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機動戦士ガンダム00捏造、俺×アンドロイドグラハム&つぶれハム(ロボ) 前編

00捏造設定、俺×アンドロイドグラハム&つぶれハム(ロボ)
長くなったので分けて投下するよね! 取りあえず前編ドゾー

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  なんかこれ似た奴前に観た事あるような‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  やっぱりキャラサロに話題持ち出しは禁止だよね!
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
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 一人暮らしの俺が、つぶれグラハムを飼い始めてから3ヶ月目にして、怪我で入院をす
るはめになり、その間の5日間つぶれの世話を、同市内に住む大叔母に頼み、やっと今朝
退院してつぶれグラハムを迎えに行った時、大叔母は心底ほっとした顔で、
「やっと出て来たのね、なんでこんなペットロボを飼う気になったのか、心底わからないわ」
 と俺に向かって言った時、やはりな、と俺は思った。正直、小一時間説教を垂れられる
覚悟で来たのだが、それだけ言うと大叔母は、専用フラッグに乗って遊ぶつぶれを呼んで、
つぶれの玩具や着替えの詰まった荷物を差し出し、早くこれを引き取って帰れと俺を早々
に追い出した。
「マスター、怪我はもう良くなったのかよ?」
 なんとも久しぶりに聞くつぶれの声は、俺に知らず知らずの内に顔を緩ませるものだっ
た。たとえ怪我の原因がつぶれの放ったグラ☆スペだったとしてもだ。
「いや、まだ左肘の骨がひびの入ったままだよ」
 尾てい骨や後頭部、顎の打撲の痛みや腫れは治まっていたが、つぶれ渾身のグラ☆スペ
を受けた時に倒れて石畳に付いた肘だけは骨にひびが入ってしまい、そこはまだギブスで
固定され動かせないでいた。
「治るのも時間の問題だよ、気にしなくていい」
「そうなのかよ? それなら私は気にしないよね!」
「うんでも左腕はまだ動かないからそれは気を付けてくれよ。それよりも、帰ったらびっ
くりするぞ」
 俺はタクシーの後部座席で、脇にちんまりと座り俺を見上げるつぶれに、興奮を隠しき
れずにそう言った。
「なんだよ? 特上マッシュポテトがあるなら私はそれでいいよね!」
「もちろん美味しいマッシュポテトもあるよ、それから、君に後輩が出来た」
「後輩かよ?」
 つぶれは不思議そうに俺を見つめた。自分と同タイプか、または他のユニオン製つぶれ
ジョシュアか、他国製のつぶれ達でも増えるのかと考えているのだろうか。
「帰ってからのお楽しみだ」
 タクシーは20分も掛からずに懐かしい我が家の前へ到着した。タクシーの運ちゃんに、
つぶれのフラッグの運搬を頼んで、俺はつぶれの荷物を片手に玄関へ向かう。俺は鍵を開
けずに、呼び鈴を押す。つぶれはやはり不思議そうだった。

今まで俺とつぶれグラハムだけで生活していた家だ、俺がつぶれの前で鍵を手に取らずに
呼び鈴を鳴らすなんて始めての事だろう。
『誰だ?』
 といきなりインターホンから低い声がして、
「俺だよ」
 と短く答えると、程なく玄関に人の気配が現れ、がちゃりと内側から鍵が開けられ、扉
が開かれた。
 重い玄関の扉の間から現れたのは、短いくせ毛を跳ねさせた金髪の若い男だ。白いシャ
ツにスラックス、チャコールグレーのシンプルなエプロンを身に着け、足下はサンダルだっ
た。そして玄関に現れた人間を映すその瞳は鮮やかなグリーン。どこからどうみても間違
いない、グラハム・エーカーだ。
 後ろからつぶれ専用フラッグを抱えて付いて来た運ちゃんを振り返れば、いきなり現れ
たエプロン姿の金髪白人にぽかんとしている。
「運転手さんすいませんが、それ、玄関の中に置いてもらえますか?」
 と話しかけるとようやく我にかえり、はいと返事をしてグラハムの手によって大きく開
かれた玄関の扉の中へ入って行く。俺は手に持った荷物をグラハムに渡し、
「ただいま。何か変わった事は?」
 ときいた。
 すると、俺の横にいたつぶれがつんつんと俺の服を引っ張って、
「それが後輩かよ?」
 と尋ねて来た。
「そうだよ」
 俺はつぶれを自由な右手で抱え上げる。
「これが君の後輩の、グラハム・エーカーだ」
「ふぅん」
「そして、これが君の先輩のつぶれグラハムだよ、グラハム」
「Yes, sir.」
 軍隊めいた答えがグラハムから聞かれた。
「まだグラハムは来たばかりで何の調整も出来てないんだ、つぶれ、手伝ってくれるかい?」
「了解したよね!」
 つぶれは意外にも楽しそうにそう答えて、俺の腕から飛び降りると、先に居間へと走っ
て行ってしまった。

