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最上義光×伊達政宗

戦国東北・叔父と甥。

大/河もBA/SA/RAも関係ない、ただの戦国萌。
エロもオチもありません。
悪者になりがちな叔父・義/光公が悪者ではありませんので、ご注意ください。

「叔父上にとっては、俺はまだ梵/天丸のままか?」

まだ歳若い甥は、酒に濡れた唇を拗ねたように尖らせる。
その子供じみた仕草が記憶にある幼い頃のままで、最/上義/光は思わず頬を緩めた。

長い睫に縁取られた切れ長の目。真っ直ぐな鼻筋と、ふっくらとした赤い唇。
甥・伊/達政/宗は、嫁いだ妹・お義に似ている。

その気性の激しさに鬼姫と呼ばれもしたが、それでもなお求婚の絶えなかった東国でも指折りの美姫、お義。
目に入れても痛くないほど愛おしかった妹姫が伊/達家に嫁いで、はや20年が経とうとしている。
そうして生まれた伊/達の嫡子が、今は伊/達藤次/郎政/宗と名乗り伊/達家の当主となった。

ここ数年は小康状態にあったとはいえ、最/上と伊/達の間に諍いの火種は絶えない。
今はこうして酒を酌み交わしても、実は知らぬだけで国境で小競り合いが起きている最中かもしれぬ。
明日にはそれが口実となり、合戦が始まっても不思議ではない、この乱世。

それでもなお、こうして人払いをして二人だけ、叔父と甥として向かい合っていることを、義/光は嬉しいと思った。

妹の子。
甥。
愛おしい、吾が同胞。

問いに答える代わりに手を伸ばし、まだ若い滑らかな頬と細い顎が作る輪郭を撫でる。
政/宗は不意に触れた手を嫌がる風もなく、 尖らせていた唇を笑みの形に変えた。

「政/宗。・・・伊/達政/宗、殿」

伊/達の当主の名で呼びかけると、一瞬眸が見開かれ、燭の明かりを受けて煌めいた。
笑みを深めた唇が花のように綻び、白い歯が零れる。

ああ、この甥は、笑い方さえ妹に似ている。

「最/上、義/光殿」

応え呼ぶ名とは裏腹に、幼く甘えつく声音。
触れたままの義/光の手へ、もっと撫でて欲しいとでも言いたげに政/宗は頬を摺り寄せた。

「叔父上の手は、温いな」

蒼褪めたように白い左の瞼が、ゆるりと閉じる。
いつの間にか杯を台に戻した政/宗の指が、義/光の手の甲にそっと添えられた。

重なりあう肌から、体温が交じり合う。
その肌を酔いに薄紅く上気させながら、触れる頬も指先も、政/宗の肌は冷え切っていた。
まるで血が通わぬようだ、と思い。
そう感じたことの不吉さに義/光は肌を粟立てた。

奥州の秋は短い。
陽射しが夏の夏の名残を匂わせても、夜の月は訪なうたびに季節を押し遣る。
日中の暖かさに体が緩んだ分、今宵は特に冷え込んでいるように感じられた。
纏う肉の薄い甥には、この冷え込みが堪えているのかも知れぬと、いまさらのように気付く。

「寒いか。いま、火鉢を持たせ・・・」

重ねられていた手が、骨の鳴るほど握り込まれる。

「、まさ・・・む、、、」
骨と骨が擦り合わされる痛みに、思わず腕を引き戻す。
引きずられ、バランスを崩した細い身体は、板敷きの床に受身も取らず倒れた。

肉を打つ、鈍い音。

「政/宗!」

まだ若い伊/達の当主は、冷たい床にうつ伏せたまま動かない。
その細い肩が、何かに耐えるように震えていた。

それでも放されぬ手。
握られた手の痛みを、関節の白く浮くほどに握り縋る指を、義/光は痛ましいという気持ちで眺めた。
伊/達の当主は、吾が甥は、吾が家督を継いだ歳よりずっと幼く、その重責を負い込んだのだ。

握られた手を預けたまま躙り寄ると、伏せた細い身体を片の膂力だけで抱き上げる。
横抱きに膝に座らせ、胸に抱き込んだ。

「どうした、梵/天丸」

強張り、怯えたように丸まろうとする身体を、そのまま腕に包んだ。
政宗が身に纏う青い衣は冷え切って、氷を抱くように思われたが、その下の身体は浅く粗い息を吐き、布を通して胸に触れるその吐気は温かい。

「梵は、ほんに愛いの」

艶やかな黒髪に頬擦りし、己の腕の中から覗く滑らかな額に口付ける。

「愛い子じゃ」

膝の上の身体を、幼子をあやすように揺らした。

「のう、梵/天丸」

布越しに交じり合う体温。
強張る身体は緩々と解け、伝わる震えが穏やかな鼓動になり、血の通わぬようだと感じた身体は、腕の中では温かかった。

「愛い子じゃ、梵/天丸」

「梵じゃねぇ」

握られていた手が急に放され、血が巡って熱を持つ。
政/宗の両腕が義/光の首に廻され、声の吐息が首筋に触れた。

「梵/天丸じゃねぇ。政/宗だ」

呟くような、小さな声。

「俺は、伊/達、政/宗だ・・・」

肩に凭れる頭を、ようやく開放された手で抱き、白いこめかみに口付ける。
強張りの解けて柔らかな甥の身体を、腕の中で柔らかく揺らした。

「どちらでも構わぬ」

弾かれたように、政/宗が顔を上げる。
いまや身体を蝕んだ病魔の影など窺えぬ、美貌を謳われた生母によく似た・・・その兄にも似通う貌。

「そなたは義と輝/宗殿の子、ワシの甥じゃ」

乱れて額に落ちかかった前髪を払ってやりながら、義/光は笑んだ。

「何と名乗ろうと、そなたはそなたではないか」

弾かれたように、政/宗が顔を上げる。
いまや身体を蝕んだ病魔の影など窺えぬ、美貌を謳われた生母によく似た・・・その兄にも似通う貌。

「そなたは義と輝/宗殿の子、ワシの甥じゃ」

乱れて額に落ちかかった前髪を払ってやりながら、義/光は笑んだ。

「何と名乗ろうと、そなたはそなたではないか」

左目が、数度、瞬く。

紅く柔らかな唇を白い歯が噛み、震える睫毛が色の薄い眸に陰を落とした。
朱を刷いたような眦に涙が溜まったように見えたが、零れ落ちる前に政/宗の顔は義/光の胸に伏せられた。

「叔父上、叔父上!」

布に押しつぶされ潜もりながら、悲鳴のように縋りつく声。

「どうか。どうか・・・」

乞いながら応えを拒むように、何を乞いるのか告げないのは、若き頭首の意地か。応えの確約など虚しい乱世の無情を思う故か。

国境を争う国の主となった、まだ歳若い甥を腕に抱きながら。
今はただ、血の繋がる二人きりだと、最/上義/光は境目さえ分からなくなる鼓動を、呼吸を、体温を感じていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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