RD 潜脳調査室 久島×波留
更新日: 2011-01-12 (水) 00:11:49
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
R/D/潜/脳/調/査/室 久/島×波/留。50年前。
シャワーを浴びる事で、私の身体からは情事の汚れと熱とが流されてゆく。私は広くはないユニットバスの壁に手をついてうな垂れ、シャワーヘッドから降り注いでくる湯を頭や背中に浴びていた。
薄汚れた排水溝に流れ込んでゆく泡交じりの湯を眺めやる。全く私は一体何をやっているのだろう。自問してしまう。
後悔だか逡巡だか自分でも良く判らない感情には、長々とは浸らない。排水溝に流れ込む湯に白い泡が見当たらなくなった時点で、私は蛇口を捻った。シャワーから湯を止める。
カーテンを開けた向こう、洗面台に引っ掛けてあるバスタオルと掴んである程度の水分を身体から拭き取ってバスタブから上がる。
短い髪はタオルで掻き回してしまえば適当に水分が抜けてゆく。それでも前髪から垂れてくる水滴が鬱陶しい。脱ぎ捨てていたスラックスを履いた後、暫く鏡と向き合って髪を拭き上げた。
もう髪から水滴が垂れてこない段階に至ったと感じた時点で、私はシャツを羽織る。上部2,3個のボタンを開けた状態で、他のボタンはきちんと閉めた。
バスタオルを洗濯籠に放り、別のタオルを手に取る。首筋にそれをかけ、髪から僅かに伝ってくる水滴を留めるようにする。前髪を掻き上げ、手櫛で適当に整えた。本来ならばドライヤーできちんと乾かしたいが、今は置いておく。
日本ではない場所だからか、そこまでランクが低い訳ではないホテルであっても室内の扉の建て付けは少々悪い。ともかく私はノブを掴み、捻り上げた。
軋んだ音がして抵抗を覚えるものの、開かない訳ではなかった。ユニットバスから出て、短い廊下の向こうにある室内に視線をやる。
天井にある室内灯の灯りは通常の状態で、夜の部屋を照らし出していた。逗留先としているだけあって内装は簡素で、ベッドの他には壁内蔵のクローゼットと、壁に張り付いている机と椅子と小さな棚程度しかない。
そのベッドの中では、黒髪の男が収まっていた。うつ伏せになって枕を抱くように縮こまって、どうやら眠っているらしい。
シーツを肢体に絡み付かせてはいるが、その逞しい身体を全面に覆っている訳ではない。露になっている腕や肩のラインが美しい。筋肉の着き具合で考えたならば、男としては理想的な身体ではないだろうか。
「――おい」
私はベッドサイドまで足を進める。彼を見下ろし、呼びかけた。若干不機嫌な声を出してやる。
「ここは私の部屋だ。寝るな」
返事はない。そもそも、動きもしない。
その状況に、私は溜息をつく。上体を曲げて彼を見やった。その黒髪は後ろで纏められているものの、現在では乱れてしまってゴムは引っ掛けられている状態になってしまっている。
その解けかけている黒髪が首筋に掛かり、そこに残された紅い痕を隠していた。…と言うか、痕を残してしまっていたか。まあ、構うまい。
私はベッドに突っ伏している彼の横顔を覗き込んだ。彼はそこに弛緩しきった表情を浮かべ、瞼を伏せていた。その口許からは穏やかな寝息を立てている。
そっと、目許に掛かる前髪を指先で掻き上げてやる。頬が少し濡れているのは、汗や涙だろう。形のいい唇からは、つい先程まで、熱い吐息を漏らしていたはずだった。
そんな風に私は彼の寝顔を眺めていた時だった。不意に私の下で、彼が身じろぎした。口許から声を漏らし、顔の向きを変える。うっすらとその瞼が開かれた。
私はその様子を見ていた。不思議そうに私を見上げるその瞳には、徐々に焦点が合ってくる。段々と自分が何を見ているのか、脳が認識を始めているのだろう。
やがて、彼はにっこりと微笑んだ。私を真っ直ぐと見上げ、言う。
「――おはよう」
「…ああ」
