デーモンズ・レキシコン ニック×アラン
更新日: 2011-01-12 (水) 00:29:53
1乙
スレお借りします。
『デ/ー/モ/ン/ズ・レ/キ/シ/コ/ン』の弟×兄です。
1巻終了後で微妙にネタバレ気味。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
気配を消して動くことは得意だった。
いつものアランなら、それでもすぐにニックの存在に気が付いたはずだ。
こんな状況じゃなければ、きっと今も。
そしらぬ振りをして、アランの部屋の前を通り過ぎることもできた。
そうするのが普通だろう。頭ではわかっていた。あえてそうしなかったのは、どうぜ自分は『普通』でないという皮肉めいた自覚と――漏れ聞こえた兄の声に、どうにも胸がざわついたから。
そっと、細いドアの隙間から部屋をうかがう。
ベッドの上に、兄が座っていた。こちらからは、見えるのは丸めた背中だけ。それだけで、彼が何をしているのか知るには十分だった。押し殺したような吐息と、かすれた声。
ぞく、と背筋が震えた。
なんだろう。ニックを首をかしげた。
この、感じ。正体のわからない、衝動。
言葉を扱うことは苦手だった。ましてや、一瞬の衝動に名前を見つけることなど。
ことさら大きな動きで扉を開けたのは、意識してのことだ。
ぎい、と。思ったとおりの音に、兄が弾かれたようにこちらを振り返った。そのはずみに、兄の手元から床に何かが落ちる。
「……ニッ、ク」
掠れた声と、かすかに潤んだ瞳。弟の視線を受けて、その顔から血の気が引く。
兄がどういう状態なのか、ニックにわからないはずもない。たとえ本性がどうであろうと、16年間は彼と同じ普通の男として生きてきたのだから。
「へえ」
弟のからかうような声に、アランの頬にさっと朱がさした。
「こ、これは、……その」
あのメリスにも、ブラック・アーサーに対してさえ臆することのなかった兄が、動揺もあらわに声を詰まらせる。それが面白くて、ニックは部屋の中へと足を踏み入れた。
ベッドの下に落ちていたのは、よくあるグラビア雑誌だった。取り立ててそういう用途に限定したものではないけれど、兄はどんな顔でこれを買ったのか少しだけ興味を覚えた。
こちらに越してきてからも、アランは本屋で働いている。そこで手に取ったのかもしれない。
背をかがめて雑誌を拾いあげる。おい、という兄の声を無視して開いていたページをみると、露出度の高い格好をした女性が挑発的なポーズをとっていた。その女性に知り合いの面影が重なる。
髪の色こそブロンドだが、これは。
僕は誰かに愛されたいんだ、と。
いつか、そう言ったときの兄の声を思い出す。
愛というのが何なのか、ニックにはわからない。
ニックには決して与えられない、理解さえも不能なもの。
わからない。どうしてそれを、アランが欲しがるのかも。
「ふうん……なるほどな」
思いのほか冷たい声になったのは、意図したわけではなかった。
「ち、違う」
「何が違うって?」
お見通しだよ、と言外に告げる。
アランが片思いをしていた、ピンク色に髪を染めた女性。
「返してくれ、ニック」
返して、そのまま出て行ってくれ。
兄がそれを望んでいることはわかっていたが。
「なんで? これから続きでもするのか」
彼女のことを思い出して?
「ば……」
ばかなことをいうな、とでも言いたかったのかもしれない。怒りと羞恥がない交ぜになったような、そんな顔で。ニックにとって、兄のそんな表情はひどく新鮮だった。
――もっと。
ふいに覚えた衝動。
――もっと、しりたい。見たい。
温かい感情をもたないかわりに、欲望に正直。それがニックの本性だ。
どうして心の声に逆らう必要がある?
別に、彼を傷つけようとしているわけじゃない。さっきまでアランが自分でしていたことを、代わりにしてやろうというだけ。
自分でするよりずっとよくしてやるのに、文句なんてないだろう?