「特上のマッシュポテトはどこだよね!」
 居間の向こうから叫ぶつぶれの声が俺たちを呼んでいた。

 我が家に新しく来たグラハム・エーカーは、もちろん本物のユニオン軍MSWADのトッ
プエースであるグラハム・エーカー上級大尉なわけではない。彼を模してユニオンで作ら
れたアンドロイドだ。愛玩用として作られたつぶれグラハムとは違い、アンドロイドの彼
には各種細かな設定作業が必要だった。グラハム・エーカーはどちらかと言うと、躾が必
要な上級者向けのアンドロイドだと言われているが、しかし、安くない価格でもって別の
タイプのアンドロイドを購入する気には俺にはなれなかった。付属するソフトは基本の日
常雑務処理機能がわずかばかりで、簡単な掃除と洗濯、料理は軽い朝食程度と軍隊方式の
野外炊飯は出来るものの他は学習させなければいけないらしい。他は、高度なMS操縦機
能がデフォルトである。これはオリジナルのグラハム・エーカーのスペックにほぼ忠実に
作られた趣味的要素が強い機種な為だ。その為に、戦場で使われる事は硬く禁止されていて、
ユニオン同盟国以外の国や、戦争や紛争が認められる国への輸出入は厳しく規制されていた。
日本に住んでいて良かったと俺は思う。でなければこんな簡単にグラハム・エーカータイ
プのアンドロイドは手に入れられない。たとえ家事や対人の基本性能が専用のそれに劣っ
ていても、やはり俺はグラハムタイプが欲しかった。
「まあ、いい、俺が家を空けてる間、つぶれの様子を見てくれれば十分だ」
 と俺は開き直った考えをしていた。実際、家政婦を雇わなくとも、一通りの家事は自分
で出来たし、本当に欲しいのは、自分が居ない間につぶれの面倒を見てくれる相手なのだ。
これで、一日二日の出張だって心置きなく出来るし、つぶれの食事の世話が減るだけでも
随分と気楽になれた。それと、左腕が使えない間の会社への送迎だ。車が運転出来なくては、
いくらそれほど遠くないとはいえ4km以上ある道のりを、怪我をした身で鞄を持ち歩き
通う気にはなれなかった。グラハム・エーカーは自家用車の運転資格を有していて、それ
こそ今必要だと俺は思った。