何処となく能天気なその声に、私は静かに答えた。こちらは笑いの成分を何も含ませない。前髪を弄んでいた指先を彼の額からゆっくりと上げてゆく。
「やっと起きたのか」
「んー、何か首筋に冷たい感触がしたから」
「何だそれは」
彼の笑顔と暢気な声に呆れつつ、私は前髪を掻き上げた。――と、そこがまだ水分を含んでいた事に気付いた。流石に派手に垂れてくる事はないが、時間を置いたら水滴が溜まる程度には。彼の首筋に、ここから水滴でも落ちてきたか。それに気付く。
しかし、そんな事は彼には言うつもりはない。私は曲げていた身体を起こした。彼を上から見下ろす格好に戻る。
「ともかく私のベッドを占拠しないでくれ。さっさと帰って自分のベッドで安らかに眠れ」
そう告げ、私は片手を横に振った。出て行けと言わんばかりの(いや、実際にそう言っているが)態度を取る。そんな私に対し、彼は笑みを漏らした。仰向けに寝転がり、自分で前髪を掻き上げた。
「酷いな。性欲処理が終わったら、俺は用済みか」
「そう言う事だ」
「こう言う面でも人遣いが荒いな」
澄ました態度を取る私に、特に傷付いた様子もない。笑って彼は上体を起こした。頭に手をやって顔を何度か横に振る。
「俺の服は?」
「そこにあるが」
問われて私は壁を指し示した。備え付けのハンガーに彼が纏っていた黒シャツやジーンズを掛けておいた。勿論、事が終わった後に、私がそんな風に世話してやった訳だが。
と、彼は私に向かって右腕を伸ばした。私は何を求められているのか判らず、彼の顔を見ていた。
「服、渡してくれよ」
「…シャワー浴びてからで良かろうに」
「いや、自分の部屋で浴びるから。早く出て行ってやるよ」
――普段は図々しいくせに、妙な所で遠慮する奴だ。まあ、そうしたいのならば、それでいいだろう。私は壁際まで足を進めてハンガーを手に取り、ベッドサイドに戻ってくる。彼に手渡した。
彼は微笑んで頷く。黒シャツに腕を通し、羽織る。筋肉が均等についている美しい身体を覆い隠す、いつもの服装だ。
それから身体をずらしてベッドに腰掛ける格好になり、足を投げ出した。そこにインディゴブルーのジーンズを通してゆく。腰まで引き上げる。
服を纏った後に、彼の手が自らの髪に伸びる。そのまま後頭部まで撫で上げた。指が髪の合間を縫い、解け掛かっているゴムに行き当たる。
「あー…解けてる」
「そのまま寝ていたからな。当たり前だ」
寝ていれば無意識に身体を移動させてゆくものだ。結び目を下敷きにすれば、そうなって当たり前だった。ところが彼は私を見上げ、にやりと笑ってみせて言う。
「お前が俺に圧し掛かってがんがん突きながら、ついでに髪も掻き回してくれたしなあ」
「それ以前に君が私の上に乗っかってた時に、腰を揺らしながら自分で掻き回していただろうが」
「…そうだっけ?」
私の反撃の言葉に、彼はきょとんとしていた。…私がやった事については元来の記憶力を発揮するくせに、自分でやった事は覚えていないのか全く。
この分では、自分がどんな顔をして、どんな鳴き声を上げて、私と寝ているのか。その辺をちゃんと理解しているのかも怪しいものだ。
彼が私の上に跨ってがくがくと揺れ、それに合わせて声を漏らす。堪えるように顔を振り、片手で頭を抱えるように髪を掻き上げ、徐々に大きく掻き回していた。
時折喉を反らし、空気を求めるように喘ぐ。そんな風にして、彼が自らの欲求に任せて腰を揺らしている。
私はその腰に両手を伸ばして支えてやっているが、ゴム越しであっても繋がった下半身に伝わる衝動は物凄く、視覚や聴覚に伝わる行為でそれが増幅されてゆく。
そうなるとこちらとしても堪らなくなり、軽く突き上げてやると彼は鳴き声に紛れ込ませつつも切羽詰まった声で私の名を途切れ途切れに呼ぶ――…思い返すだけでも淫蕩な光景だと言うのに。
そう言うものを体験させられたら、私としても彼を引き寄せて倒し、そのまま唇を奪って圧し掛かるしかなかろう。それが昂った性欲と言うものだ。
