銭ゲバ 男娼な風太郎の話
更新日: 2011-01-28 (金) 21:09:38
ドラマ是似下馬より封太郎の過去捏造話。先走っててすみません。
オリキャラ複数登場警報発令。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
封太郎が初めて両親以外の人肌の温もりを知ったのは、彼が14になった冬のことだった。
凍てつく夜の街角で震えていた封太郎に手を差し伸べ、暖かな食事と寝床を与えてくれた中年の男。
そんな男が自分に向けた欲望を拒む術など、その当時の封太郎が持っているはずもなく。
求められるままに封太郎は、男に無垢なその身体を開いた。
初めて経験する性的な接触、しかも自然の摂理を曲げて男に抱かれるのは、もちろんとても不安なことだった。自分の身体に触れる男の手を封太郎は、恐怖にすら感じた。
それでも自分は、生きていかなければならないのだ。
男の腕の中でガタガタと震えだしそうになる身体を懸命に抑えながら、封太郎はそう思った。
この男が自分に与えてくれた物の対価は、当然払わなければならない。金を持たない自分は、望まれるのであれば身体を差し出すしかないではないか、と。
封太郎を抱いたその男は、悪い人間ではなかった。
一夜を過ごしたその後も封太郎を放り出すことなく、男の別宅だったのだろう、最初に連れ込んだ小さな家に封太郎がそのまま居つくことを許し、生活の面倒を見てくれた。
幾日かおきにその家にやってきて身体を求める以外に、男が封太郎になにかを要求することはなかった。自由に振舞うことを許してくれ、ときおり、
人目を気にして家に篭っていることの多い封太郎の無聊を慰めようとしてだろうか、本や菓子などの土産を手にやって来ることもあった。
最初は警戒を解くこともできず、びくびくとぎこちなく日々を過ごしていた封太郎も、そのうちに男との行為にも、なにより男自身にも慣れ、その訪れを心待ちにするようになって。
そんな穏やかな生活は、けれど長く続くことはなかった。
男の不義に気付き、乗り込んできた妻、青ざめうろたえる男、2人の間で困惑に立ち尽くす封太郎。
「あなた…、まさか、こんな男の子とだなんて……。けがらわしい!!」
おぞましいものを見るような女の目つき。向けられる敵意に耐えかねて、封太郎が助けを求め男に視線を向けると、男は気まずげに目をそらした。
男は決して、悪い人間ではなかったのだ。
封太郎を裏切った……ただ、それだけで。
男は妻に向かって必死に弁明を始めた。そんなはずないだろう、と。
「こんな薄気味の悪い小僧、俺が相手にするわけがないじゃないか」
哀れに思って置いてやってるんだ、そんなことを言う男の口はけれど、その少し前には確かに睦言めいた言葉を封太郎に囁いていたのだ。
言葉――、とくに甘い言葉というものがいかに上辺だけで信用ならないものなのか、封太郎はこの時、よくよく思い知ったのだった。
「うちにはこんな子を養う余裕なんてない」と封太郎を追い出そうとする自分の妻を、男が止めることはなかった。ますます勢いづく女の剣幕に気おされ、
追い立てられながらそれでも封太郎は、部屋を出る直前、振り返りもう一度男を見つめた。
「……………」
ひどくうしろめたそうな表情の男は、封太郎と目が合うとさっと顔を背けた。
まるで封太郎の視線を怖れているかのように大柄なその身を縮こませる、そんな男を哀れむように封太郎は微笑みを浮かべ、つかの間の安住の地を後にした。
再び夜の街をさまようことになった封太郎を拾い上げたのは、またしても欲望にまみれた無骨な手だった。
「金が欲しいんだろ?」と強引に封太郎の手を引いた粗野な身なりの男に、引きずられるようにして連れ込まれた暗い路地裏で、それはほとんど強姦だった。
