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将棋 羽生と佐藤

ひっそりとショウギ界、生物注意です
例のあの人とモ/テ、小ネタです、すみません

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

砂糖は困っている。
目の前で無防備に寝息を立てている八部の眼鏡が、今にもずり落ちそうだ。

そもそも、と、やや混乱した頭を整理するために砂糖は考える。何で彼が今日将.棋会館の宿泊室にいるのだろうか。
ビジネスホテルめいた簡素な部屋の壁際で、落ち着かない気持ちのまま自分の眼鏡を何度か押し上げスーツの裾を引っ張る。
昨日タイトル戦の最終局をこの将.棋会館で戦ったばかりの砂糖である。後輩の棋.士相手に納得のいかない手を指し、結果としてタイトルを失い数年ぶりに無冠となった。
随分落ち込みもしたが一夜明ければ新棋.士会発足と副会長就任の会見が待っている。気持ちの切り替えも棋.士の仕事のひとつだった。
しかしさすがに疲れの拭えない表情で、それでも定刻より随分前に現れた彼を気づかって、職員が会見まで休んでくださいと宿泊室の鍵をくれたのだった。
で、と思考は再び始まりに戻る。なぜその部屋に八部が寝ているのか?
ちょっと昔なら邑山が対局中に空き部屋で休んでいることはよくあったし、タイトル戦などで八部が対局中にこっそり昼寝しているのは砂糖も知っている。
しかし、年度末な上に会見がいくつかあるバタバタした日の会館に、対局もない八部が忍び込んで寝ているなどということがあるだろうか?
砂糖はそのやや神経質そうな細面の顔を困惑に曇らせ、腕組みをして唸った。
いずれにしてもこのまま起こさないように出て行けば話は早い。多分隣の部屋も空いているだろう。
しかし問題は、眼鏡だ。

薄手のセーターにジーンズというざっくりしたいでたちで身体を丸めている八部の鼻筋に、かろうじて引っかかっている華奢なフレームの眼鏡。寝返りでもうったら簡単に折れてしまいそうだ。
眼鏡を凝視しているうちに砂糖は何となく八部から目が離せなくなっていた。小学生時代からもう30年近い付き合いになるひとつ年下の手強いライバル、その見慣れた研究者めいた顔、癖のない髪に目立ちはじめた白髪とかすかに眉間に走るしわ。
そう、つまりは自分も年をとったというわけだ。砂糖は頬に手を当てて苦笑する。
その瞬間八部の首がかくんと枕から落ちて度の強い眼鏡が更にずれた。あ、と呟きながら反射的に身を乗り出す。
左手をベッドについて支点にし小柄な身体をそっと覆いかぶせると、右手で眼鏡を持ち上げ正しい位置に戻してやる。むしろ外したほうがいいんじゃないか、と迷った指が眼鏡のフレームをためらいがちに撫でる。
こんなにも近くにいられるのは、将.棋盤が二人を遮っていないからだ。
その事実が逆説的に砂糖の胸を刺した。
八部と将.棋が指したい。昨日別の相手とタイトル戦を指したばかりだというのに感じるこの圧倒的な渇きは何だろう。将.棋を指す以外でこの巨大な感情を処理する術を砂糖は知らない。
指がすうっと眼鏡の弦から八部の頬へと滑る。
今年は何局彼と指せるだろうか。
気がつけば数センチの距離に八部の顔があった。顎に指を当てるとかすかに剃り残した無精髭の手触り。一連の動きに引きずられるように砂糖の唇が八部の唇に寄せられていく。
あれ?
砂糖の頭の中に警報が鳴り響く。何だこれは、俺は一体何をやっているんだ・・・。

しかし理性の囁きを無視するように身体の動きは止まらなかった。砂糖の形のいい鼻が八部の鼻筋に触れ、続いてその唇が軽く開いた八部の唇にぎこちなく重なる。
二人の眼鏡のフレームがぶつかってカチリと小さな音を立て、なぜか唇が触れた瞬間よりもその硬質な響きが砂糖を逆上させる。
朦朧とした様子で八部がゆっくりと眼を開く。大きな瞳の焦点が徐々に合ってくる。耳にガンガンと響く心臓の鼓動。言い訳を。何か言い訳を。
水の中でもがくように八部から身体を離す。そのままベッドの足元側へ後ずさりするように身体を滑らせた。ベッドの端に腰掛けてしばらくそのまま固まっている。
うつむいた姿勢のまま横目でうかがうと、八部は上半身を起こしてぼうっとした表情のまま砂糖を眺めていた。砂糖は、あああああとちょっと泣きそうな声を上げて天然パーマの髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き回した。
40に手が届こうという年になって、いきなり子どもの頃からの友人にキスするだなんて、何なんだ。キスという単語が心をかすめただけで鼓動がバクンと大きくなった。違うんですと言いたかったが、何が違うのか自分でも分からない。
腕時計の秒針の音だけがくっきりと気まずい空気に刻印されていく。
「砂糖さん」
軽くかすれた寝起きの声。砂糖はうなだれて髪の毛に指を突っ込んだまま動かない。
「砂糖さんの・・・変態」
言うなり意外な力で引き寄せられ、砂糖はうろたえながらベッドに倒れ込んだ。今度は八部のほうが砂糖の頭を抱え込むようにして口づける。
ためらうそぶりもなく唇を割った八部の舌先が柔らかく歯列をたどり、ゆっくりと探るようにその奥へと侵入してくる。舌を絡めとられ、軽く歯を立てられ、そのままかき回すようなキス。
眼鏡のフレームがまたカツンと音を立てて、砂糖の脳が白く溶けた。

八部はたっぷりと時間を使ってから息をつき、放心状態の砂糖のネクタイの結び目にその長い指を当てた。
「ここからどうするんですか?」
からかうような微笑みに砂糖は耳まで赤くなった。
「い、や、俺は、分かりません」
砂糖の低く柔らかな声がうわずる。今度は軽く触れるだけのキス。
「砂糖さんからしてきたのに」
「あれは、つまり、違います、そういう意味じゃなくてですね」
焦れば焦るほどですます調になるのは砂糖の癖だ。八部はその反応を楽しむように濃い眉を顰めてみせた。
「待ったするんですか?」
砂糖はその言葉にすがりついた。
「あ、ま、待った!」
「ダメ、です」
八部の身体がのしかかってきて、砂糖はきつく眼を閉じた。
脳内に大音量で秒読みの声が響く。10秒、20秒・・・。
しばらくして聞こえてきたのは規則正しい呼吸音。
八部は再び、深い眠りに沈み込んでいた。
安堵と奇妙な落胆で砂糖は全身の空気を押し出すような長い長いため息をついた。
そろそろ会見が始まる、早く行かなくては。
そう思いながらぐったりと重い八部の身体を抱えたまま動けないでいる。
これは夢か幻覚か、何かそういう感じのものだ。だって彼がここにいるはずがないんだから---。
自分に言い聞かせる痺れた頭の片隅で、眼鏡のフレームの触れ合った密やかな音だけがいつまでも繰り返し鳴り響いていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
メガネメガネでした
すみません、最後連投規制で携帯からになり手間取りました

  • かわいい。。。 -- 2017-07-18 (火) 23:11:16
  • すごくかわいいい…… -- 将棋の子? 2017-08-12 (土) 01:49:28

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