ドラゴンボール トランクス×悟飯
更新日: 2011-01-12 (水) 00:30:21
今更なネタですが再燃したので投下。
飯があの世で…なゲームを元ネタに捏造。アニメSPと矛盾あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
良いことを教えてやろう。
不快に鼓膜を打つ笑い含みの声に、俺は声がした方向を睨みつけた――つもりだったが、
激痛と出血のせいで視線さえも自由ならず、虚ろに見上げることしか出来ない。
「今日俺が1人で来たのは、最初からこれが目的だったんだよ、孫悟飯」
そんなことは、もうとっくに分かっていた。
彼らが――特に、17号が、自分の抵抗を弄んで楽しんでいることくらい。
そのために多少の危険など無視してしまえる程に、彼らと自分との間には絶望的な実力差があることも。
「殺せ……」
各個撃破の好機も活かせなかった自分の無力に失望していた。もう、どうでも良かった。
俺の反応ににやりと笑って、17号は赤黒く濡れた左腕の裾を踏みつける。
獣の咆哮のような悲鳴。
「あいにく、自分がいない時に殺すなって18号に言われてるんでね。次は殺してやるよ」
その後の記憶はない。気がついた時には、消毒液と血の匂いに満ちたベッドの中にいた。
今にも消えそうな俺の気を心配したトランクスが、助けにきてくれたらしい――絶対に来てはいけないと、
言っておいたのに。
そして、1年後。俺は再び人造人間達に挑み、17号の予告通り殺された。
そこに立つのは、何度目だろう。
地下室の一室に置かれたカプセル、その中に悟飯さんは横たわっている。
2年経っても、細心の注意を払って冷凍保存されている身体は、肌の色と凍りついた体温を除けば、
生前と何も変わらないように見える。殺された時の惨状を思えば、綺麗すぎるほどだ。
――だから、決心がつかないと、きっと母は思っているだろう。
「……そうじゃないよ、母さん」
俺は1人呟く。
俺が悟飯さんの遺体を保存することに固執するのは、たったひとつの可能性に賭けたいからだ。
遠い宇宙のどこかに存在するはずの、たったひとつの可能性に。
タイムマシンが完成して過去に行くことができたなら、人造人間を倒して平和を取り戻せたなら。
――その可能性を確かめに行くつもりだった。
「……必ず、還ってきてもらいますよ、悟飯さん」
――それから、さらに8年。
悟飯は22歳のまま。トランクスは24歳になっていた。
「いいかげんに目を覚ませ!悟飯!」
ピッコロの魔貫光殺砲の直撃を受けた悟飯の身体が、光を失い雲の海に向って落ちるのを、
傍にいた悟空が抱きとめた。ふぅ、と息をついてから、悟空が上空のピッコロに抗議する。
「こんなとこで危ねぇだろ、ピッコロ。地獄に落ちたらどうすんだ」
「だったらお前が止めてやれ!」
ピッコロとて、やりたくてやってるわけではない。
人造人間に殺された後、天界にやってきた悟飯の魂は、いわゆる怨霊と化していた。
悟空やピッコロの言葉も届かない幻覚の世界で、人造人間と戦い続けている。
1人で人造人間の幻覚と戦っている分にはまだ良いが、先刻のように他人に襲いかかることが続けば、
閻魔が言う通り、完全に魂を消してしまうという選択を取らざるを得なくなるだろう。
その方が悟飯のためなのかもしれないが、正気を取り戻す可能性に、まだ2人は賭けていた。
「人造人間はとっくにトランクスが倒したんだぞ、悟飯」
無駄と知りつつ、気を失っている悟飯に向って悟空は、何度目かの言葉をかける。
と、その時だった。不意に、悟飯の姿が悟空の腕から消えた。
数瞬の沈黙の後。弾かれたように悟空がピッコロに飛び付いて叫ぶ。
「ピッコロ、お、おめえ、どうしてくれんだ!!もう絶対元に戻らないんだぞ!?」
「そんなはずは……あの程度の攻撃で……」
ピッコロは呆然と呟いた。確かに全力の魔貫光殺砲だったが、あの程度で「殺せる」はずがない。
きっと何か別の理由があるはずだ、と思考を巡らせて、ピッコロははっとする。
「ま、まさか閻魔の奴、勝手に!?」
ほとんど殴りこみの勢いで問い詰めた閻魔の回答は、悟空とピッコロの予想外のものだった。
「悟飯なら生き返ったようだ。トランクスとかいう奴が、ドラゴンボールで生き返らせたらしい」