必死に試みた抵抗を圧倒的な力でねじ伏せられ、憎しみと嫌悪に燃える目で相手を睨みあげることしかできない封太郎の頬を、その男は「その目が気に食わない」と激しく打ち据えた。
「お前みたいな化け物、相手してもらえるだけでもありがたいと思え!!」
化け物―――。
その言葉は、わずかに残っていた封太郎の心の中の、柔らかく傷つきやすい部分を鋭くえぐった。
「………………」
抵抗することを忘れた封太郎の身体を、男は思うまま蹂躙した。
それが男の性癖なのだろう、耳を塞ぎたくなるような言葉でさんざんに罵りながら、相手のことを全く省みない荒々しい動きで封太郎を責め立てる。
永劫に続くようにも思えるそんな責め苦を、封太郎は歯を食いしばって耐えるしかなく。けれど、それが気に入らないとまた殴られて。
耐え切れず途中で意識を手放し、次に目を覚ましたときには、封太郎を襲った嵐は止んでいた。
打ち捨てられるようにその場に置き去りにされていた封太郎の傍らに、それでも散らばっていたのは、数枚の紙幣。
そうして封太郎は、自分の身体が売り物になることを知った。
それからしばらくの時が流れ、成長した封太郎は、身体を売って金を得る人間になっていた。
もっとも身体を売ることだけで生計を立てていたのは幼かった一時だけで、自分が労働力として認められるような年齢になると封太郎はすぐに“まっとうな”仕事に就いた。
それは世間から見れば、日雇いと呼ばれるような底辺の仕事ではあったけれど、機械のように黙々と力仕事をこなす、それは封太郎の性に合っていた。
少なくとも、身を売る商売よりははるかに苦痛でなかった。
それでも封太郎は、苦痛であるその“仕事”の方も続けていた。
金が欲しかったのだ。
生きていくのに必要な、そして自分を決して裏切ったりしない金が。
顔に傷を持ち、つねに陰鬱な雰囲気を漂わせている封太郎ではあったが、そんな彼を買う人間というのはそれなりにいるもので、
成人し、背も伸びて線も太くなり、少年の面影が薄れた今でも封太郎は“仕事”にあぶれることがないのだった。
世の中には酔狂な人間がいるものだ―――。自分の上で夢中になって腰を振る男を無感動に見上げながら封太郎は思う。
今夜の相手は、既に幾度も封太郎を買ったことのある馴染みの客。
見たところとても真面目そうで、春を売る男に関わりあうような人間にはとても見えないその客は、何が気に入ったのか知らないが、月に1、2度のペースで封太郎を買う。
他の客とは違ってその男は、乱暴を働いたり罵倒したりしてサディスティックな欲望を満たすこともなく、ひどく丁寧に封太郎を扱った。
そんな“上客”だったから、封太郎はこれまで幾度もの逢瀬に応じてきたのだが―――。
このところ見られるようになったのは、男の封太郎に対する欲望以外の感情。
封太郎が応じれば彼を食事に連れ出し、たわいのない会話を楽しもうとする。それに封太郎が無反応を通しても機嫌を損ねることなく、彼が食事を摂る様子をにこにこと眺めている。
これまで以上に丁寧に扱われ、男の言葉の端々には自分への独占欲を感じ、封太郎は戸惑った。
欲望を満たす行為の後は、ひどく優しく労られるようになった。睦言めいた言葉を囁かれることもあった。
そしてついには腕に抱かれてそのまま朝まで共に過ごすことを望まれるに至って、封太郎の困惑は最高潮に達した。
自分が引いた一線をこの男は踏み越えようとしている。
この男は、自分の心に触れたいと望んでいる――、そう気付けば募る苛立ちと危機感。
今夜の逢瀬も、本当は気が進まなかった。けれど、どうしてもと男が懇願するものだから。
「……………」
―――もう、潮時だ。心の中そう呟きながら、封太郎は男の背中に手をまわす。
快楽に耐え切れずといった風情で縋りつき、甘えた声で男の名を呼べば、とたんに身の内に受け入れた男の質量が限界まで膨れ上がるのを感じた。
「―――封太郎くん!!」
