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オリジナル 吸血鬼と狼男

オリジナルの吸血鬼×狼男。リバでもおk
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        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ごめんなさい
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         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 微グロ注意
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
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 |_____レ"

二十年前のことだった。
たった一度の出会いが、取り返しがつかないほどに運命を捻じ曲げた。
否――出会いというよりは「災厄に見舞われた」というべきか。
その「災厄」はまだ少年だった男から、文字通り全てを奪っていった。
貧しいが仲の良かった家族、一緒に野山を駆け回った幼馴染、ほのかな恋心を抱いていた二軒隣の家の少女。
それら全てが「災厄」に呑み込まれた。
そして「災厄」の更なる影響を断ち切るために、男は故郷さえも失った。
血と腐肉の匂いが立ち込める村に火を放ち、疲れた身体に鞭打って
泣きながら――やがてはその涙すら枯れ果てて、月の明りを頼りに、
ただひたすら夜の山道を駆けていった。

二十年前のあの日と同じような、不吉なほどに美しい満月が夜空に浮かんでいる。
その冴え冴えとした光を全身に浴びて、男はぎちりと歯を噛み鳴らした。

一度「印」をつけてしまえば、支配は容易い。
魅了された魂は「印」の主を恋い慕い、如何なる障害があろうとも支配者を迎え入れる。
吸血鬼であるドラコにとって、それは効率よく「糧」を得るための術であり、
またそれ以外の何ものでもない。一度内側に入り込んでしまえば、後は満足するまで喰らい尽くすだけだ。
そもそも、容易く支配を許すような弱い魂の持ち主に興味はない。眷族を増やすつもりは毛頭なく、
喰らった後は残り滓が「目覚め」ないよう、心臓を潰して首を切り離す。それがドラコの流儀だった。

人間のフリをして夜会に潜り込み、美味そうな娘――時には青年に目をつけて魅了する。
その娘に手引きをさせ、舘の中に入り込み、中にいる人間の血全てを啜り尽くす。今夜も、そうなる筈だった。

「ああ伯爵、早くお入りになって」

夜風に揺れるカーテンの向こうで、しどけない姿の若い娘がドラコを呼んでいる。
たとえ聖水や聖灰で結界が張られていようとも、印をつけた者の呼びかけがありさえすれば、
それは力を失ってしまう。そもそも、ドラコのように年を経た吸血鬼の手にかかれば、
ちゃちな祝福を受けたモノなど障害のうちにも入らない。
だが、美味そうな得物を目の前にして、ドラコはバルコニーから先へと進むことが出来なかった。

「これは――何の匂いだ?」

微かに鼻をつくその異臭は、まるで髪の毛を燃やしたような……いや、違う。
髪の毛などではない。この独特の生臭さは、生きた獣の毛の匂いに他ならない。
この匂いがするということは即ち、吸血鬼にとって唯一にして最大の天敵が
すぐ傍にいることを意味していた。

「隠れていないで姿を現したらどうだ、リカントロープよ」

ゆったりと手を広げ、芝居がかった仕種でドラコは呼びかけた。

「それともこの美しい月の前に、貴様の醜い毛むくじゃらの姿を晒すのは
恐ろしいか?ふふ、無理もない……リカントロープの魂は、月の狂気に
支配されているからな。物陰に隠れているとはいえ、そろそろ理性を保つのが
難しくなってきたのではないか?」

月光を浴びて微笑むドラコの青白い典雅な面差しには、嗜虐的な笑みが浮かんでいた。
確かに吸血鬼にとって、人狼は最大の天敵だ。しかしそれはあくまでも
「同じ条件下で戦った場合、両者の力が拮抗している」という意味であり、
月光で容易く理性を失ってしまう人狼をあしらう術なら、ドラコは幾つも心得ていた。
それに、人狼の出現はドラコにとって好都合だった。このところ少々食い散らかしすぎたせいか、
人間どもの中に「吸血鬼」の噂が流れている。伝え聞いたところによると、つい最近
トランシルヴァニアを根城にしていた血族の一人が、イギリスからやってきた男達に狩られたらしい。
彼らがここまでやって来るとは思えないが、喰ったのは吸血鬼ではなく人狼の仕業だと
思わせることができれば、安全にこの地から離れることができる。

「考えてみれば、我らが天敵同士というのも妙な話だ……どちらも闇の祝福を
受けた身、争う理由はない筈だ。私の『食事』の邪魔をしなければ、『餌』の
一つや二つはくれてやる」

優雅にそして傲慢に言い放つと、ドラコはカーテンの向こうへと手を差し伸べた。
白い手袋を嵌めたその手首を、不意に下方から伸びてきた鋼色の光が薙ぐ。
胸が悪くなるような音とともにドラコの手首が斬り飛ばされ、庭の茂みのどこかに落ちた。

「貴様……!」

溢れる血潮もそのままに、ドラコは凄まじい形相で屋根の方へと視線を向けた。
ねばつく血の塊はやがて蝙蝠へと姿を変え、ドラコの輪郭と同化する。
腕を一振りすると、断ち切られた袖口の先から、新しい手首が生えた。

「吸血鬼の血は、腐った匂いがするという話だが――なるほど、確かに臭い」

ドラコが視線を向けた先――急勾配の屋根の上には、細身の長剣を手にした背の高い男が
立っていた。人狼の匂いは間違いなく、その男の身体から発せられている。
しかし月の光を浴びているにもかかわらず、男の輪郭はヒトの形を保っていた。
男は人狼の姿をとることなく、地上からバルコニーへと跳躍し――吸血鬼であるドラコにも
視認できないほどの素早さで手首を斬り飛ばし、屋根の上に降り立ったのだ。
その事実に気づいたドラコは、自ら人であることを止めてからはじめて、戦慄を覚えた。

