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白い春 佐倉←小島 「熱」

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                     |  半ナマ 歌謡ドラマ 臼い貼るより
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  元893←金髪です。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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いい加減読み飽きた雑誌を放り投げてぐるりと首を回すと、部屋の奥に転がっているでかい生き物が目に入った。
そいつはつい15分ほど前、昨日と大体同じ時間に帰ってきて、昨日と同じように水道水をコップで2杯。
それからコンビニ袋から出したおにぎりと、テーブルの上に放置されていたつまみをいくつか咀嚼した後、
昨日と同じ場所にごろりと横になった。
昨日、と言ったけれど、一昨日だってその前だって全く同じだ。
この部屋で、食う、寝る以外にすることがないらしいこの同居人は、毎晩同じルートで床に着く。
このオッサンのどこがいいのか、毎日やたらめったら話し掛けたがる女も今日は留守で、
そうなるとこいつは声すら発しない。

「なあ」
テーブルに頬杖をついて、まだ眠ってはいないであろう後ろ頭に話し掛ける。
返事がないのは予想の範疇。
少しは癪に障るけれど、慣れてきたのも事実だ。
「あの金、どうやって稼いだの」
東京湾に沈められる寸前の俺を救った30万。我関せずを貫いていたこいつが突然放り投げてきた30万。
変な金だとは言っていたけれど、どんないわくが付いていようとも金は金だ。
俺はそれを手に入れる方法を毎日探して、それで度々ひどい目に遭っているのだ。

「まあ“稼いだ”っつう感じじゃねえんだろうけど。どうやったらいきなり30万も手に入んだよ。
手っ取り早い方法、あんなら教えてよ」
男は当然のように答えない、どころか、こちらを見ることすらしない。
まるで聞こえていないかのような態度に、慣れたつもりでもやはり段々腹が立ってくる。
「おい、起きてんだろおっさん!返事くらいしろよ!」
痺れを切らして大きな声を出すと、巨体は首だけをぐるりと回してこちらを見た。
…う、やっぱり目が合うと怖え。絶対ヤ9ザだって、こいつ。

一瞬怯んだ俺を見て、そいつはフン、と鼻で笑うと、またぐるりと顔を背けてしまった。
「…んだよ。なんか言えよ」
「てめえみたいなチビは、二丁目で立ちんぼでもやった方が早いんじゃねえか」
「ああ!?」
やっと出た言葉は、事もあろうか俺が一番言われたくない単語を含んでいて、つい頭に血が上る。

おい、今チビって言ったなてめえ。人が気にしてることを。
つうかてめえがでかすぎるんだろ、このデクノボウ。やるかコラ。

…なんて絶対に言えない言葉を全部飲み込んで、チッと舌打ちをする。
ああもう、一から十まで腹が立つ。
もういいやと、さっき投げたばかりの雑誌に手を伸ばしかけて、浮かんだ別の考えに手を止めた。

…ちょっとからかってやろうか。

「何、おっさん、そういう目で俺のこと見てるわけ?」
面白がるようにそう言うと、少しの間の後これみよがしに長い溜め息を吐かれた。
思いっきりバカにされているって事はいくら俺がバカでもわかる。
が、退屈しのぎと憂さ晴らしの方法が他に思い付かない。
「なんだったら抜いてやってもいいぜ。おっさんには30万分借りがあるからなあ。サービスしなきゃ割に合わないっしょ」
言いながら立ち上がって、そいつの寝床に近付く。
傍らにしゃがみ込んで耳元に唇を寄せ、触れそうなくらいスレスレの距離で囁くように声を出した。
「なあ、溜まってんだろ?」
わざと息を吹き掛けながら言うと、おっさんの体がビクッと跳ねた。
予想通りの反応に吹き出しそうになった、瞬間、強い力に下顎を掴まれる。

―やばい、と思った次の瞬間にはぐらりと世界が反転して、後頭部に打ち付けられるような痛みが響いた。
え、今、何が起きた。
思わず閉じてしまった目を恐る恐る開けると、眼前には鬼の形相があって、その鬼は俺を組み敷いて両手をきつく掴み上げていた。

―いや、ほんの冗談でした。すみません。やめて。助けて。

頭の中の言葉が声になって出て来ない。
全身が固まったように動かなくて、ただじっと、自分に跨がったままの鬼と見詰め合う。
正確に言うと、睨まれている。
無理、本気で怖い。

たぶんほんの数秒、けれどやたら長く感じる沈黙の後、鬼の顔が降りてきた。
左頬のすぐ横を通過して、耳に生温い息が触れる。
―喰われる。そう思った瞬間、どうしてか、固まった体に一気に熱が広がった。

「そうやって調子乗ってると、そのうち本当に沈められるぞ、ガキ」
鬼は耳元でそれだけ言うと、あっけなく離れていった。
しばし呆然としていた俺は、突然体に走った原因不明の熱をゆっくり逃がしてから起き上がる。
「…なんなんだよ…」
呟いて、さっきと同じように壁を向いて寝転んでしまったおっさんの背を盗み見た。
僅かながら、肩が規則正しく上下しているのがわかる。
今度こそ本当に眠ってしまったのかもしれない。

さっき、熱が離れる前、こいつの唇が降りてきた時。
ほんの一瞬だけ、その先を見たいと思ってしまった。
よくわからないけれど、俺は確かに何かを期待した。
人間本当に身の危険を感じると感覚がおかしくなるのだろうか。
たとえば殺されそうな時って、さっきみたいに体が熱くなって、早く殺して、みたいに思うのだろうか。
…いや、ないよな。それじゃ変態だ。じゃあなんなんだ、さっきのは。
少しだけ考えたけれど、すぐにめんどくさくなって敷きっ放しの布団に潜り込んだ。
眠って全部忘れよう。
考えて答えが出ても、なんだかろくなことにならない気がするから。

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 | |                | |           ∧_∧ 失礼しました。
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