生 「最悪の赤」
更新日: 2011-01-12 (水) 00:31:06
なまもの。完全捏造です。ダメな方はスルーしてください。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
思い出すのはほんの数時間前のこと、今日の自分の不甲斐ない姿ばかり。
期待も信頼もなにもかもすべてひっくり返してしまった反動で、負の感情が入り混じって大きな渦を作っている。
なにかにぶつけようにも生憎ここは自分の部屋ではないし、部屋にいるのも自分ひとりではないし、
こんなことになるのなら、外へ食べに行くという彼らの誘いに乗っておくべきだった。後悔しても遅いのは、なんだって同じだ。
「俺の部屋のポット壊れてるからちょっとお湯わけて」だなんて、あからさまな口実を連れて部屋に来たくせに、
悪びれる様子もない涼しい顔をした男が、この部屋の空気をめちゃくちゃにしている。
給湯室を探せ。他のやつのところへ行け。フロントに電話して違うの持ってきてもらえばいいだろう。
直ぐさま浮かんだ言葉は数あれど、どれも投げることができなかった。いざというときの思い切りが悪い。
そう、あのひとにも言われている通りで、反論はできない。
「…勝手につかって。さっさと帰って」
「そうする」
すっとぼけた反応はいつものことだ。調子のいい男だと知ってしまったあとだから、もうなんとも思うことはない。
男は宣言した通り、なみなみと水を汲んだポットを机まで運び、コンセントを差し込みお湯を沸かし始めた。
明らかな嘘を取り繕う必要なんてないのに、こういうところだけ無駄に律儀。
明日の朝には冷えてしまい、誰かに捨てられてしまうだろう運命のそれが不憫だ。
おまえなりに気遣ってくれているのはわかる。だから、そのやさしさがいまは不要だということをわかってほしい。
本当におれのことを想うなら、いますぐ出ていってくれよ。
ぽこぽこと部屋に響く音がだんだんと大きくなる。男は鏡台の前に置かれた椅子に座ったまま、その場所を動こうとしなかった。
ずっと、自分を見ているのには気付いている。迫りくるポットの重低音が間抜けだ。
備え付けのティーパックを手に、真面目な顔をして、「緑茶と紅茶、どっちがいい?」だなんて、
ふざけたことを、馬鹿みたいに明るい声で聞いてくる。おれにはおまえが、何を考えているのかわからないよ。
「おまえなにしにきたの」
「お茶、飲みに」
「こんな時間になに考えてんの」
「お前のことしか考えてないよ」
予想しなかった言葉に反射的に顔があがって、まっすぐな瞳に捕らえられる。
あの距離で見ているいつもと同じ強さ。逸らせないことを瞬時に悟る。
この数年で慣らされてしまった習性なのか、本能的なものなのか。
どっちにしたって、おまえはこのときを待っていたんだろう?これで希望通りだよちくしょう。
「お前のことしか、考えてないよ」
思い切りにらみつけていたのにそんなことには構わない態度で、男は同じ言葉を繰り返した。
もう一度、ゆっくり、子供に言い聞かせるみたいに、ひどく優しい声音で。
いつのまにか、沸騰がおわったのか静かになったポット。慈しむように触れていたそれから手を離して、
こちらへくるりと身体を向けた。おまえの眉間にしわが寄るのをみるのは、あまり好ましいことではない、と思う。
どれだけ距離があろうと、なかろうと。
「悪かったって思ってる」
「…なにを」
「お前になにもしてやれなくて」
なんでそんなことを、おまえが、気にしているんだよ。おまえが謝る必要なんてなにもないんだ。
責任を負うのはお前だけだから、とおまえは言うけれど、おまえは勲章をもらえない。
どっちに転んだって、名前が残るのは自分だけだ。この世界のルールはとてもうまくできている。
リターンがあるのもダメージがあるのも自分だけ。だからなにひとつ文句はない。
誰にも、おまえにも、この責任をわけてやるつもりはない。調子はよかった、それは嘘ではない。
おまえの意図がわからなかったわけでもないんだ。わからなければ従わない、いくらでも首を振ってやる。
おまえだってわかっているだろう。
「見くびるなよ、おれを」
「うん、お前はそういうってわかってたけど」
「だったら言うなよ」
「言わないと、きっと一生言えないままだろうから」
「ばかなんじゃないの」
「そうだね」
やり場のない感情をぶちまけてやれば、きっとすべて受け止めてくれるだろう。おまえは優しいから。
なにを言ってもおれには怒らない。おまえは優しすぎるんだ。
おれが、おまえのそういうところが嫌いだってこと、おまえは知らないんだろう、わかろうともしないんだろう。
「で、緑茶と紅茶」右手に緑、左手に茶色のパックを持って、さあ選べ、とばかりに差し出してくる顔が気に食わない。
変化球でかわして得意気になっているんじゃ、三流もいいとこだ。おまえ、強気のインサイドワークが持ち味じゃないのか?
「コーヒーが飲みたい。ホットの。ブラック。外の自販で買ってきて」
「こんな時間に?」
「こんな時間に」
「眠れなくなるよ」
苦笑いをしたおまえの額を撫でてやりたくて張っ倒してやりたくて、いろいろな想いが生まれては消える。
今日はこのまま、眠れないんだろう。この想いを消化できないままじゃ、きっと、「どうせ、眠れないよ」
「どうして」
「どうして?」不思議な顔をしたおまえに、うまく返す言葉が、みつからない。
「お前は、なにを考えてるの」
おまえは、なにを聞きたいの?
喉まで出てきた言葉を飲み込んだ。オウム返しの繰り返しは、ひどく空しい。
考えていることを言葉にするということは、とてもとても難しい。伝わるように話そうとするなら尚更のこと。
おれは、おまえのきいていることが、わからないよ。
「抱え込むの、お前の癖でしょ。でも俺はそういうところ嫌いじゃないから話してほしい。
お前だけで背負って世界のおわりみたいな顔、しないでよ、もっと頼ってほしいって思ってるから」
どこか芝居がかった、張りのある、しかし優しくやわらかな声。
この男のこの声に、言葉に、何度となく騙されてきた。
おまえがいなければ、いまのおれはいなかったんだってこと、言わなければわかってもらえないのか?
「お前は余計なこと考えなくていいよ。俺のこと信じてみてよ」
なんでわからないんだ馬鹿にするなよ。そう、投げつけてやればよかったんだ。
なんでおまえはわかってくれないんだ、おれにはそれがわからない。
おれがおまえを信用していないとでも思っているのか。疑っているのはおまえのほうだろうと喚き散らしてやりたい。
しんじているよ、いつだって。あの場所からみえるのはおまえだけだ。振り向かなければ味方はみえない。おまえしかみえないんだ。
おまえを疑ってしまったらなにもはじまらないんだよ、しんじるしかないんだよ。だから騙し続けてみせてくれよ。
おまえは、ゆびさきと視線だけで、おれのことなんかどうにだってできるんだってこと、わからないの?
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
規制かかっちゃった、手際悪くてすみません
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