そう言う私の心中のぼやきなんぞ、彼は全く知る由もない。手探りで後ろ髪の髪留めのゴムをいじっている。手で覆うようにして掴み、無造作に引っ張ろうとしていた。
が、その時、痛みを訴える声を口許から漏らしていた。顔が歪む。
見るとゴムに髪がしっかりと絡みついている。これではゴムを引いても、絡まった髪がゴムを離してくれないだろう。
「――これでは駄目だ」
私は溜息をつきつつそう言った。彼の前に立つ。両手を彼の手元、後ろ髪に伸ばした。
「何だよ」
「私が解いてやる。大人しくしていろ」
言いながら私は視線をそのゴムへと固定する。ゴムが4重程度の輪を形成して髪を止めていた訳だが、今ではそれがずれてその合間に髪の束が挟み込まれていた。
確かに私が彼の髪を掻き回した事は事実であり、この状態の責任の一端は私にもある。だからと言う訳でもないが、私は慎重にゴムを摘み上げる。絡み付いている髪を指で弾き、どうにか抜き取ってゆく。
ある程度ずらして解いた段階で、その輪をゆっくりと髪から抜く。そうすると残っている輪の部分にも余裕が出来てくる。
たまにゴムがぱちんと音を立てるが、基本的には静かだった。彼も黙って私の作業を受け容れている。
手元に余裕が出来た事で意識が反れ、彼の横顔に視線がゆく。酷く美しい顔でもないが、充分に好感が持てる顔だ。その醸し出す雰囲気から、女性に人気があるのも頷ける。
しかし、彼は公私共に私に付き合ってくれている。とりあえずは、今の所は。
仕事では人体実験紛いの行為までやってくれた上、プライベートでは私に身体を許してくれている。どちらも私が迫り、それらを彼が受け容れてくれた結果だ。
しかし、何時までそんな状況が続くのかは、私には全く判らない。
どちらも、それを打ち切る主導権は彼にある。私には彼が絶対に必要だが、自由奔放な彼にはどうだか判らないのだから。
色々考えつつも作業は滞りない。早い内に私はゴムから髪を開放していた。私の手の中に黒いゴムが残り、それを手首に引っ掛ける。彼の割合長い髪が肩まで降り、首筋を覆い隠した。
解いてみたら結構癖っ毛なもので、あちこちで髪が跳ねている。おそらくこの状態では彼だと気付かない同僚も居るような気がした。
その辺りからも私の虚栄心は満足する。何も寝るまでもなく、彼のこんな姿を知るのは私だけなのだと。無論、寝ているのも私だけだろうが――多分。絶対と言い切れないのが、彼と言う存在だ。
彼は微笑んで私に手を差し伸べる。全く私の考えなど知る由もないだろう。
「ゴム、返してくれよ」
言われた私は彼に視線をやった。すぐに要求に応える事はしない。何となく、出来なかった。普段見る事がない彼の姿は新鮮で、目を奪われる。
彼は首を傾げ、怪訝そうな顔をする。私の前に来ている日に焼けた手が、所在無げに広がっていた。
衝動的に私はその手を強く掴んだ。そのままその手を引き寄せると、引き摺られるように彼の上体も私の方に来る。
バランスを崩した彼に被せるように、私は唇を奪った。舌先でそのまま押し割り、舌を侵入させて彼のそれを絡め取る。彼の口から一瞬驚いたような怯んだような声が漏れたが、私はそれを飲み込んだ。
掴んだ彼の手が強張っていた。しかしそれもすぐにほどけてゆく。私はそれを見計らい、ゆっくりと指を絡めた。掌を重ね、お互いの指の感触を確かめ合う。やんわりと擦れる掌の感触に震えを覚えた。
舌が絡み合う口許からはねっとりとした感覚がする。敏感な粘膜から相手の体温を感じ取る。その口を吸い上げ、舌先で内部を突付いた。
自由な手が彷徨い、彼の首筋に触れる。そこを撫で上げると彼が震えるのが伝わってきた。張り詰めた感触がする。
そのままその手を後ろに回し、彼の後頭部に差し込んだ。すっかり解けていた髪を梳る。――結局私は、彼にこうするのが好きらしい。
私の背に軽い圧迫感と暖かさを感じる。どうやら彼の腕が回されてきたらしい。私は自分同様に、彼にも好きにさせた。
