オリジナル 先輩×後輩
更新日: 2011-01-12 (水) 00:24:00
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| オリジナル
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 先輩後輩
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驚くほど無防備な顔。じわじわと喜びが広がる。
息がかかるほどまで近づかなければ相手の顔が見えないような、薄暗いバーの照明。
酔いつぶれたあなたの手を、上からそうっと握った。
あなたはへら、と表情を緩め、「なんだよ」とご機嫌に笑う。
指を一本一本なぞるとくすぐったそうに肩をすくめた。マメが潰れたあと。骨の形。血管が浮いた手の甲。
こんな風にじっくり触らせてくれる機会はもうないかもしれないから、感触を忘れないように何度も何度も辿って確かめる。
あなたはくすくすと笑って、また「なんだよ」と言った。
「今日が何曜か分かりますか」
「んー…」
「何時かは?」
「夜中だろ」
「すきです」
「うん、俺も」
目尻に皺を作る、僕の好きな笑顔で、あなたは答えた。
「お前ってすごくいい子だよね」
そうじゃない。あなたが思っている意味とは違う。根本的に違う。
今、僕があなたを押し倒してぐちゃぐちゃに犯してやりたいって思っていることとか、
あの人とは別れてしまえばいいと思っていること、あなたは知っているのですか。
『いい子』を演じているのが何故だか、知っているのですか。
いろいろな思いが湧き上がったけれど、
勇気がないというか、僕はそこまで馬鹿にはなれなくて言葉を飲み込む。
代わりに涙が溢れだした。次から次から。
あなたは一瞬きょとんとして、のんきに首を傾げる。
「なんで泣いてんの?」
僕が聞きたいです。
好きです、と。一度だけ、あなたに向かって口にしてみたかっただけなのに。
あの人が呪いをかけたのですか。あなたに想いを告げる人が皆、こうやって虚しさを覚えるように。
「泣くなよ」
拳を握り締めたまま泣き続ける僕を見て、あなたがのろのろとした動きで頭を撫でてくる。
子供を宥める親のようなそれ。
あなたがいつも、あの人に向けてするほど、慈愛のこもったものではない。
まるで神聖な儀式みたいな、あのニュアンスはない。
かしゃん、
グラスの中の氷が音を立てて崩れた。
いい子の僕はあなたを困らせてはいけないから、無理やりに口角を引き上げる。
頭を撫でるあなたの手をそっと退けた。
「すいません、目にゴミ入りました」
「もうとれた?」
「取れました」
「そっか。よかったよかった」
嘘丸出しの言い訳を、あなたは信じて腕を引っこめる。
その鈍感さは、本当に計算ではないのだろうか。
すべて理解した上で、気がつかないフリをされているのだとしたら?
…どちらにせよ、僕の出る幕はない。
主役はあなた。ヒーローも敵も、友達もなにもかも、全部あの人の役。
僕は照明やBGMで二人を引き立たせることしかできない裏方。
あなたの忠実な召使い役ぐらいなら、あの人は譲ってくれるだろうか。
「さて。帰りますか」
「まだ飲み足りないー」
「曜日分からないほど酔っといて何言ってるんですか」
「酔ってないって」
「いいから帰りますよ。ほら、立ってください」
ひらひら手を振るあなたの手首を掴んで、ゆっくり引っ張り上げた。
丁寧にしたつもりだったけど、あなたは足をもつれさせて僕の方にもたれかかってくる。
眠たいのか子供みたいに高めの体温。
一瞬遅れて、甘ったるい匂いに包まれた。
香水売り場で思わず手にとってしまったほど、僕の心に染み付いたあなたの香り。
途端鼓動が跳ね上がったのに気付かれたくなくて、肩を掴んであなたを引き離す。
「あれ?」
「酔いすぎです。自分で立てますか?」
「うん」
「気持ち悪いとかは?」
「ない」
ぶんぶんと首を大きく横に振ったせいでまたよろける。
「なにやってんですか」
仕方なく肩を貸してやると、あなたはへにゃりと笑って、
「ありがと」
と言った。
その笑顔がどうしようもなく、もうどうしようもなく大好きで、
首筋に絡みつく香水の匂いは相変わらず甘くて、
ついさっき玉砕したばかりの僕は、またあなたを嫌いになる機会をなくしてしまった。
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|│ロ stop. │|
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ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) オツカレサマデシタ
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