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駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅 中編

前回は暖かいコメント本当にありがとうございました。
皆さんのおかげで続きを投下する勇気が出ました。

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                     |  駅擬人化 青梅線 拝島駅×昭島駅。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  前回の続きです。
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西立川駅が去った後、そのまま不貞寝を続ける気にもならなかった俺は自分の駅に戻った。
帰り際にどうしても気になって昭島駅に寄ってみたけど、
奴が近くにいる気配はしてもどこにいるかまではやっぱりわからなかった。

戻ってきてからも何かもやもやといろんな考えがまとわり付いて離れない。
ホームのベンチに座り込んでぼんやりと何本もの電車を見送った。
もし本当に昭島駅が今色々大変なんだとしたら助けてやりたい。
今日だって立川駅が大変だったなら昭島駅にも相当人が来ただろう。
そうじゃなくてもそもそも酷い態度を取ってきた。謝りたい。
一方でもっともっと自分や自分の周辺が発展して欲しい気持ちも否定できない。
当たり前だ。俺は駅なんだから。より人間に求められる存在になりたい。
そういう自分が欲しくても手に入らないものを手に入れようとしているやつに
どうやったら優しくなれんだろう。

俺の中の二つの気持ちは、永遠にどっちも譲らないし和解も出来なそうに思えた。
俺って我侭すぎる。昭島駅と仲良くしてたいくせに、昭島駅より使えない駅になりたくねーんだ。
西立川駅や国立駅はおんなじ風に思ったりしなかったんだろうか。
思ったことあんならどうやって折り合いをつけてんだろ。
俺はこんなままじゃまた自然に昭島駅とやってくなんて絶対無理だ。
きっと何したって嘘んなる。

「あーもう!」
イライラする。今は何より自分の身勝手にイライラする。
夕方に差し掛かった日曜の下り電車は飽きもせずまた遊びから帰ってくる客を次々と俺の所に降ろしてきたから、
俺はそれを憂鬱な気持ちで迎え入れた。
彼等がどこから乗ってきたかは見ればわかる。新宿、東京、渋谷、原宿、吉祥寺、立川、
ごもっともなラインアップの人々は誰もが充実した一日に満足した様子で、
そんな彼等の気持ちのおかげで自分の憂鬱も大分やわらいだ。
全ての駅がそうであるように、利用客の満ち足りた気は何よりのごちそうだ。
だからもっといい駅になって、もっと喜ばれたいと思う。
急ぎ足で改札へ向かう客たち中にちらほらとだけど昭島駅からの客もいた。それでも昔に比べれば大分増えてる。
洋服の袋を持ってる女性や映画館帰りの家族連れ。彼等の明るい表情を見て素直によかったと思った。

「…あ。」
そうじゃんか…。なんで今まで忘れてたんだろう。
一番大事なのはこれだったはずだ。
俺のところから、いろんな人が自由にいろんな所に行って幸せだったらそれで良いじゃんか。
昭島駅が便利な駅になったからといって、俺がいらなくなるわけじゃない。
昭島駅がよくなれば俺んとこも良くなるし、逆もまたそうなはずだ。
駅と駅はつながっていてはじめて意味があるんだから。
「どこにも妬む理由、ねーじゃん。」
馬鹿だ俺。昭島駅に追い越される焦りとやっかみばかり強くなって、
いつのまにか昭島駅から帰ってくる人達を見なくなってた。彼等だって俺を使ってくれる人たちなのに。
もっとちゃんと自分自身を見つめていればとっくに気付いたことだった。

―昭島駅に会いたい。

いてもたってもいられなくなり、次の瞬間俺は飛んでいた。

午後の最初のピークを過ぎた昭島駅は、それでも絶えず人が行き来していた。
またしばらくすれば平日ほどではなくても上り方面からどっと人が帰ってくるはずだ。
勢いで高架した駅の改札前に来てはみたものの、あたりに昭島駅はいなかった。
近くにいる事は感じられるが、いつも座っているホームのベンチにもいない。

さがさねぇと。でもどうやって?
昼間西立川駅に言われたことを思い出す。
「練習っていっても…どうすりゃいいんだろ。」
とりあえず目を閉じて昭島駅の気配だけに集中してみる。すると、なんとなく気配が一つの方向に収束してくる気がしてきた。
と同時に、昭島駅以外の駅の気配に気付いた。誰かと一緒にいる。こいつらは…。
さらにその方向に気を向けると閉じた目に映像が浮かび上がった。
そこは駅に隣接された複合デパート内のフードコートだった。オープンスペースのテーブルに着いた昭島駅と、他に二人。
中神駅と東中神駅だ。ガキどもはコート内のマリオンクレープで買ったであろう甘ったるそうなクレープを嬉しそうに食べてる。
もっと集中すると声も聞こえてきた。

「おいしかったー。悪ぃな昭島駅、奢ってもらっちゃって。」
全然悪そうに思っていない中神駅が言った。
「ごちそうさまです。」
東中神駅の方はきちんと頭を下げる。
「ううん。手伝ってもらったお礼だから遠慮せず食べて。
君たちも沢山僕の分の気を引き受けて疲れたでしょ。」
昭島が笑いながら手をパタパタと振る。

「今まで知らなかったけどでかくなるって大変なんだな。ま、俺等はどうせ暇だから全然いいけどよ、」
「僕達じゃ役者不足で大して力になってないと思います。」
弱小駅だもんねーとおどける中神駅に同意するように東中神駅が頷いた。
「そんなことないよ。ちょっと手伝ってもらう位で良いって立川駅も言ってたし。」
「そう?でもなんか顔色良くねーしやっぱ拝島駅にも教えて頼んだ方がっぃてっ!」
話の途中でうめいた中神駅が屈んで足元をさすりながら隣の東中神駅を睨みつけた。
中神駅はそ知らぬふりで口を開く。
「この後もお手伝いしたいのは山々なんですが…。」
「あっいいよいいよ。大丈夫。君たちのところもこれから下り客が増えるでしょ。」
「そーなんだよな。ま、お互い頑張んべ。」
「無理しないでくださいね。もしもの時は福生駅に頼めばいいと思います。」
「うん。そうするよ。ありがとう。」

クレープを食べ終わった二駅はそれぞれ自分の駅に戻って行き、後には昭島駅だけが残った。
「うーん…。あいつらにも心配かけてるんだ。もっとしかっりしなきゃなぁ。」
残された昭島駅はそう呟いて伸びをした。その上を見上げた顔と、丁度目があった気がした。
「…拝島駅?」
その瞬間その場から昭島駅がいなり、慌てて意識を戻すと目の前に昭島駅が立っていた。

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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) お目汚し失礼しました。
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