 俺とつぶれが自宅に帰った初日から、早速グラハムは役に立ってくれた。

まず、つぶれと彼自身用のマッシュポテトを作ってくれたし(彼らにはポテトがあれば他
に燃料補給は基本的に必要ない)、それから、左腕をL字にギブスで固定されたままでど
うにも不便だった俺の洗髪を風呂場で手伝ってくれた。
「君には介護機能もあったっけ?」
「No, sir. しかしこれくらいは出来る」
 腕まくりをし、スラックスの裾をたくし上げて俺の頭をがしがし洗うグラハムの手つきは、
たしかに介護用だとしたら乱雑だ。生体部品も多く使われているつぶれや彼も考えてみれば、
代謝機能があるから毎日ではないが時折はシャワーか風呂を必要とした。洗髪くらいは出
来て当たり前か。
「そうだ、この後つぶれも洗ってやってくれ、ついでに君も風呂を使え」
「Yes, sir.」
 大叔母の所ではつぶれは洗って貰っていないはずだ、気が引けてそこまで大叔母には頼
めなかった。
 風呂を出て、寝間着に着替えつつ、つぶれを呼び寄せる。前開きのパジャマは、腕は通し
やすいが、左手が上手く使えない身にはボタンが留めずらい、グラハムに頼むと、すぐに
手伝ってくれた。やはりこれはいて助かる。
「つぶれ、今週はまだ風呂に入ってないだろ、グラハムに洗って貰え」
「マスターはもう終わったのかよ?」
「ああ先に使わせて貰ったよ」
 つぶれが服を脱ぐのを片手で手伝いながら、グラハムに風呂の使い方やタオル等の場所
を教える。
「君、私を丁寧に扱わないと承知しないんだよね!」
「了解した」
 命令するつぶれに答えつつ、グラハムもエプロンを外し、シャツのボタンを外していく。
俺はつぶれの服を全部脱がし終わると、つぶれの着替えを探しに、大叔母の所から持って
帰って来たつぶれの荷物を開けに居間へ行った。
 つぶれの着替えを用意しつつ、そういえばグラハムにも着替えが必要だと思い出す。
俺と身長はそれほど変わらないし、最近少し貫禄がついて来た自分の方がグラハムより太
めだろう。とりあえず俺のでいいや、と適当に見繕う。
 そうこうしていると、何やら風呂場が騒がしい。つぶれが何か騒いでいるようだ。

「どうした、大丈夫か?」
 俺は着替えを持って、風呂場の扉を開けた。グラハムの裸の背中が目に飛び込んで来て、
俺の心臓がいきなり鼓動を早める。いや、これはアンドロイドだ、アンドロイド、いくら
憧れのトップエースでも、こんなに動揺すんな俺。
 そして肝心のつぶれはといえば、彼用のたらいバスタブの中に立って、グラハムに何事
か叫んでいる。俺を見つけるとすぐに、
「これは私の頭を掴んで持ち上げるんだよね! ありえないんだよね! 丁寧に扱え! 
丁寧に扱えと言ったんだよね!!」
 と騒ぎ立てている。途中からつぶれは俺ではなくグラハムに向かって叫んでいた。
「私はユニオンのつぶれグラハム・エーカーなんだよね! ぬいぐるみではないんだよね!」
 随分とご立腹な様子だ。俺はつぶれが訴える事を冷静になれと自分に言い聞かせつつ、
復唱した。
「頭を掴んで持ち上げる……?」
「そうなんだよね! 酷い扱いだよね!」
 どうやらグラハムは、つぶれをたらいに入れる時にでも、頭を掴んでつぶれを持ち上げ
たとそういう事らしい。それは怒るだろう、つぶれは今までそんな事は誰にもされた事は
ないはずだ。赤ん坊のようなプロポーションのつぶれに対して、人間ならば大抵誰でも自
然に胴体を抱えるものだ。
「グラハム、つぶれを持ち上げるときは、脇の下、胴を持つんだ、わかるか?」
「Yes, sir.」
 裸でつぶれのたらいの前にしゃがみ込んでいたグラハムが、俺に振り返って答える。
俺に向けられた緑の視線に、俺は追いやったはずの動揺が、また自分を襲うのを感じた。
「それから私を洗う湯の温度は38℃なんだよね! 私はあまり熱い湯は好まないんだよね!」
「承知した」
「とにかくグラハムはつぶれの指示に従うように、つぶれは後輩を良く指導するんだ。
それと着替えはここに置いとくからな、ちゃんと水分を拭き取ってから着ろ」
 それだけ言って「Yes, sir.」の声を聞きつつ風呂場の扉を閉める。
 こいつら大丈夫なのかと一抹の不安が湧いたが、初日からつぶれ相手にはこれは仕方が
ないかと思い直す。つぶれは自己主張が激しく、誰が相手でも遠慮はない。

