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野球 球団マスコット 北熊BB←ドアラ

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       ─ キミはいつも遠くを見ている ─

ボクらのいるプ口野/球界が激動の渦に巻き込まれていた年、
その年の5月の風の強いある日、キミとボクは、ある地方都市の競馬場で出会った。

はじめてキミを見た時は、その見た目のゴツさと、やけに漂う風格に驚いたよ。
「やぁ。はじめまして」
爽やかな笑顔で手を差し出すキミと、ちょっとドキドキしながら握手したのを思い出す。
こちらの手が痛くなるくらい、力強い握手。

その日は僕たちが出演する、あるテレビ番組の収録が行われていた。
益子ット達が集まって、誰が一番速く走れるのか競争する番組。
さぁ撮影開始というギリギリになって、今さらスタッフの間で番組内容についての言い争いが始まった。
プ口野/球界の混沌をそのまま縮小したような、その喧々諤々のやりとりを彼らが繰り広げている間、
ボク達はやる事がなくて、ただ所在なげにその辺で佇んでいるしかなかった。

そんな中、キミはみんなから少し離れた柵にもたれて、
これからボク達が走るダートコースの様子をチェックしていたね。
そこにいた、たくさんの益子ット達の中で一番の新顔だっていうのに、
まるでもうずっと前からこの世界にいるかのように、とても落ち着きはらっていて、
時々こっちを向いては、半分呆れたような顔をして騒動を眺めていたっけ。

やっとスタッフの話し合いが済んで、みんなが「一番速いのはキャラ的にB/Bだろう」なんて、
勝手な予測を言い合ったりしはじめたけど、キミはそれで別に舞い上がるでもなく、
ただ口の端で静かに笑って、黙々とアップしているだけだった。
後で聞いたら、本当はとても緊張していたらしいけど、
少なくともボクには、あの時のキミはものすごく冷静に見えた。

その後すぐに分かったキミの尋常ならざる足の速さも含めて、
その日以来、キミはボクにとって、気になって仕方が無い存在になったんだ。

ボクが交/流戦でお邪魔した時、キミは決して「勝手にやって下さい」なんて言わない。
ボクの為の演出を考え、ボクの分の服や小道具を用意し、ボクの出番を作ってくれる。
キミがいつも使っている部屋の、キミがいつも座っているイスのすぐ隣に、
当たり前のようにボクが休むイスを用意してくれる。
並んで座って、仕事の打ち合わせ、お互いの悩み、面白かったことやこれからのこと、たくさん話をしたね。
仕事が終われば、キミの住む札ポロの街を案内してくれる。
とびっきりのジンギスカソ、甘~いコーンが食べられる店に連れて行ってくれる。
決してボクを、1人で放ってなんかおかない。
まるで特別なゲストのように扱ってくれて、ボクはとても感激したんだよ。

札ポロドームでボクがお客さんからボコボコと殴られていた時、キミはとても腹を立てていた。
仕事をしながらも、殴っているお客さんをなんとか止めようとしていた。
「大丈夫か?怪我は無いか?二度とこういう事が無いように気をつける。本当に申し訳なかった」と、
自分が悪いわけじゃないのに、ボクに頭を下げてくれた。
これは恥ずべきことであると、二度とそういうことをしないでくれと、自分のコラムでお客さんに訴えてくれた。
でもそれで、客に説教するとは何事かと批判をあびたりしていたね。
本当なら、殴られたボクが怒るべきなのに、ビジターとはいえボクに起きた問題なのに、
キミは何もしていないのに、ボクの代わりに怒ってくれてしまったから。
ごめん。でも、人の為に怒れるキミは、すごくカッコイイと思うんだよ。