指を立てて背中を這い回る手の感触がする。肩の周りを撫で上げられ、不意に首周りに空気が触れた。そこにかけておいたタオルを落とされたらしい。
指の間に入り込んでくる髪の感触を味わいながら、私は口付けを続けていた。時折呼吸をつくと、どちらともなく合間から吐息が漏れる。しかしすぐに角度を変えて互いに唇を重ね、味わっていた。
そうやって、どの位の間、唇を重ねていただろうか。
私はようやく顔をゆっくりと上げていた。彼の口許から舌を引き抜いてゆくと、唾液が僅かに糸を引いていた。そこに溜息のような息が漏れる。
彼の後頭部に手を回したまま、私はそのまま彼の顔を見ていた。濡れた唇に色気が溢れている。口許からちらつく赤い舌が悩ましい。彼の手が私の背中を滑り落ちる。その掌の熱さがシャツ越しに感じられた。
重ねた掌を、ゆっくりと解いた。汗ばんだ感触がする。それから私は彼の頭から手を離した。さっと髪を掻き上げてやる。彼はそんな私の様子を見上げていた。
「…何だ?」
「いや、もう1回やるのかなと思ったんだけど」
「君はどうだか知らないが、私にはもうそんな元気はない」
「じゃあ泊めてくれないのか、やっぱり」
「君にもこのホテルに部屋は割り当てられているだろうが」
「そうだけどさ」
言いながら彼は自分で頭に手をやって撫で上げていた。ベッドから立ち上がる。口許に手の甲をやり、濡れたそこを拭った。
彼は無言でまた私に手を差し伸べる。私はその掌の上に、黒いゴムを落とし込んだ。彼はにっこりと笑ってそれを受け取り、指を曲げて握り締める。
「じゃあ、また明日」
「ああ。仕事に支障が出ないように休んでくれ」
彼は私に笑い掛けそう言い、私もそれに応じた。
それは普通の挨拶だった。1時間ほど前には身体を、そしてつい先程には唇を重ねていたとは思えない程に、自然な。
結局彼は髪を纏め直さずに部屋の出口へと向かう。肩まで伸びている後ろ髪が、彼が動く事で微かに揺れた。私は彼の背中を視線で追っていたが、それは扉の向こうに消えていく。
そう言えば、結局彼の首筋に痕を残していた事を告げていない。まあ、いいか。明日にでも目敏い同僚が彼をからかうかもしれないが、私は涼しい顔をしておこう。
それにしても。彼にはもっと愛情を込めて接すればいいのだろうか。抱いておきながら、このようにぶっきらぼうに接するのは、何か間違えているだろうか。
そんな風に接しても彼は全く気にしてはいないようなので、ついそうしてしまう。男同士だと言うのに何の葛藤もなく、当初から本当にあっけらかんとベッドに付き合ってくれるものだから。
経験の有無以前の問題として、容易くラインを乗り越えた様子から、彼は友情と愛情の区別を全くつけていない風だった。彼に無理を強いている私としてはそれでいいのかもしれないが…。
しかし、では具体的にどうすればいいのか。私にはその方法が全く判らなかった。何せ、他人をこれほどまでに必要とした事など、今までなかったのだから。
この執着を愛と呼ぶべきなのかも判らなかった。彼と身体を重ねるのはこれは愛だと納得したいがためなのかもしれない。世間一般的にはそれこそが愛を確かめ合う行為なのだから。
もっと長い時間悩めば、色々と判るのだろうかと、少しだけ思う。が、時間を掛ければ判るものでもないだろうとも思っていた。
――直感的に、「私にはこの男が必要なのだ」と悟るのも、考え物だ。私は自らの感覚に、内心苦笑せざるを得なかった。
とりあえずは男の生理の哀しさか、腰が軽くなった感触に満足しておく事にしよう。そう思い、私は床に落ちていた、僅かに湿っているタオルを拾い上げた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ちょいと規制に引っ掛かっておたつきましたが、どうにか投下終了できました。
ともかく、波/留の後ろ髪は、久/島が存分にいじってやってるといいよ!
このページのURL: