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GIANT KILLING 平賀×志村

630
トン 萌えシチュだな

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  なんかシャワーどっか行きますた
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  初めてなんでズレたら木綿
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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水音だと気付くのは、もちろんかなり早かった。
そんなものはクラブハウスで毎日聞いている。
シャワーだ。
ただ、この部屋で聞こえ始めるというのが問題だった。
「何やってんだよ」
(馬鹿シム……考えろよ。人んちだぞ)
フライパンの柄を握り締めながら考えたけど、なんかもう、そう言うんじゃない気がする。
思えば、自分の不用意さに涙がちょちょ切れそうだ。
(くそ)
(どうすんだよ)
(もやしと茄子の豚キムチ炒め)
(じゃなかった……この俺の動揺……)
この際、もやしはどうでもいい。
勿体ないが、豚コマも諦めよう。でもキムチは小室が勧めてくれた良いやつだ。高かった。
(こんな事なら)
(ガンガンマートで特売になってたハウちゃんカレーでも食わせときゃ良かった)
シムがシャワーを浴びている。
その意味の重大さを考えれば、ホイホイと調子に乗ってキッチンに立ってしまった自分を
責めない訳にはいかない。
なぜって。
俺が、一度あいつにフラれてるからだ。

シムは覚えてないかも知れない。
何せ酒の席だった。
酔いが回って、外れなくていい頭のネジが何十本て同時に跳ね飛んだんだろう。
あと、若かった。
そういうのもあるかも知れない。そういう事にしておきたい。
酔った勢いでくだを巻き、巻いた挙句にホラ貝よろしくぶん回してご機嫌で、シムが
あんまり気持ち良さそうに俺の選んだ日本酒の銘柄を褒めるもんだから……調子に乗った。

――実は俺、ちょっと前からお前のこと好きなんだけど

砲台があったら自分を300人くらい詰めてアリゾナ辺りに向かって射出したい。
「え?」くらいは引き出せるかと思ったのに、シムの返事ときたらミドルレンジのスーパーボレー。

――俺は、会った瞬間からお前って髪型モッサリだなって思ってる

爽やかな笑顔で差し出された言葉は、俺の貧弱なハートと一緒にバックスタンドに
突き刺さった。
いいんだ……
あいつは酔ってた。そりゃあもうこれ以上ないんじゃないかってくらいご機嫌に酔いまくってた。
俺はそれに流された。
で、つい言っちまったんだ。それだけの事だ。何が悪い。
くそ。
ハラショーだ。

ところで、「ちょっと前から」なんてとんでもない。
もうかなりずっと黙ってた。
それこそあいつが「10番」を背負うようになってから、ずっと。
だから、自分でも軽く振ったつもりだった。
失敗したって笑い話に挿げ替えて上手くかわせると思った。
それなのに。
結果、俺が痛感したのは
「保険を掛けた花束なんて差し出すもんじゃない」
って事実だった。
その日はいい加減にぐったりして店を出る羽目になった。
帰り道なんて本当に悲惨で、とりあえず朝起きた時アスファルトに転がってなかったから
どうにか家には帰ったんだろうってくらいの感覚がある程度で、もう本当に全く記憶がない。
次の試合から、俺は髪を結ぶようになった。
我ながら自分の神経の弱さにはクラッカーを鳴らしてやりたい気分だ。
でも、切るのはなんとなくシャクだった。
だってシムは全然、居酒屋でのやり取りを覚えてなかったから。
むしろ、あいつに自分を認めさせてやるまで絶対髪型なんて変えるもんかと思った。
切るのは――そう――なんだ、こら……いい表現が思いつかない。
とにかくあれだ。そう、あいつに豆鉄砲食らったハトみてーな顔させてからだ。
「……」
だけど。
俺が身に着けようと思ったのは、ヘロヘロした輪ゴムだけなんかじゃない。
ダルファーっていう超攻撃的な監督を迎え入れ、4トップが採用された時、俺は目標を立てた。

――キャプテンマークを巻いてやる

唐突な思いつきだったけど、実際「信念を持って立てた誓い」だったと言っていい。
FWを4枚。
必然的に中盤は薄くなる。
そうしたら、MFに必要とされるのは一体どういう人物か。
(ハードワーカーが絶対に必要になる)
俺は、そう思った。
技術じゃない、閃きよりもセンスよりももっと現実的でシビアなもの、それが中盤に求められると
直感的に思った。
そして――「それ」なら、俺にできると思った。
10番は、シム。
そんなのは分かってる。
ガンナーズの指揮者はあいつだ。花はあいつが抱えてればいい。
でも、「穴」を埋めるのは俺だ。俺じゃなきゃいけない。
そう思って、がむしゃらにやったんだ。
キャプテンになるか体が糸コンニャクになるのが先かってくらい必死に泥まみれになって走って、
ほんと……走って走って走りまくった。
「……バカだよな」
(そしたら)
(いつの間にか)
(俺は本当にキャプテンマークを渡された)
「……」
ぼんやり考える。
(シムとの連携も自然に増えた)
(あいつのプレーから)
(俺に対する信頼を感じるようになった)
(……幸せだって思った)
変な感じだ。
脳内で鳴り響いていたサイレンが、霧のように広がってくみたいな。
水音が聞こえる。静かだ。
それなのに、心臓だけがバケツをガンガン叩いてるみたいにうるさい。

どうしろって言うのか。
今更だ。
(くそ……さっぱり分からん)
(何で急に)
(忘れてんじゃなかったのか)
(俺をからかってんのか)
(それとも本当に何も考えてないのか……いやそれが一番有り得るけど……)
チームの誰だってこの部屋には上げた事がないのに、訳の分からない呪文みたいに猫の名前を
ブツブツ言いながら上がってきたあいつを止めなかった。
いや、止められなかった。

それは、そういう事だ。

俺は、「あいつの特別」になってやると思ってサッカーを頑張った訳じゃない。
そんなのは違う。
でも、認めさせたいと思ったのは確かだ。
シムの中であの時の俺は、たとえば髪型くらいにしか注目する所がなかった選手だったって事だろう。
それが、キャプテンになって。
ひょんなところから話が合う、なんて事になって。
なんかウマイ感じに話が進んじゃったりなんかして。
「……それがこのザマだ」
深く入り込み過ぎるんじゃなかった。
いつの間にかシャワーの音が止んでいる。
(こんなのは、もうたくさんだ)
途端に状況を見誤って、足元から空がひっくり返る。
こんな――
俺が今抱えてる、バカみたいな、本当にどうしようもない、笑っちまうくらい陳腐で寒気がするくらい
青臭い感情。

(期待、ってやつだ)

本当にこの感情だけは、手に負えない。

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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 失礼シマシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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