ボクは、今目の前にある課題、例えば今日はバック転を上手く飛べるだろうかとか、
そういう事を1つ1つこなすので日々精一杯だけれど、キミはいつも、もっとずっと先を見ている。
今だってびっくりするぐらい、キミはとても熱心にファソサービスとは何かを考え、
毎日休む間も無いくらい働いているというのに、まだ足りない、もっと出来ることは無いかと模索し続けている。
ボクは今日もキモイとか言われたし、意志黒さんにも「B/Bを見習え、盗めるところは盗め」と説教されたんだよ。
だけどそんなボクを初めて見た時、キミは「衝撃を受けた」と言ったね。
「あんな益子ットもアリなんだ」と、「目から鱗が落ちた」と。
ボクの個性を、アリだと言ってくれて、認めてくれてありがとう。
同じ仕事をしている、真っ向正統派を貫いている、そして多分、誰よりも益子ットという職業を愛しているキミに、
認めてもらえて、ボクは本当に嬉しかったんだよ。

今年もまた、ナゴ屋にキミがやってきた。
バックネットの下、関係者用の通路からグラウンドに入ってすぐのところに、
相変わらずキミは凛々しく、すっくと背筋を伸ばして立っている。
お客さんで段々埋まっていくスタンドを、気持ち良さそうに眺めている。
「やぁ」
と、少し遠慮がちにその背中に声をかけたら、ゆっくり振り返ってキミは笑った。
「やぁ!今日から2日間、世話になるけどよろしく!」
こちらこそどうぞよろしくね。
キミとまた一緒に仕事ができることを、ボクはとても楽しみにしていたんだよ。

それからボク達は、ついこの間発売になった、ある週刊誌の話をした。
多分初めて、ボク達益子ットをトップで大々的に特集してくれた週刊誌。
お互いにひとしきり感想を言い合った後、真面目な顔でキミが言う。
「僕達益子ットがあんなに大きく取り上げられるなんて、嬉しいね。
・・・キミが有名になって、人気が出たからかもしれないね。
キミが頑張ったから、ド荒のおかげだよ。ありがとう」
突然褒められて、ボクは目を丸くした。
そんなこと無いよ、ボクだけの力じゃないよ、B/Bだって、と言おうとしたところで、
スターティングメソバーの発表を告げる音楽が鳴り響く。
キミは自分の青いグローブとバットを拾い、開いている手で軽やかにボクに手を振って、
そしてご自慢の俊足で、まるで風のように外野スタンドめがけて走っていった。

だんだん小さくなっていく 2 1 2 の背番号にボクは問いかける。

キミとは何度も会う機会があって、一緒にたくさん仕事をして、
今では随分と親しくなれたと思うけど、キミはどう思う?
今ではイチイチ打ち合わせしなくたって、阿吽の呼吸で一緒にパフォーマンスできるよね。
いろんな人から絡み辛いと言われるボクだから、
一生懸命構ってくれるキミには、本当に感謝しているんだよ。

あっという間に交/流戦が終わり、夏が過ぎ、秋がきて、
ボクのチームはなんとかギリギリ、C/S出場を決めた。
ある日スタッフから、新聞に載せるコラムを書くように言われたボクは、
何を書こうかとPCの画面の前に座って、ふとキミの広い背中を思い出した。
キミのチームも3位だから、ギリギリでのC/S出場だったんだね。

キミは、パフォーマンスの質が落ちるならパートナーはいらないといつも言っているけれど、
キミとボクが競演する時は、ボクはキミの認める最高の相方になれればいいと思う。
キミと他の誰かでもダメだし、ボクと他の誰かでもダメで、
キミとボクの2人の時こそ、誰にも負けない最高のパフォーマンスができたらいいと思う。
そうすれば、ボクを気にかけ、認め、褒めてくれたキミの気持ちに、少しは報いることができるんじゃないだろうか。

そしていつかボクが、キミにとっての特別な存在になれた時。
お客さんで埋まったスタンドの、あのざわざわとした景色を通して、
あの時キミが見つけようとしていたものを、ボクも見つけられるんじゃないだろうか。
いつも遙か遠くを見つめているキミと、同じものを見ることができるんじゃないだろうか。

だからもっと一緒に仕事をしよう。もっともっといろんな話をしよう。
またキミに会いたい。追いつきたい。そしてキミの隣に並びたい。
願いを込めて、ボクはコラムを書きはじめた。
『なんだか、とんでもないことが起きそうな気がしてきましたよ』

とんでもないことが起きる・・・。
もうちょっと先、これから、ボクもキミも気付いていない心の奥で、何かが起きる。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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