切迫した声を上げ、きつく封太郎を抱きしめた男が絶頂を迎える。ゆるやかに突き上げながら射精を続ける男の動きに合わせるように、慣れた封太郎の身体も欲望を解放した。
すぐに脱力した男の身体が覆いかぶさってくる。封太郎の胸に顔をうずめ、そのまましばらく荒い息を整えていた男は、身を起こすと、行為の余韻を残した封太郎の顔をまじまじとのぞき込んだ。
じっと目を閉じてその視線に耐えていた封太郎は、男の手が、自分の額にかかる髪をかきあげる動きを始めたのを感じて、嫌悪に眉をひそめた。
醜い己の顔を晒し、見世物になるなんてごめんだ。顔を背けようとするも、いつになく不躾な手にあごを捕らえられてそれもままならず。
いよいよ封太郎は非難の視線を男に向けようと、閉じられた目を開いた。
「――――……」
見上げた先にあったのは、思いがけず真摯な表情。封太郎は小さく息をのんだ。
どこか思いつめたような、震える声で男が囁く。
「愛してるんだ、封太郎くん。 この、傷も……、大好きだよ」
君の全てが愛しい―――、そんな言葉と共に、男の手のひらが封太郎の左目を包み込む。
「……………」
真摯な言葉、あたたかな温もり。
けれど悲しいかな、それらを喜びと感じられる心を、封太郎はすでに失って久しいのだ―――。
「……………」
封太郎は男に微笑みかけた。
「―――っ、封太郎…!!」
感極まった声が彼の名を呼び、脱力した身体を抱き起こす。
「封太郎、愛してるよ……」
耳元に改めて囁かれる愛の言葉。痛いほどの抱擁を受けて封太郎の顔に浮かぶのは、いつかと同じ微笑。
それは、憐憫の微笑みだった。
けれどその笑みが、独りよがりな想いに酔い痴れる男に向けたものなのか、それとも温まる方法すら忘れてしまった、凍てつく己の心を哀れんだものなのか……。
自分でも見当がつかないまま、封太郎はいつまでも笑っていた。
夜の街をひとり、封太郎は歩いていた。
月は西の空に沈んで夜半過ぎ、先ほどの情交のを残り香を身にまとい、気だるい身体を少しだけ引きずって。
手にした上等な黒い財布を、無造作に放り上げながら。
まるで気に入りのぬいぐるみのように自分を抱きしめ眠る男を起こさないようベッドから抜け出すのは、いくぶん骨の折れる仕事だった。
シャワーも浴びず手早く服を身に付け、部屋を出ようとした封太郎の目に入ったのは、ベッドサイドのチェスト上に無防備に置かれた男の財布。
男にとってはいい勉強になっただろうと封太郎は想う。
安易に人を信じるとどうなるか。簡単に人に心など開けば、どんな痛い目に遭うのか。
これできっと男の目も覚めたのに違いない―――。空に放った財布を受け止め、封太郎はそのまま空を見上げる。
月のない暗い夜空に、ふと男の顔が浮かんだ。
『愛してるよ……』
善良そうな顔、優しげな言葉の響き、抱かれた腕の中の暖かさ……。
「――――っ」
そんなものはまやかしだ。封太郎はその幻影をかき消すように頭を打ち振るった。
先ほどの男もしょせん、自分を金で買った人間。いずれは自分を裏切る時がくる。
あの時のように。
あの男のように―――。
刹那甦った少年の頃の記憶に、封太郎はぎゅっと目を瞑った。
「……………」
痛みに耐えるように目を閉じて、その場に立ち尽くすことしばし。
再び開かれた封太郎の瞳は、夜空より暗い闇の色をしていた。
「……信じられるのは、銭だけズラ…」
自分に言い聞かすように呟いて封太郎は、凍てつく夜の街の中消えていった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
801スレでの「男娼は確実にやってたよね説」に興奮して書いてしまいました…
- 胸キュンですVVV -- きさめ? 2011-01-28 (金) 21:09:38
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