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駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅 後編+番外編 「立川駅のホンネ」

連続での投稿失礼します。

118-128 及び >>199-204 の続きです。
前々回に引き続き暖かいご感想ありがとうございました。
ここの姐さん方のコメントで自分の中でも色々と話が広がってとても楽しかったです。

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                     |  駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅 後編
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 予想外に支持を頂いた彼の番外編つけてみました。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) よろしくお付き合いください。
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目の前に現れた昭島駅は俺が来たことに目を丸くしてる。
会いたかったはずなのにいざ対面してみると何故だかまともに顔が見られなくてつい顔をそらしてしまった。
ここ最近見ないようにしていた所為かも。
「拝島駅、どしたの?」
「え…あ、いや、別に覗いたとかじゃなくて…。」
実際は覗いてたわけで、上手い弁明が浮かばなくて焦っていると、は?と首を傾げられた。
どうやら、こっそり見ていた事は気づかれてないらしい。
「あ、何でもない。うん、なんだ、その、…元気にしてっかなと思って。」
やべぇ、不自然すぎる。正直何て言うか全く考えてなかった。
少なくとも謝ろうと思って、できれば前みたいな感じに戻れれば良いと思った。
俺の返事はやっぱりおかしかったみたいで、昭島駅がさらに怪訝な顔をする。
流石にここ最近自分からは全く昭島駅を訪ねてなかったから当然と言や当然だった。

「まあ、立ち話もなんだし座ろうぜ!な。」
時間稼ぎの意図もあって昭島駅が定位置にしてるベンチの横に座って、昭島駅を手招きした。
「…」
さあ、どうやって切り出そ。頭の中を引っ掻き回して言葉を捜してたら、
昭島駅に先手を打たれてしまった。
「何かあった?困ったことがあるなら僕でよければ聞くけど…。」
自分だって大変なくせに他駅の心配してる場合かよ。と、言いそうになるのをかろうじて飲み込んだ。
「俺じゃなくて、…最近お前色々しんどいだろ?」
結局直球。隣に座った昭島駅が驚いてこちらを向いたのが分かったけど、
やっぱ視線を合わせづらくて俺はずっと正面を向いてた。

「…立川駅から聞いたの?」
「えっ、別に。」
「じゃあ西立川駅だ。」
「うっ…俺が自力で気付いたとはおもわねーの?」
「思わない。」
「…。」
流石良く分かってらっしゃる。けど何か普通に話せてるしこの流れならなんとか謝れる気が…
「そっか。でも気にしないで。僕拝島駅には言う気なかったし。」
…は?俺は思わず昭島駅を見たけど、今度はやつがうつむいてるので顔が良く見えない。
「困ったら他の線の駅達もいるし、もうしばらくすれば耐性がつくって立川駅も言ってたから、
拝島駅を煩わせるほどのことはないよ。そろそろ戻れば?そこにいられても邪魔なんだけど。」

「なっ!…っ。」
いきなりの言い草につい怒鳴りそうになって、慌てて我慢した。
落ち着け俺。感情的になるな。冷静に考えろ。また見落とすぞ。
そもそも昭島駅が考えなしにこんなこというわけがない。きっとあんだ。何かサインが。
一呼吸してよく昭島駅の方に向き直る。昭島駅はベンチに座ったまま向こうを向いて黙っている。
「昭島…?」
返事はない。
「本気でそう思ってんなら目ぇ見て言えば?」
「…。」
沈黙を取繕うように先程ホームに滑り込んだ下り電車が発車のベルを合図に俺の駅へと旅立っていった。
「…あーもう、だからお前の嘘はすぐバレんだよ。」
「ぅるさっ、…だから嫌だったんだよ。自分の状態知ったら拝島駅が断れなくなるじゃんか!」
話が見えない。 何故そこで俺?

「僕嫌なやつなんだ。嫌われてるのわかってるのに、自分が会いたいから拝島駅んとこ行ってんだ。
嫌がってんの、分かってるのに。
だからせめてしつこくならないようにしてたけど僕のこと知ったら君断れないだろ?
現に今来たじゃん。義理だって分かってるのに舞い上がりそうで自分もう嫌だ。」
昭島駅は一気にまくし立てるとベンチの上で膝を抱えて頭をうずめてしまった。
今度は俺が目を丸くする番だった。何かすげー事を聞いた気がするけど、それに答える上手い言葉が出てこない。

