芸人 しずる コント 天然さわやか教師×ツンデレ不良生徒
更新日: 2011-01-12 (水) 00:30:30
先日の赤劇場の市ず流コントから
天然さわやか教師×ツンデレ不良生徒 純愛(?)もの
注:中の人は男同士ですが、キャラ設定は男女なので
苦手な方はスルーしてください
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
彼女は学校の屋上で腕組みし、遠くをにらみつけながらいらいらと足をゆすっていた。眉間には不機嫌そうなしわが刻まれている。雲にかすんだ夕暮れが茶髪に反射してきらめき、セーラー服のタイが風に揺れていた。
タバコを取り出そうとカバンを探り、思わず舌打ちした。
(そういやこの前、邑上に渡しちまったんだったっけ)
彼女が待っている相手は────生徒指導かつ彼女の担任教師である、邑上。
生徒の話に耳を傾ける真剣さ、熱っぽい授業、おまけに男前と三拍子そろえば
人気者にならない訳はない。男子からも女子からも、邑上は絶大な支持を受けていた。
そして、彼女もまた────。
はじめは、うっとおしいおせっかいヤローだと思っていた。あまりのしつこさに
殴ってやろうと思ったことも一度や二度じゃない。
殴らなかったのは、顔がけっこう好みだったから、あのハンサムな顔に傷をつける
のはおしいと思ったから、それだけだ。
それでも、無視されても罵倒されても自分を見捨てようとはしない邑上の態度に、
彼女は変わっていった。
一部の不良仲間をのぞいて、生徒はもちろん教師陣にまで遠巻きにされる彼女に、
真摯に向き合おうとするのは邑上だけだった。自分が何か問題を起こすたび、悲しげな
顔で懇々と諭す邑上を見て、彼女はひそかに喜びを覚えた。邑上が自分にかまって
くれるのが、嬉しかったのだ。
実際、邑上は他の生徒の誰よりも彼女に目をかけた。それは自分がたびたび問題を
起こす不良だからなのだとわかっていても、彼女はときどき、邑上にとって自分は
特別なのだという錯覚に陥った───
「ごめん、遅れて!」
「おせえんだよぉ!!!!!」
駆け足で登場した待ち合わせの相手に、清美は大音量の罵声を浴びせた。
「オマエ、どんだけ遅れてんだよ!?教師が時間守らねえって、どういうことだよ!?」
「すまん、急に大事な電話が入っちゃったんだ。ゴメンな」
すまなそうにそう言ってから、邑上はトレードマークのさわやかな笑顔でにっこり
笑った。
「まあ、いいよ……許してやるよ」
「ありがとう」
そのまま黙り込んだ清美を気遣うように、邑上があたりさわりのない話題を持ち出す。
「そういえば、合唱コンクール、ありがとな。出てくれて」
「はあ?別に、てめえのために出たわけじゃねえし!?」
「そうだったな。でも、先生は、清美の歌声が聞けて、うれしかったよ」
「あ?!………ああ、そ、そうかよ」
(なんなんだよ、やめろよ!ときめいちまうだろ)
「清美はやっぱり、歌が上手いな」
「別にオマエにほめられても、うれしくねえよ」
「そうか、ま、とにかく、ありがとう」
無邪気に微笑む邑上の顔を見ていられなくて、清美は思わずうつむく。
「ところで、なんなんだ?話って」
邑上は何気ない口調で切り出したが、彼女の肩がぴくりと大きく動いた。
「その前に、一つ、聞きてえんだけど」
「ん?」
「オマエ、アタシのことどう思ってんだ?」
清美は髪をいじりながら、ぶっきらぼうに尋ねた。
「好きだよ」
あっさりと答えた邑上の言葉に、心拍数が一気にあがる。
「清美は、少し乱暴なところもあるけど、やさしいし、ひたむきだし、いつも一生懸命で
……おれの、大事な生徒だよ」
ほめられている。なのに、清美の心は暗くなった。
生徒。
「そうだよな…」
「ん?」
「けっきょくよお、テメーにとって、アタシは、生徒でしかねえんだろ」
「きよみ?」
「可愛いとか綺麗だとか、さんざん言っといて、その気もないのに気ィ持たせるんじゃ
ねえよ!」
怒鳴りながら、コンクリートの地面にバッグを力任せに叩きつける。邑上の驚いた顔が、
視界の隅に映っていた。
「ど、どうしたんだ、突然」
「アタシ、帰るからな」
「ま、待てって」
急に腕をつかまれた。大きな手。その瞬間、カッと正体不明の怒りが湧き上がる。
「触んじゃねえよ!」
撃たれたように邑上は手を離した。
顔は見ていないが、邑上がどんな顔をしているか容易に想像できた。
邑上が悪いわけじゃない。それぐらい、わかっている。一人で勝手に舞い上がって、
勘違いしたのはこっち。
(あーあ、バカみてー)
早く、帰ろう。立ち去ろう。そう自分に言い聞かせても、足が動かなかった。
「きよみ……ゴメンな」
「なんだよ、なんで……謝るんだよ」
「先生が、悪かった」
静かにたたずむ二人の影が、夕焼けに長く伸びる。
「清美も、女の子だもんな。好きでもない男の人に、軽々しく可愛いとか、言われたく
ないよな」
「そんなこと、誰も言ってねえだろぉ!オメー、バカか?!」