片やグラハムは、まだ始動し始めたばかりの新米アンドロイドだ、細かい事はこれから教
えて行くしかない。グラハム同士、仲良くなってくれればいいんだが。

 それから数日は、社長である俺が留守にしていた間の会社の諸々の決済や、溜まってい
た仕事に追われて、毎日帰宅は遅くなった。社長が数日居なくなったくらいで機能しなく
なる会社はまともじゃないからな、と親父が言っていた事をふと思い出す。実務は他の者
で回せなければまともな会社ではないと言う事らしい。中小企業ではあったが、古くから
続く危険物劇物薬物の取り扱い商社だ。一定の販路を確保して続いてきた会社は、社長が
一週間休んだくらいでは重大な支障はきたさずに済んだ。しかし専務にそのしわ寄せは行っ
ていたようで、特に彼は疲れた顔をしていた。
 専務は俺が入院中も毎日一日一回は病院に顔を見せてくれていた。見舞いと社内確認や
報告の為だ。病院では彼に、
「こんな時に、結婚してれば良かったと思うだろ?」
 と散々言われたが、しかし俺は随分と彼に感謝していた。俺よりも一回り以上も年上の
専務を、俺は社長就任からずっと頼りにしている。
「それはもう、叔母上に散々言われましたよ」
 そうだろうそうだろう、と楽しそうに俺に言う。からかわれているのが分った。
「退院したらどうやって会社に通う気だ?」
 専務はギブスの俺の腕を見ながら言う。
「それは大丈夫です。運転手は用意出来ましたから」
「なんだ、運転手付きか? 贅沢だな」
 とてもそんな人間を雇えるような規模の会社ではない。
「いえ、家の事も出来るように、アンドロイドを一体用意する事にしました」
「何ぃ! それこそ贅沢だ。嫁の方が安上がりだぞ」
 そのアンドロイドに今は毎日送り迎えをしてもらっている。最初の日の朝は、ギブス姿
で出社した俺に、社内の者は驚いて、誰に送って貰ったのかと尋ねられた。いや、送迎も
出来るロボットにね、とだけ答えておいた。何故かアンドロイドと答えるのが躊躇われた。
やはり少し贅沢かなと思ったし、随分と趣味に走った買い物だという自覚はあったのだ。
しかし、そのロボットがグラハム型のアンドロイドだと言う事は、当たり前だがすぐに社
内に知れ渡った。

いや、決して隠していたわけではないが、気恥ずかしさがあったのだ。白人型の美しいア
ンドロイドと暮らしているという事が。
「社長は本当グラハム好きですよねー」
 と事務の女子社員ははばかりもなく俺に言った。
「元々はMSが好きなんだよ、でもさすがに本物のMSは買えないからなぁ」
 皆、元々俺のMS好きが高じて、つぶれフラッグと共につぶれグラハムを可愛がってい
る事は知っていたから、それ程今回のグラハム型アンドロイド購入に驚かれはしなかった
ようで、俺は少し安堵した。
「でも、グラハムタイプはあんまり家事が得意じゃなくてな」
「じゃあ何の為に買ったんですかぁ?」
「MS談義の為かな」
「何ですかそれはー」
 女子社員に冗談で返しながら、俺は彼を選んだ理由を考える。俺はまあ言ってしまえば
フラッグ好きで、オリジナルグラハムのファンなのだ。彼の卓越したMS操縦技術や戦績
の他にも、その華麗な外見を裏切る大胆で個性的な言動はファンの間では有名で、信奉者
は多い。だからグラハム型アンドロイドなとどいう物が作られるわけだろう。それに本当
にMSの知識は半端ではない、ユニオン意外のMSや、各地の戦闘データまで、公開可能
なものはびっしり彼の頭に入っていた。グラハムが来てから多忙過ぎて、ゆっくり話す時
間がまだ取れないのがくやしいくらいだ。次の週末には、いや、つぶれ達との夕食までに
帰れるようになれば、きっとグラハムと話も出来るはずだ。今日はつぶれが眠る前には帰
れるだろうか、処理が必要なメールに目を通しながら、俺は仕事を切り上げる時間を算段
した。

