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野球 埼玉西武ライオンズ2747

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
熱戦中に失礼します。今日はゲームがないので、閑話休題で。

疲れてるだろ、と言われればその通り。左肩を上げ下げするのも億劫だ。
緊張したのか?と問われればイエスかノーかよくわからない。途中から、投げることしか考えられなくなった。
それはいい意味でも悪い意味でも、余裕が無かったってことなんだろう。それはわかる。
流れを考えられるほどに、余裕は無かった。良くも悪くも、お前のミットしか見て無かったよ。
けれどそれを伝えるために待っているわけじゃない。そう穂葦は思っている。
疲れてるからだ、と単純に思っている。自分で運転するのも嫌だし、歩くのすら面倒だ。
ぶっちゃけて今回の自分はイーブンだ。よくも無けりゃ悪くも無い。
だからただ残ったのは、とんでもないこの疲労。
明日はやっとの休みだというのに、いつもなら乗っかっていける後輩たちは、もうさっさと王求場を後にしている。
言葉少なな奴もいた。やっぱりサ∃ナラは、されるほうはやっぱり嬉しいもんじゃない。
あーあ、と穂葦は息を吐いてべったり床に座り込む。目の前のミ一ティングルームの扉は、まだ開かない。

しんしんと床の冷たさが手のひらと、シャツ越しに腰のあたりに忍び込む。
多分残っているのは、もう自分ひとりだろう。この中のあいつを除いては。
「…」
肩がだるい。投げた数以上に、そして脚が重い。
息が浅い。まだ体が現実になじまない。
黙っていると息苦しくなって、時折意味なく深呼吸してしまう。肺も固いのか、そんな気がする。
静かなのか、耳が聞こえていないだけなのか。
もしくはあんまり聞きたくないだけなのか。
そうは思いながら、でも俺はまだマシなんだと思う。明後日のことを考えなくてもいいからだ。
俺が考えるのは数日後の未来のことで、お前は多分ついさっきの過去から、明後日から、だから今も、考えてる。
考えて考えて、だからまだ出てこないんだろう。
わかってんさ。
俺は誰より知ってんさ。
「…っは」
穂葦はまた大きく息を吸って吐いた。少し冷たい空気が体に入ってくる。
がちゃりという音がした。扉が開いたな、と思ったけれど面倒で、疲れていて、そのまま目を閉じていた。
だからじっとしてんだ。踏み込まない。
俺からは踏み込まない。
「…何やってんの、お前」
案の定と言うか予想通りというか、気の所為か少し固い糸田川の声がする。

わんわんと、思った以上に無人の廊下にそれは響く。コンクリートの壁に染みる。
かたんと後ろ手に扉を閉めた音。中にはまだ、缶得とかコ一チがいるのかな。
そして不機嫌そうな息の音。
「…つっかれたんで、お前待ってた」
「だから何で」
「腕動かんからよ、送って」
「車どうすんだよ」
「また取りに来るから」
薄く目を開ければ、これも思ったとおりで、まだ糸田川は真っ青なアンダー姿のままだ。
手にあれやこれやの書類とかノートを持って、ゴツい指で頬を掻いて、不審そうにこちらを見ている。
それには配王求だとかデータだとか、多分細かく書き込まれては、さらに幾つもの付箋がついてさらに厚くなっている。
現在進行形で厚くなって、意味を持っているそれを見て思う。わかってんさ。俺は、誰より。
お前の頭ン中くらいは。
「…いいけどよ。俺着替えるから、まだかかるぞ」
「おー。構わん構わん。待ってっから」
「変な奴だな、疲れてんだろうに先に帰れば?」
「だから、動くのも面倒なのよ!」
疲れすぎだろ、と今度は苦笑いで、思ったより優しい声になった。ほら立てよ、と腕を引っ張られる。
穂葦はそのままよろけた勢いで、糸田川の肩にしがみつく。耳元で言う。

「なあ」
耳にゆっくり言う。後頭部が少し見える。
目の前の扉の中には、まだ誰がいるんだろう。
「…おい、自分の足で立てよ、穂葦」
「明日休みだろ」
「練習は、あるだろ」
「いいから、送るなよ」
衝動が抑えきれない。考えれば考えるほど、自分の中で鎌首をもたげる。
俺を見ないでお前が何か考えているときの、その頭の中くらい、誰よりも知っているが。
知っては、いるんだが。
「なあ」
これは衝動だ。もうそうとしか言えない。糸田川の耳に言う。
もしくは喰らいたいという貪欲だ。
誰を攻めるか、どう引きずるか、次に何を見せるか、そんなことの類は、お前の領域だ。
膨大なデータと、個人の性格が交じり合ってる生き物だ。そんなのは百も承知。俺はそれを信じて、ミットしか見ない。
糸田川の体は固い。顎を乗せているこれまたごつい肩の、アンダ一越しの筋肉から、拒否に近い他人行儀な固さが伝わってくる。
そこに穂葦はわざと、頬を埋めて呻く。
「送るなよ、お前」
単純に言えば、一発抜いとけ、そしたらもうちょい、気楽になるんじゃねえ?という考え方。
どうせお前、サ∃ナラで打たれた球のこと考えて、それを含めて明後日のこと考えて、明日一日潰すんやろ?

ああ、そう言えればどんなにいいか。その程度だったら、どんなに楽か。俺もお前も。
だけどちょっと違うんだな、と穂葦はわかっている。
「…」
糸田川の無言の息の音を聞きながら、穂葦は考える。
手に持っているノートが震えているかもしれない、とも思う。
悩んでるし考えているだろうこと、しかし糸田川のその部分を、誰よりも知っているけれどだから踏み込まないと、不文律のように決めている。
決まっているし決めている。
それを例え貪り食いたいと思ったとしてもだ。
こんな風に、その衝動がどうにもならなくなったとしても、だ。どんなときでも。
真理に近い。肌に爪を立て、髪を握り締めるとき、その最中であったとしても、絶対ってことがある。決まっているし、そう決めている。
知っている、だからこそ喰らいたい、そんな衝動だが。
だけど、そこはお前の領域だ。だから俺は、絶対に踏み込みゃしない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
2747で47視点で。
×テリーは複雑だ。


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