ずれまくりの邑上の論点に、うつむいたまま怒鳴る。
「じゃあ、どうしてそんなに怒ってるんだ?」
「だから………もぉ、わかれよ!なんで気づかねえんだよ、好きだって、言ってるだろ!」
「………え?」
はっ、とした。
つい怒りにまかせて、本心を吐き出してしまった。そんなつもりはなかったのに。
邑上は押し黙ったまま、何も答えない。
お互いに沈黙が続いた。
コンクリートの無機質な模様を見ているうちに、熱いものがこみあげて視界がゆがんだ。
(泣くなよ、活け田清美ともあろうものがよ)
自分みたいなやつが泣いたって、絵にならない。女にしてはガタイもいいし、背も
邑上より高いのだ。泣いて絵になるのは、小さくて可愛い女の子だけ。
「帰る」
それだけやっと言い捨てると、彼女は先ほどたたきつけたカバンを拾い上げた。
消えてしまいたかった。
入り口が開いているのを気づかず拾った拍子に、カバンからマスカラがころころと
落ちる。
「あ……」
邑上が黙ってその黒い小瓶を拾い上げる。受け取ろうと手を伸ばしたら、なぜだか
避けられた。
「返せよ」
「清美」
「返せよ!!」
「帰らないでくれ」
驚いて顔を上げると、いつになく真剣な顔の邑上と眼が合う。
「先生、言わなきゃいけないことが、あるんだ」
「聞きたくねえ」
「………なあ」
「聞きたくねえよ、やめろよ!こんな時に説教なんて、聞きたくねえよ。鈍いてめえ
だって、それぐらいわかるだろ!ほっといてくれよ」
「確かに、先生は鈍いけど」
突然、温かみを感じた。邑上の腕に抱きしめられている。息を呑んだ。
「ごめんな」
「なんで……あやま…」
「こういうこと、男の方から普通言うものだろ。なのに、女の子に言わせてコメンな」
「なんで……そんな」
わけがわからない。本当にわけがわからない。パニックだ。なぜ、邑上は自分を抱き
しめているのだろう。そして、なぜいつまでたっても離さないのだろう。
「なん…えっ??おま、じゃあ、オマエ、アタシと、付き合ってくれんの?」
「それはダメだ」
「ナンでだよ!!!!!!!」
思わず腕から離れて、力いっぱいツッコむ。
「今、そういうカンジじゃなかったのかよ?!なんでこの流れで断るんだよ!」
「清美はまだ、おれの生徒だから」
「え?」
「清美が卒業するその時になったら、ちゃんと告白しようと思ってたんだ」
がっしりと肩を掴まれ、のぞきこまれる。濁りない二つの目が、すぐ近くてまっすぐに
自分を見つめていた。
「もし……二年後、お前が卒業して、その時もまだ先生のこと好きでいてくれたら、
その時は、付き合って欲しい」
清美はわけもわからないまま邑上の視線を浴び、足元から這い登ってくる居心地の
悪さと戦っていた。
嘘だろ、コイツが、なんでこんなこと。
「なんで………アタシは気にしないっていってるだろ、教師と生徒でも」
もじもじとそうつぶやくと、邑上は答えた。
「わかってる。でも、先生はきちんとしたいんだ。清美のことがホントに大事だから」
「二年なんて……オマエだって、心変わりとか、するだろ」
「先生は絶対、心変わりなんてしない」
邑上の口調は一切の迷いがなかった。
大人の邑上には自信があるのかもしれない。だけれど、自分には迷いがあった。
二年なんて、長すぎる。
「無理だよ。そんなの」
「……………」
「なげえよ、長すぎるよ。そんな、二年も先のことなんて、わかんねえよ」
不安を吐き捨てると、邑上は一瞬悲しそうな顔をした。しかし、次の瞬間にはあの
さわやかな笑顔を浮かべて、それを覆い隠した。
「そっか、わかった。なら、しかたな……」
「だ、誰も待たねえなんて言ってねえだろ!」
「え、じゃあ?」
「わかったよ、待ってやるよ。待ちゃあいいんだろ!?バカ正直なやつだなあ、待って
やるよっ!」
「ありがとう!」
もう一度、抱きしめられた。それから、これ、返すよ、と言ってマスカラを渡された。
初めて触れた邑上の手は、少し汗ばんでいて、温かかった。
「じゃあ、最初は交換日記から始めようか」
「はあ?」
いや、交換日記って。ふつうメルアドとかじゃねえの?
その、あまりにも時代遅れな単語に清美は眼を丸くした。邑上はその様子にも気づかず、
ニコニコと幸せそうな笑顔でこちらの返事を待っている。
(うわ、コイツ、やっぱりちょっとずれてんな)
「バカじゃねえの?いまどき、交換日記してるヤツなんて、いるわけねえだろ」
「………え?イヤだったか?」
途端に慌てる邑上。それを、少し可愛いと思った。
「わかったよ、ノート、買ってきてやるよ!!!」
そう言って、照れ隠しに肩を殴ると、邑上は清美の大好きなあの笑顔を浮かべて笑って
くれた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
うん、ツンデレに萌えてしまったんだ
ツンデレは正義!!
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