、もう一回言いなおして」
ぽかんと口をだらしなく開けて、お兄さん思考をぐちゃぐちゃに巡らせているようだった。更に引っ張って、今度は耳元でゆっくりと発音する。
「僕の事、すき、なんでしょ?」
もうオリンピックでも婚約者でもなんでもいいから、好きって言葉がききたかった。
僕の行為に、お兄さんの顔が真っ赤に染まる。その表情に優越感を覚えていたのも束の間、かがんだまま、お兄さんが抱き締めてきた。耳に、ちゅ、と柔らかい感触がする。

「なっ」
「すき、すき、……だいすき」
唇が耳の下、輪郭、首と落ちてくる。離れようと肩をおすと、少しだけ隙間をあけて、お兄さんが僕をみつめた。
「……佳主馬くんも言って」
「は?」
「僕の事、どう思う?」
ああもうだめだ。ごめんなさいお母さん。なにも考えられなくなって、僕はお兄さんの唇に自分の唇を重ねた。……あ、ソーダの味。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
長くなってしまいすみませんでした。


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