「あんさ、俺の態度も悪かったけど、別に嫌いだったわけじゃ…。」
「…気ぃ、使わない、でよ。」
「本当だって。こっち向いて俺の顔を見てから判断しろよ。」
半ば無理くり昭島駅の両腕を掴んでこっちを向かせた。
久々にまともに見た昭島駅の顔は歪んでるし濡れたまつげがいびつな束になってるし酷い有様だった。
「何泣いてんだよ。」
「泣いてない。」
「泣いてんじゃん。」
「これは…地下水だし。」
「ぷっ!何それ?」
俺が噴出した隙に手を解いた昭島駅は急いで顔をぬぐった。
失態を見られて不本意なのか憮然としたまま未だ笑う俺を向いてる。
改めて見るとその顔は以前よりやつれてた。記憶の中の昭島駅より顔色も悪いし輪郭も鋭い。

これ程の変化に気付かない位俺は昭島駅と向き合っていなかったんだと改めて痛感した。
昭島駅の外見の変化にばかり気を取られて、反発していたのを思い出した。
気付くべきは見てくれじゃなくて中身の変化だったのに。
「ごめん昭島駅…俺ほんとガキだ。ホントごめん。ごめんな。今まで冷たくして悪かった。」
情けないやら申し訳ないやらで馬鹿みたいにごめんを繰り返した。
「えっ?な、何で拝島駅が謝るの?」
「俺、自分のことしか考えてなくて全然周りが見えてなかった。
昭島駅がどんどん大きくなるから焦ってたんだ。取り残されそうで。
嫌いになったわけじゃねーんだ。本当に。信じてくれよ。頼む。」
どうしたらこれまでの事を穴埋めできるのか分からなかったけど、必死だった。
俺の様子に昭島駅は小さく頷いて、それでもまだ念を押すように聞く。

「僕が嫌になったんじゃないんだよね?」
「ああ。」
「面倒臭くなったんじゃないんだよね?」
「お前が七面倒くさいのは今に始まったことじゃないだろ。」
「う、うるさい。…また一緒にいても良いんだよね?」
最後の質問にしっかりと頷く。
「そっか…。よかったぁ…。」
ようやく納得した昭島駅が思いっきり笑ったのでつられて俺も笑った。
二人でまた心から笑えてるって、たったそれだけのことがすっげえ嬉しい。
まだまだ俺はガキだけど、気付かないことが沢山あるかもしれないけど、
これからもずっとこいつとこうしていられるために精一杯頑張ろうと思えた。

「じゃあ俺、そろそろ帰るわ。」
それからしばらく久々に色々話して、時間も遅くなってきたので俺は自分の持ち場に戻ることにした。
流石にこれ以上ほっとくわけにはいかない。ベンチから立ち上がって昭島駅に挨拶しようとしたときだった。
突然昭島駅が立ち上がって俺の正面に立った。驚きと焦りが混じった顔をしてる。
「な、な、な、なんか拝島駅背ぇ伸びてない!?」
「は?そんなことないと思うけど…。」

俺の記憶が正しければ、今の俺と昭島駅の背丈は同じくらいのはずだ。
「絶対伸びてるって!ほら!」
昭島駅は俺を掴んでエレベーターの前まで引っ張って行く。
二階へと伸びるそのガラス張りの外壁に写った俺の身長は、確かに隣に並んだ昭島駅より少し大きかった。
「やっぱり…。なんか顔も前見たときより老けてるし。確実に2歳は行ってる。」
身長を確認した後は俺の肩を掴んでまじまじと顔を覗き込んでくる。眉間の皺がガチだ。
「老ける言うなよ。別に良いじゃんそんなん。」
「良くない!あー、今度こそ追い越せると思ってたのに!」
聞けば昭島駅はずいぶん前からひそかに「俺越え」を狙ってたらしい。

昭島駅との身長や年―といっても表面上のものだけど―の差なんて気にしたことがなかった。
そりゃやつが出来たばかりの頃は俺のが全然上だったけど、ここ数十年はほぼ一緒だと思ってたし。
きょとんとする俺とは反対に昭島駅はすごく悔しそうだ。まあ、気持ちは良く分かる。
要するにこいつもガキなんだなと妙に安心した。
「なんで拝島駅ばっかりいつも先行っちゃうんだろ…。」
「ん?んー、そーだなぁ。」
言われてみれば今回の事で俺は少なからず変わった気がする。
それが外見に現れたんだとしたら…

