Gガンダム 弟子←師匠
更新日: 2012-03-05 (月) 21:17:15
今年放映15周年だそうで、見直してみたら師弟に燃えて萌えたので勢いで投下
最初から最後までネタバレ満載注意!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「お会いしとうございました……っ!」
そう言ったきり泣き崩れた弟子は、一年前に別れた時とどこも変わってはいなかった。
むしろ、厳しい修行にも滅多に見せたことのなかった涙を
ぽろぽろと止め処なく流しながらすがってくる姿は、昔よりも幼くすら見える。
震える手に手を重ねてやりながら、そんな事を考えていた。
*****
その晩、儂は一瓶の紹興酒をさげて奴にあてがわれた部屋を訪れた。
生き残った人間も着実にその数を減らせている今、
都庁ビルには空き部屋だけはたっぷりと残っている。
ここもそのうちのひとつであり、以前は小規模な会議室として使われていたようだった。
開け放たれたままのドアの向こうで、弟子はぼんやりと窓際にたたずんでいる。
「どうした、明かりもつけんと」
廊下からの光を頼りに蛍光灯のスイッチを探し、オンに切り替えた。
確かに明るくはなるが、この光は冷たい。
「師匠……。いえ、外を見ていただけです」
「そうか。……ひどいものだな」
「はい……」
明かりをつけたために、窓ガラスは部屋の中の光を反射し
鏡のようになって窓の外の景色を見せはしない。
しかし、この外に広がる光景は既に目に焼き付けられていた。
デスアーミーに痛めつけられるまでもなく荒廃し、腐りきった大地。
新宿だけでも、香港だけでもない。
いまや世界中にこれと同じ光景が広がっているのだ。
「ところで師匠、何かご用ですか?」
「ああ。お前、今日はもう身体は空いておるのか」
「はい、暇ですよ」
「ならば少し付き合わぬか。お前も飲める歳になったのだろう」
そう言って瓶を目の高さまで持ち上げてちゃぷんと揺らせて見せると
奴は少し驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうに笑ってうなずいた。
その笑顔も昔のままだった。
しばらくののち、瓶の中の酒は残りわずかになっていた。
それほど速いペースで杯を開けたわけではないが、
再開に伴った大方の近況報告は互いに夕方までに済ませてしまったため
今更話が弾むという事もなく、時折当たり障りのない言葉を交わしながらの静かな酒宴だった。
体の血の巡りが良くなっているのは感じるが、酔ったというほどでもない。
対する弟子は目元のあたりを赤く染め、グラスに口を付けるペースが落ちてきている。
さほど酒を、それも紹興酒など飲みなれていないのだろう。
「師匠が酒を飲んでいるのはあまり見た事がなかったけど……さすがにお強いんですね」
「ふん。こんなもの、飲んだうちにも入らんわ」
先ほどから何が嬉しいのか、やたらと機嫌よさげに顔を微笑ませながら
さすが師匠だなぁなどと呟くのを見ていると、胸中に何とも言えない感情が湧き上がってくる。
憐憫、愛しさ、焦燥、悲しみ、様々なものがないまぜに。
そしてその原因は自分がこれから成そうとしている大事にある。
こうなってしまったものは仕方がないと思っている。
こちらとて、まさか弟子とデビルガンダムとの間に
そのような因縁があったとは思いもよらなかったのだ。
ドモンがどうあれ、今更計画を止めるわけには行かない。しかし……
「ドモン、お前は………ひとりは平気か」
ほとんど独り言のように漏らした問いに、奴は不思議そうな顔を浮かべた。
しかし、少しの逡巡ののちに軽く目を伏せると
酒で赤く潤んだ目を揺らめかせながら口を開く。
「……はい。母は死に、父は冷凍刑……残った兄は……
いえ、あの男は、もう俺の兄などではありません。孤独には慣れました」
「ふ。その割には、儂に会いたかったと言って泣くのだな」
「そ、それは」
指摘してやると更に赤くなってうつむいた。
先ほどさんざん泣いて、落ち着きを取り戻した今となっては
本人としても恥ずかしいことをしたと思っているのだろう。
「師匠があんまり突然行ってしまったから……
それに、まさかこんな所で会えるなんて思ってもなかったし」
「…………」
「師匠、俺まだ、師匠に教わりたいことがたくさんあるんです」
明日からまた稽古つけてくださいね、と続けるその口はあまりろれつが回っておらず
だいぶ酒が効いているのが分かった。
半開きにされた眼が、時折重たそうに瞬きをしながら光を通さない窓の向こうを見やる。
どこを見ているとも付かないその視線の先を追いながら
儂はその窓の向こうに、いつか遠い未来の夢を描いた。
空は青く輝き、緑は濃く大地を覆い、海は清く透き通る夢を。
何十年、何百年先とも知れぬそのはちきれんばかりの自然の光の中で
ただひとつ聳え立っているのは、デビルガンダム……いや、アルティメットガンダムと
その主となった弟子のはずである。
この若く健全な身体を生体ユニットとして組み込ませたのち……
上手くすれば、眠ったようにしたまま永遠を過ごさせてやることが出来るだろう。
悲しみも孤独も感じることなく、まどろみにいだかれ、美しい地球の中心で。
しかし、最悪の場合ドモンが自分の意識を保ったままあのガンダムと融合してしまうこともありえる。
そうなった時……
儂の理想とも言えるその夢の中で、ただそのことだけが不憫でならなかった。
いや、どうなるかはまだ分からない。
あれは自分の判断により自己進化を続け、その最終形態は誰にも分からない。
そしてこの弟子にしてもまだまだ成長途上だ。
未知数が多すぎる………
「師匠?どうかしましたか?」
この笑顔を、近い将来むしり取らなければならない。
真実を告げなければならない。
「いや……何でもない」
その時、この子は果たして理解してくれるのだろうか。
*****
「この儂を……まだ、師匠と呼んでくれるのか………」
あの時、伸ばした手を拳で拒絶されたあの時、夢は本当についえたのだと思った。
この悲しみはついぞ伝わることがなかったのだと、絶望した。
しかし、今儂を抱いているこの腕は、強く逞しい。そして温かかった。
それだけで何もかもが――
あの、戦って、戦って、戦い抜いた日々の果てに刻まれた悲しみが
癒されていくように感じる。この温かい腕のおかげで。
もう何も心配はいらないだろう。
自分が手ずから育て上げた最高の武闘家と、
戦って、戦って、戦い抜いた結果としての敗北。
そこには一片の悔いも未練もない。
ただひとつ、思うことがあるとすれば……
「もしも、あの新宿でお前と出会わなんだら………」
あるいは――もしも、あの新宿でさえ出会わなければ
これほど深く傷つけることもなく
激しい憎悪も絶望も知らぬまま
昔のように、静かに暮らさせてやれたのだろうか。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
師匠は弟子を生体コアにして地球上から人間を消す気でいたけど
それって要するに他の人はいなくなってもドモンだけは生きてるってことで、
すさまじい愛だなと思って書きました
- 同感です!師匠って物凄く愛情深いですよね!!ああ、なんか本編思い出したら泣けてきた…。 -- 2012-03-05 (月) 21:17:15
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