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海外ドラマLOST 傭兵隊長萌えSS2 「ポンコツ傭兵とボス2」

規制されてました・・。
本日もお目汚しに参りました。
今日こそはご迷惑の掛からぬ様、粗相の無い様にしたいと思います。

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|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

初めて部下を失った。
その事に対しての、ボスの怒りはすさまじかった。
俺達以外を、全て潜在的な敵と見なした様だった。
捕獲任務ターゲットであるベンジャミン・ライナスはボスの事
を詳しく知っていたらしい。
裏切り者がいる事は間違いなかった。それも、一人ではないか
も知れない。
俺達は疑心暗鬼になっていた。船を爆破して、島を焼き払い、
すぐにでも脱出したかったが、そんな俺達をボスが止めた。
どんな手を使っても、島に戻る。
必ず敵を打つ。
ボスはそう言った。
その言葉に嘘がない事を、俺達はすぐに気付いた。

島へ行く唯一の手段であるヘリの操縦を、フランクが拒否し
た。その時ボスは、何の躊躇も無く、見せしめに船の医師の喉
を切り裂いた。一瞬の出来事だった。
のんびりとしていた船の空気は、その瞬間に永遠に変わった。
船のクルーは思い出したのだ。俺達が、人を殺す事が仕事の傭
兵であると。
ボスのブルーの目は、戦場で見るときと同じ、殺戮者の凍てつ
いた目だった。
ボスに取っては、とことん信頼しているのは、仲間だけだっ
た。それ以外は全て敵だった。状況次第では、全員を殺さなく
てはならないかも知れない。それを知っていたから、必要以上
に溶け込もうとしなかったのだ。
事態を収めようと、銃口を向けたゴールト船長を撃ち殺した時
には、ボスは自分が片道切符を手にしたのだと知っていたのだ
ろうか。いやひょっとしたら、それよりもずっとずっと前に、
ウィドモアと言う大富豪から依頼を受けたときから、ボスは自
分が今回の任務から帰還できない事を知っていたのかも知れな
い。そうでなければ、自分の心臓の鼓動が止まった時に起爆す
る、デッドマン・トラップと呼ばれる無線装置を付けよう等
を、しなかった筈だから。今までそんなものは、一度も身に付
けた事は無かった。それも、人質等通じない他者の命等一切省
みないと言われる、ベンジャミン・ライナスと言う危険な男捕
獲の為に。
メイヒューが死に、初めて部下を失ったときに、死の予感は確
信に変わったのだろう。
俺達は、破滅に向かって進み始めていた。

芝生の上から上半身を起こした俺はボスの尻の写真に感謝をし
つつ、無くしたり落としたりしない様に、大事に胸ポケットに
それを戻した。立ち上がり数歩歩くと、自分の近くでレッドフ
ァーンが息絶えているのを見つけた。
ボスは見当たらなかった。
俺は一体、どの位意識を失っていたのだろう?
ジャングルの中へと入っていく。
そこで俺は、コクールとラコアの死体を見つけた。
俺は不安になった。
俺達の部隊は壊滅した。
海兵隊として派遣されたアフガニスタンでも、傭兵部隊として
戦場を駆け回ったアフリカでも、俺達はずっと一緒に戦ってい
た。何故なら俺達は、ボスと離れたくなかったからだ。ボスの
下で戦いたかった。ボスの傍に、ずっといたかったのだ。
もし、もしこうしてジャングルを走っている内に、ボスの死体
を見つけたらどうしよう。
俺は高鳴る胸を押さえながら走った。
そして、俺は草むらに倒れるボスを見つけた。

地面に横たわるボスの、ブルーの目はうっすら開いていた。
俺はボスが死んでしまったと思い、パニックを起こしかける。
しかしすぐに、自分がボスの身体に取り付けたデッドマン・ト
ラップの、無線装置の受信機を持っている事を思い出した。
受信機のライトは緑に点滅していた。ボスの心臓はまだ動いて
いた。それに顔を近づけると、瞳孔は開いてはいなかった。
恐らくは何かしらの強い外因的な衝撃等が原因で、身体が
ショック状態に陥っているのだろう。
ボスの口に自分の口を押し付けて、息を吹き込んだ。肺が膨ら
むと、ブルーの目に力が戻り、激しく咳き込みながら、ボスが
意識を取り戻した。
地面の上で身をよじったボスの、わき腹の後ろから、夥しい量
の血が地面に流れ出していた。
軍人なら誰でも知っている。そこは急所だった。接近戦のナイ
フ格闘術で、一番最初に狙われる場所だ。そこを刺せば、どれ
ほど屈強な者でも肝臓を損傷して致命傷になる。
俺はぞくりとした。
軍隊格闘術に強いボスを相手に、急所をナイフで狙える程腕の
立つ特殊訓練を受けた者が、目には見えない敵の中にいるの
だ。

ボスは何度か瞬きをして、目の前にある俺の顔をじっと見つめ
た。まるで、幽霊でも見るような表情で。
だから俺は、ボスの顔を両手で包み、顔を近づけた。
「俺ですよ、ボス。生きてますよ。」
抱きしめると、ボスの口から安堵の息が漏れた。
ボスが俺が生きている事に、心底喜んでいる事が伝わって来
た。至近距離のボスの身体は、血や硝煙の臭いに混じって、甘
い石鹸の香りがした。
「良かった。俺は、お前を殺してなかったんだな。他のやつら
は・・・。」
「ここに来る途中、レッドファーン、コクール、ラコアの遺体
を見つけました。部隊は崩壊です。島を脱出脱出しましょう、
ボス。この怪我じゃ、もう戦えません。」
俺はボスの目を見つめながら、ボスが首を縦に振ってくれるこ
とを願った。ボスが決して、任務を途中で放り出す様な人間で
はないと知りながら。
「・・・頼みがある。脱出する前に、行かなきゃならないとこ
ろがあるんだ。」

