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盲目の赤

もとねたあるにはあるけど完全捏造です、が、一応、なまダメな方はスルーしてください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

あと何年あるのか、無意識におわりを数えるのは、もう癖になってしまった行為で、
それもこれも、あのひとが口癖のように言い続けているのがいけない、と、思う。

戻ってきた部屋はひどく広々として静かだった。
自分の呼吸が響き、道具を置いた小さな音さえ波紋のように広がる、この時間は嫌いじゃない。
毎日毎日、場所と時間が変わりはするものの、
ある種とても単調な生活の繰り返しだった。
殻だけになった自分にまた魂を詰め込んで、明日も明後日も力の入らなくなるまで走り抜けて、
くたくたになって部屋に帰ればあとは泥のように眠るだけ。
十数時間後には、疲れが取れていなくても身体中が痛くても、誰もがこの場所に戻ってくる。
傍から見れば馬鹿げているのかもしれないけれど、
それを心底楽しめているのだから自分たちはとてもしあわせだ。

この場所へ飛び込んで、いちばんはじめに出会えたひとがあのひとだったことは、
自分にとって人生最大の幸運ではなかったかといまでも思っている。
かけられる言葉ひとつひとつが新鮮で、毎日が高速で過ぎ去っていく。
あのひとがくれる知識も情熱も、なにひとつ零れ落ちてしまうことのないように、
すべて吸収していこうとしているのだが、ただ、それには自分の容量が明らかにたりない。
思い通り動かない身体も、袋小路にはまる思考も、
なにもかもあのひとの要求する水準には届かない、実力がたりない。
そして本当に、時間が、たりない。

秋が近付くにつれ、あのひとがおわりを口にする数が増えていった。
ひとりごとのような発言を拾い集めては、周囲が煽るように憶測を重ねては騒ぎ立てる。
その根拠のない噂を聞く度に一喜一憂を繰り返した。
どれだけ自分があのひとを頼りにしていたのか、
わかってはいたつもりだが、改めて晒されてしまった気分だった。
情けないのとは、またすこし、違う。
あのひとに失望されやしないかと、そればかり。

自分があのひとに対して、
萎縮しているだのなんだのと批判する者がいることは知っている。
そのことを全面的に否定する気はないが、
きっと彼らはあのひとの存在の大きさを理解していないのだろう、と思う。
同じ肩書をもらうのにも申し訳ないほど偉大すぎるあのひとの傍らで、
なにも感じないわけがなかった。
そんな単純なことすら想像できない、
貧相な想像力を持った彼らになにを言われようと気にならなくなるまで、
大した時間はかからなかった。
気にするべきことはそんなことではない、自分のやるべきことをやればいいだけだ。
評価はかならず形になって表れる。
取捨選択が大切だと言うが、今の自分は、
他人に百褒められるよりもあのひとに一叱られる方が何倍も嬉しくて有意義だ。

あのひとが居てくれるのはあと何年? あと何ヶ月?
いつかおわりが来るものなのだと、わかっていても、縋り付かずにはいられない。

誰もが認める歴史を築いてきたあのひとの背中は、はるか彼方、
いま自分のいる場所からは影を捉えることすらできない高い高い位置。
どっかりと構えて、いつもの不敵な笑顔でこちらを見下ろしているんだろう。
その背中に輝くあのひとの象徴を、実力で奪い取りたい、自分のものにしたい、
あの日宣言した目標は、冗談でもなんでもない本気で、今でもずっと思っていることだ。
あのひとはわすれてしまっているかもしれないけれど、
いつか認めてほしい、おまえにと言ってほしい。
だから早く、早く、はやく。

あなたのようになりたいのだと自分が告げたら、笑うだろうか。
あのひとは喜んで、くれるだろうか。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

sage忘れたり時間かかっちゃったり、申し訳なかったです。


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