「満月の光を浴びても姿を変えないリカントロープだと……?貴様、一体どんなまじないを
施している!そもそも、リカントロープの大半は二百年前の魔女狩りで、大半が捕えられ
死に絶えた筈だ!この私を傷つけることができるほど、古くて強い血族が残っているわけがない!」

ドラコの問いに、男は黙って袖口を捲ってみせた。
がっしりした手首には小さな銀の十字架をつけたロザリオが幾重にも巻かれ、ロザリオが
巻きついた皮膚はただれて引き攣れている。そのただれた皮膚の少し上には、ラテン語らしき
文字が刺青で刻まれていた。
男は聖別された銀が齎す苦痛と、聖書に書かれた言霊の力――IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVMにより、
己の理性を保っていたのだ。

「貴様、ヴァチカンの飼い犬か!」
「魔女狩りで全ての人狼が処刑されたわけじゃない。吸血鬼を狩る為の切り札として、
ヴァチカンは最も古いネブカドネザルの血族を手元に置いていたんだ」
「ふん、だが貴様がネブカドネザルの直系とは思えんな……純血にしては匂いが薄い。
神の恩寵を捨ててリカントロープの呪いを受けた、志願兵といったところか。
なりたての眷族ごときが、思い上がるなよ」

相手が純血の人狼でなければ、ドラコにも充分勝ち目がある。邪法を使い、自ら吸血鬼となり、
数百年の時を経たドラコの力をもってすれば、人狼の呪いに染められた目の前の男を魅了するなど
容易いことだ。魅了の呪縛を込めた吸血鬼の紫色の双眸が、男を見据えて妖しく光る。
しかし男は魅了の視線をものともせず、剣の切っ先をドラコに向けた。

「無駄だ――ネブカドネザルの呪いは、お前の力よりも強い。お前が俺を呪縛する前に、
この剣がお前の心臓を貫き、首を斬り落とす」
「ふ……虎の威を借る狐とは、まさにこのことだな。いくらネブカドネザルの呪いが
強力であろうとも、貴様自身は後天的なリカントロープに過ぎぬ。所詮は付け焼刃、
果たしてネブカドネザルの呪縛を受け止めるだけの器があるのかな?そら、切っ先が震えているぞ」

男の目を見据えながら、ドラコは滑るような足取りで近づいた。
バルコニーの手すりを挟んで相対し、男がほんの少し腕に力を込めれば、剣の切っ先が
ドラコの胸を貫く位置でぴたりと止まる。男が喉の奥で、狼を思わせる低い唸り声をたてた。

「少しは骨のある男かと思ったが、所詮リカントロープの呪いに魂を明け渡しただけか。
弱い人間に興味はない――貴様には、月夜の狂気がお似合いだ」

優しげな声で囁くと、ドラコは男に向かってふうと息を吐いた。
甘ったるい腐臭の漂う吐息が夜風にのって、ロザリオを巻いた男の手首に絡みつく。
数珠を繋ぐ糸が一瞬にして朽ち、バルコニーの床に珠が散らばった。
男が獣じみた咆哮をあげ、剣を横に薙ぐ。食いしばった口元から犬歯がせり出し、
首から肩にかけての筋肉がぐうと盛り上がる。
ドラコを睨み付ける目が金色に輝いたが――男の変化は、それだけだった。

「二十年前モそウだっタ……そノ腐ッた匂い、紫の邪眼――オ、前が」

理性と獣性がせめぎあうぎりぎりのところで、男が唸り声混じりに呟いた。
ロザリオの封じを失った今、一体何が男の理性を支えているのか。

――今は程よく腹も膨れているし、これ以上喰うのも殺すのも手間だからな……
お前は生かしておいてやろう

血と腐臭が立ち込める村の中で、悠然と佇む美しい男。
生気を感じさせない青白い肌の中で、血に濡れたような紅い唇だけが鮮やかに。

――ああ、幾つかは後始末が不充分だったな。心臓に杭を打ち込み、火をかけろ。
でないと目覚めてしまうぞ?そら、もう起きだした奴がいる

優雅な挙措で惨酷な台詞を囁き、紫色の瞳がこちらを覗きこむ。
不吉なまでに美しい満月に向かって飛んでいった典雅な男の背には、蝙蝠のような
翼が生えていた。

男の言葉に従い、二十年前、一番最初に杭を打ち込んだ「起きだした死体」は。

二軒隣の家に住む、歌声の綺麗なマレーネだった。

「ク……はは、そうか。そういうことか」

二十年前の、プロイセンの片田舎で起こした「気紛れ」は、数百年の時を生きたドラコの記憶にも
残っていた。
あの時見逃してやった十五、六の少年が、吸血鬼を狩るヴァチカンの飼い犬となって、
自分の目の前に姿を現した。
普通ならば、いくら憎むべき仇とはいえ、強大な力を持った吸血鬼が相手では、
復讐しようなどという気も起こらないだろう。
それを目の前にいるこの男は、人狼の呪いをその身に受けてまで、自分を追いかけてきたのだ。
嗚呼――これ以上の呪縛が、他にあるだろうか。

容易く支配を許すような、弱い魂の持ち主に興味はない。

服従するだけの眷族など必要ない。

欲しかったのは――そう、己の意思で、この自分を求める存在だ。

なんて――愉快な。

「リカントロープよ、貴様の名を訊いておこう。私はドラコだ」

 ――ヴォルフガング。

殆ど狼の唸り声と化した男の声は、ドラコの問いに確かにそう応えた。

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        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < お粗末さまでした
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