「愛、かなー。」

しばらくその発言の意味を考えていた昭島駅が急に真っ赤になったのを見届けてから、
「じゃあまた明日な。」
とその場を後にした。

―おわり―

~番外編~ 『立川駅のホンネ』

数週間ぶりの晴天の休日のおかげでロータリーを縦横無尽に行き交う人をガラス越しにベッカーズの中で眺めながら、
立川駅は手にしたコーヒーの最後の一口を飲み干した。
「遅い。」
そう呟いてカップを戻す。ラッシュと人身事故の時さえ耐えれば平穏な平日と違って、
休日の人出はひっきりなしにじわじわと体力を奪うので休まる暇があまりない。
かといって彼等によって自分が生かされているのだから文句を言う筋合いもなかった。
駅はただ受け入れるのみである。
戯れに周囲の路線の様子を気配だけで探ってみれば、まあどこもそれなりに忙しいようだった。
昭島駅も中神駅や東中神駅のおかげでなんとかやっているみたいだ。
腰が重くなって昔ほど気軽に出歩けなくなった分、こういう能力は大分鍛えられた。
―それってテクニックのわりに体力がないってことじゃ~ん。―
そんな立川駅を、昔ある駅はそう下品に例えて笑った。
そのある駅は、現在未だ拝島駅と一緒にいる。
「チッ、早く来いよ。」

そう言うや否や目の前に見飽きたヘラヘラ顔が現れた。
「チョリーッス。たっちゃん元気~?」
「遅い。変な挨拶するな。その呼び方止めろ。」
不機嫌そうに吐き捨てると同時に自分の受けている負担をごっそりと現れた西立川駅に押し付ける。
「わっ!ちょっ!そりゃないんじゃないの!?君のでしょ!?」
いきなりの無茶振りに彼はよろめきながらもなんとか持ちこたえた。
「いいからちょっと持ってろ。」
立ち上がって楽になった体を伸ばし、深呼吸をしたあと、
「いいぞ、ほら。」
といって自分が押し付けたものをまた引き受けるため手を差し出した。

もとよりずっと押し付けている気はかった。自分がテクだけ男ならば、
目の前の駅は一発屋である事を立川駅は良く知っていた。
それにこいつの所だって今日は既に相当人が来ているはずだ。
体に馴染んだ感覚が立川駅の元に再び戻って来たが、それは預ける前に比べて少し軽くなっていた。
その変化に気付いて西立川駅を一瞥するも、やつは何事も無いように、
あーキツかったと笑いながらカウンターへ行ってしまう。
こいつはいつもそうなのだ。のんきな顔して何も言わずに来て、何も言わずに勝手に引き受けていく。
だから今日も立川駅は肝心な事を言いそびれてしまった。

以前は確かに急な自分の変化と人の増加に慣れないで苦戦していた。
それを周囲に悟られたくなくて隠していたのも事実である。
そんな中何故か唯一気付いた西立川駅に、不本意ながら何度か助けられてきた。
頼んだ事はなかったが、気付いて以来西立川駅は様子見にちょくちょく意識を飛ばして来て、
大変な時だけ飄々と現れるのだった。
しかし、実を言うと今の立川駅は西立川駅が思うほど「テクだけ」ではなかった。
今日くらいの人出なら、十分一人でやっていけるほどの体力はもうあるのだ。
問題は、西立川駅が自分の「大変な時にだけ」しか来ないことだった。
様子を探りに来ても立川駅が普通にしていればそのまま戻ってしまう。
その結果が現状だった。

つまり、西立川駅が様子を探りに来るタイミングを見計らって、
「わざと」キャパオーバーを装うようになって今に至っている。
最初はほんの出来心だったが、つい2度、3度とやるうちに打ち明けるタイミングを完全に逃していた。
我ながら子供っぽい事をしているのは立川駅自身わかっていて、言わなくてはと思うのだが、
その度に先ほどのごとく言えずに終わるのだった。
はぁ、と小さくため息をついていると西立川駅がトレーの上にハンバーガーと2人分のコーヒーを乗せて戻ってきた。
向かいに座ってコーヒーの片方を立川駅に渡すと自分はバーガーを嬉しそうにもりもり食べ始める。
「なあ、…。」
「ん?」
「いや、…やっぱ何でもない。」
駄目だ。何もなくても会いに来いなんて今更言えるか。
代わりに呷ったコーヒーは苦味を残して言葉と一緒に喉を過ぎていった。

―終わり―

他地域の方も読んでくださってるので最後に一つだけ補足させていただきますと、
昭島市は水道水が100%地下水なんだそうです。
最初から最後までローカルなネタ、ご容赦ください。
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ここまでお付き合い本当にありがとうございました。。
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