温かい手が頬に触れるのを感じて、目を開けた。
ぼやけた視界の向こうから、聞き覚えのある声がする。
まるで、恐ろしい悪夢から目覚めた直後のよう。自分の身体と意識全てに、酷い違和感があった。
つい一瞬前まで、俺は確かに何かを見、何かを感じていたはずなのに、何ひとつ思い出せない。
――俺は、確か……。
「悟飯さん!悟飯さん!」
俺は瞬き、声の方向に目を凝らした。
「トランクス……?」
名前を呼んではみたが、頼りない呼びかけになってしまったのは、彼が俺の知る少年より随分と
年上に見えたからだ。逞しくて、キリリと硬質な顔立ちの青年が、俺の呼びかけに涙で顔を
ぐしゃぐしゃにして泣き出している。
「おかえりなさい。この日を、どんなに待ち焦がれていたか……」
そう涙声で言われて、俺はようやく何が起きたのか理解した。俺はやはり、あの時死んだのだ。
――そして本来なら、決して目覚めることのない筈の眠りから、目覚めた。
あの日と同じように消毒液の臭いがするが、眠っていたのは、きっと年単位の長い時間。
「……トランクス、無事で良かった」
自分が蘇ったことは、どうでもよかった。
その長い時間をトランクスが生き延びてくれていたことが、嬉しかった。
「最初は、10年も経ってたらダメだって言われたんです。でも、肉体も魂もちゃんと
現存しているんだからってポルンガに喰いついて……残り2つの願いを諦めるってことで、
了承してもらえたんです」
とんぼ帰りの宇宙船の中で、俺は、悟飯さんにこれまでの事情を説明した。
別の次元での人造人間との戦いのこと。この世界の人造人間を倒したこと。
別の次元の彼の父から、新しいナメック星の場所を教えてもらって、はるか宇宙まで旅に出たこと。
「俺も、ピッコロさんを生き還らせたくてナメック星に行ったけど……そこまでしてくれたって
聞くと、なんだか、申し訳ないな。それに――」
悟飯さんは苦笑して、なんでもない、と首を振った。
「……それより、だいぶ復興は進んでるんだろ?トランクスが人造人間を倒してくれたお陰で」
言いかけた言葉の先など予想がつく。だから、俺は言った。
「ええ。悟飯さんが学者を目指せる程度には」
「学者!?」
悟飯さんはひどく驚いたようだったが、すぐに素に戻って、
「……そんなこともあったなぁ」
なんて、妙に老成した口調になる。まるで、もう終わったことのように。
「まいったなぁ。ブルマさんか母さんに聞いたんだね。そんな子供の頃の話なんてもう――」
「どうでもいいんですか?」
俺はつい声を荒げた。
どうでもいいはずがない。別の次元で会った、幼い悟飯さんの笑顔が脳裏を掠める。
どんな憂いもない笑顔――あんな笑顔の悟飯さんを、俺は見たことが無い。
悟飯さんは俺をまじまじと見て、やがて、ごめん、と言った。
「ごめん……ありがとう」
悟飯さんは、1本だけの腕で、精一杯、俺を抱きしめる。
頼りない、縋るような抱擁になった。力強かった腕も、今となっては俺より細い。
こんな腕1本になっても戦いを選んだ悟飯さんに、今更ながら衝撃を受けた。
悟飯さんは、顔を伏せたまま言う。
「君の気持ちは嬉しいよ。……だけどまだ、人造人間が倒されたって実感がないんだ。
君を疑うわけじゃないんだけど、地球に戻ったら、まだあいつらがいる気がする。だから、
もう少しだけ、時間をくれないか」
俺は、自分を恥じた。俺だって、人造人間を倒した直後は、目標を失って自失に陥ったというのに。
今の悟飯さんに、夢だの希望だのを要求するのは、酷すぎる。
謝りたかったが、お互いに謝罪合戦になってしまいそうだったから、俺は言った。
「いくらでも待ちますから……幸せになってください。俺、そのために、悟飯さんに
生き還ってもらったんですから」
心から、生き還って良かったと思ってもらいたかった。
戦いのない人生を歩んでほしかった――それが本来の悟飯さんだって、気づいたから。
エロなくてすみません。序はエログロ控え目ですが、次回暗転します。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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