俺達はオーキッドと呼ばれる温室の様な場所に戻っていた。
俺はボスに肩を貸しながら、ゆっくりとした足取りで進んでい
た。その間も、ボスの脇腹の傷からは血が流れ続けた。
ベンジャミン・ライナスがそこにいるらしい。
ひょっとして、ボスに大怪我を負わせたのは、あのベンジャミ
ン・ライナスだったのだろうか。しかしその問いに、ボスは少
し笑いながら首を振った。
「サイードと言ったか。あれは・・・いい兵士だ。」
ボスがつぶやく。
スコットランド訛りの英語を喋る男と共に船にやって来た、小
柄だが逞しい体格をした、ハンサムなアラブ系の男の名だっ
た。その男は我々と同じ、死地を経験した事のある兵士の目を
持っていた。
ボスは自分に致命傷を負わせた敵を憎むどころか、感心してい
る様だった。
前々から気付いていたことだったが、ここに来て俺は確信を
持った。どうしてだか分からないが、ボスは生への執着が薄
い。俺達の事になるとあれほど必死になるボスは、自分の事に
なると全く持って疎かった。

オーキッドにたどり着くと、ボスは壁に寄りかかりながら、荒
い息を繰り返した。
刺されば傷から流れ出した血は、ミリタリーブーツまでぐっ
しょりと濡らしていた。
足に力が入らないらしく、小刻みに震えていた。
もう戦うどころか、立っていられる状態ですらなかった。元々
薄い色の顔は失血により真っ青で、唇も色を失っていた。
「・・・オマー、頼みがある。」
「何ですか?ボス。」
気力だけで立っているボスを見て、俺はもうボスの為だった
ら、なんだってやるつもりだった。あのアフガニスタンのシャ
ヒード達の様に、爆弾を巻いて飛び込めと言われたら従うつも
りだった。
何よりも、このままボスを死なせたくは無かった。ボスが死ぬ
なら、俺も死にたかった。
「最初にここに来たときに、一人乗りの脱出艇を、島の反対側
に残しただろう。あれで、お前はここから脱出しろ。」
それは、俺が一番聞きたくない言葉だった。

ボスは自分の首から下がるドッグタッグを外して、俺の胸ポ
ケットに差し込んだ。
「お前の任務は、ここで終わりだ。後は俺の仕事だ。」
ボスの顔が、戦場での冷酷な殺戮者の表情ではなく、普段の、
穏やかで静かな表情に戻った。
「お前と一緒に戦えて、良かった。ありがとう。」
それから、ボスが激しく咳き込む。口元から、血が流れた。
しかし倒れこむことなく、ボスは壁のスイッチを押した。
扉の向こうで、何かが動く音がした。古いエレベーターの音
だった。
「いやですよ!何を言ってるんですか!皆死んだのに、ボスを
見捨てて、俺だけ逃げられるわけないでしょう!」
壁に手を付いて、身体を支えながら、ボスは装備を外し始め
る。もう体力は限界だったから、重い銃や無線、手榴弾等を見
につけたまま、戦うことは出来なかった。

「オマー。これは、頼みじゃない。命令だ。」
迷彩服と防弾チョッキだけになると、ボスは再び俺の方にブ
ルーの目を向けた。
「お前は俺と違う。お前には、まだ人生がある。両親もいる。
脱出しろ。生きて帰還するんだ。」
その言葉で、俺は気付いた。
ボスが、どうしてこんなにも、俺達の事を気遣うのか。
ボスがどうして、決して自分の人生を語ろうとしないのか。
ボスに取っては、俺達と過ごす時間だけが、人生だったのだ。
俺達は好奇心から、ボスの人生を色々を詮索したが、ボスは何
も持たない人だったのだ。
ずっとずっと若い頃に、全てを失っている人だったのだ。
生まれた祖国には、もう何も残っていなかったのだ。だから戦
場に固執した。そこで名も知れず、死んでいく事を望んだの
だ。恐らくその死に気付き、弔ってくれる者すら持たないのだ
ろう。
ボスには、俺達だけだったのだ。
だから、自分が死んだとしても、俺達の事を生かそうとしてい
たのだ。
何も持たない自分に比べて、俺達が色々持っている事を、知っ
ていたからだ。
そして今日、ボスの全てである部隊を失った。だからせめて、
生き残った唯一の部下である、俺のことを死なせたくはなかっ
たのだ。

俺はボスから、離れたくなかった。
ボスが死ぬのなら一緒に死にたかった。
だけど、ボスの気持ちに気付いてしまったから、もうボスに逆
らうわけには行かなかった。
俺は、ボスの為に生きなくてはならなかった。ボスがこの世界
に存在した事を覚えているのは、ボスがどんなに素晴らしい人
だったかを記憶しているのは、もう俺だけだったから。
だから俺は、ボスの為に生き延びなくてはならなかった。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

場所の提供と皆さんのご清読に感謝致します。ありがとうございます。
明日にはちゃんと終わりますので、もう少々ご辛抱頂けたら幸いです。

  • 感動しました! -- 2011-05-05 (木) 09:09:26

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