両の手をアランの薄い肩に置き、そのまま押す。急な動きにそのままアランの背がベッドに沈んだ。
「ニック、何を――」
片手で肩を押さえたまま、もう一方の腕を下に伸ばす。兄の声に焦りが滲むが、ニックは構わずに続けた。
無造作に兄のスウェットの中に手を入れる。指先がそれを捉えた瞬間、ひ、とアランの喉から引き攣れたような音が漏れた。
「あ、っあ、だめだ……」
「どうして。気持ち良いんだろ?」
手の中に捕らえたものの反応で、それはわかる。
自分のもの以外に触れたのは初めてだったが、嫌悪感はなかった。探るように指を動かす。
「や、ああ、ニック、やめ」
アランの声に、隠し様のない艶が滲んだ。体をのけぞらせ、喉が無防備にさらされる。
「ほら、な」
あ、あ、という切れ切れの悲鳴。
女の嬌声とは違うのに、耳に快く響く。
自分が兄にこんな声を出させたのだということに、強い満足感を覚える。
眉間に刻まれた皺。声を漏らさないようにと堪えているのか、唇が小刻みに震えている。
ぎゅっと閉じた目尻に、涙が溜まっていた。それを舌で舐めとると、兄がひくりと喉を鳴らした。
甘い、と思うのは何故だろう。人間の涙は塩分を含んでいるはずなのに。
熱を帯びた体を煽るように、アランの喉を唇で辿りながら、彼のものに触れている指で強く刺激を与える。
「あ、あああ、も、ダメ、だッ……は、なせっ……頼む、からっ」
兄に懇願されると、どうしても従いたくなる。
けれど、今は。
それ以上に、自らの奥底から突き上げてくる欲望に逆らえなかった。
「ニッ…ク、やめ、……も、う」
「いいから、出せば」
「よ、よく、な……ああっ」
鎖骨のくぼみを舌で探る。たまらないとばかりにアランが身を捩った。
「いい加減あきらめろよ」
「や、だって、ニック、こん、な……んうっ」
自分のちょっとした動きで、兄が過剰なまでに反応する。
それが楽しくてたまらない。
「ほら――。出しちまえって」
きゅ、と指先で敏感なところを強く触れる。煽る。
「ん、んんッ……」
アランは強く唇を噛むと、一際大きく身を震わせた。
手の中の感触で、彼が達したことを知る。
「ふ……うっ」
吐息とともに、兄の体が弛緩した。それを見届けて、そっとアランからはなれる。
彼のものに触れていた手のひらには、あきらかな快感の証拠があった。ニックの手によって、兄に吐き出させたもの。
「ほら、よかっただろ」
つ、と舌で白いものを舐める。
「お、まえ……」
顔を上気させて、アランが身を起こそうとする。けれど力が入らないのか、がくりと腕が折れて、またベッドに沈んでしまった。
アランはそのまま、ふて腐れたようにニックから顔を背けた。
いや。それは、どうしていいのかわからない、という顔だった。どんな目で、弟を見ていいのかわからない。そんな。
「アラン?」
兄は答えない。
彼がこちらを見ようともしないことに、ふいに不安を覚える。
もしかして。自分は、ものすごく大きな間違いを犯してしまったんだろうか。
この兄に、二度と受け入れてもらえないような。
「なあ。手伝ってやったんだろ」
「……そんな必要、なかった」
少し掠れた声だったが、答えが返ってきたことに少しだけ安堵した。
耳にしていると、もう一度手を伸ばしたくなるような。
そんな声だったけれど。これ以上兄を困らせたくはなかったので、我慢する。
「仕方ないだろ。おれが、そうしたかったんだ」
「なんで、そんな」
兄の問いに、ニックは考えた。
答えを探そうとしたのだ。けれど、どうしてもうまい言い方が見つからない。
言葉というのは難しい。結局ニックは諦めるしかなかった。
「……さあ」
わかるのは、ただ。
そうしたかった、というだけで。
「けど、さ」
ニックはベッドの端に放りだしたままだった雑誌を手にとると、無造作に兄の方へ投げた。ばさりとグラビアページが開く。
あの女に似た『彼女』が、ニックに向かって微笑みかけた。
「コイツを使うよりは、ずっと気持ちよかっただろ?」
かあっと朱に染まった兄の顔が、問いを肯定する。
ニックは、それを満足げに見下ろした。
思い出せばいい、と思う。
彼が、またそうしたくなったら。
あの女の顔よりも、おれの手の熱を。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
改行数間違えてました…orz
- 探していたレキシコンの二次が読めて -- 2009-09-03 (木) 16:19:06
- 間違えて送信してしまった…とにかく作者さんGJ! とても面白かったです -- 2009-09-03 (木) 16:20:05
- 今から原作買って来ます! -- 2009-12-18 (金) 21:14:29
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