 ようやく帰宅のメドがついて、自宅のグラハムに迎えに来てくれるように連絡を入れる。
今日は久しぶりにつぶれがまだ起きている時間で、二人で一緒に迎えに来てくれた。帰り
道の車内でつぶれはご機嫌だ。俺が居ない時はグラハムがつぶれを寝かしつけているらしい、
どんな会話をしているのかと興味深い。つぶれは寝物語が好きだ。今日は久しぶりに俺が
寝かしつけよう、夕飯と風呂はその後で良い。忙しい日々にはそういう憩いが欲しいもんだ。

「グラハムは一緒に寝ないのかよ?」
 と久しぶりに俺の横で眠りにつく事になったつぶれが俺にきく。ブルーのパジャマに着
替えてオーバーフラッグの飛行形態型のぬいぐるみを抱えている、愛らしい姿だ。ぷにぷに
の感触のほっぺたをくにくにと触りながら俺は、
「グラハムの寝室は別の部屋だろ、グラハムと一緒に眠りたかったら、あっちに行っても
いいぞ」
 と言った。でも今は俺の夕食の準備してるけどな。
「私はマスターと寝るよね! マスターは私が眠るまで話し相手になるよね!」
 だそうだ。それからつぶれは今日あった出来事を話し始めた。家の庭を巡回に来たボス
猫を捕まえようとしたら逃げられた話や、フラッグで散歩に出たらカラスに絡まれた話。
そう言えばまだあの日の話を聞いていない、俺が夜遅くまで留守にしていて、フラッグが
壊れてつぶれが行方不明になった、俺が怪我をしたあの日の話。
そう思っている内に、つぶれはもうスリープモードに入っていた。これで朝、設定され
た時間までは非常事態に緊急起動しない限りつぶれは起きない。静かに寝息に似たスリー
プ音を立てるだけだ。自分も眠りそうになったが、飯食わなきゃだ。俺は重い身体を起こ
して、グラハムが待つだろうダイニングキッチンへ向かった。
「夕食はこれでいいか、マスター」
 つぶれグラハムと同様に、グラハムにも俺はマスターと呼ばせる事にした。名前で呼ば
れるのは何か気恥ずかしいし、他に呼ばれ慣れた名称は「社長」だったが、それを家で呼
ばれるのは違う。だからマスターに落ち着いたのだ、家政婦代わりのアンドロイドとはいえ、
まさかご主人様とかグラハムに呼ばれたらそれはそれでまた恥ずかしすぎる。
「いいよ、ありがとうグラハム」
 用意された夕食は、帰宅時間に合わせてグラハムが炊いてくれた白米と、他は缶詰の味
噌鯖を温めたものと、チーズかまぼこをフライパンで焼いたもの、わかめと麩のインスタ
ントみそ汁だ。他に菜もののおひたしか、酢の物でもあれば嬉しいが、グラハムに料理を
教えている暇がまだほとんど取れないので仕方がない。この際、非常用の食料で賞味期限
が切れそうな物を処分してしまおうと思っている。
「他に何かする事はあるか、マスター」
 俺の横でそうきくグラハムに、

「風呂はもう湧いてるんだろ? じゃあ洗濯は明日でいいから、ここに座ってろ、あ、やっ
ぱ熱いほうじ茶煎れてくれ」
 と言った。
「了解した、マスター」
 グラハムは温めた南部鉄瓶に加賀棒茶を入れて、ポットの湯を湧かし直す。俺好みの熱
いほうじ茶の煎れ方を俺はグラハムに教えていた。テキパキと動くグラハムの姿を眺めて、
俺は、嫁よりずっといいんじゃないか、と思った。多分どんな嫁も一杯の番茶の為に、鉄
瓶と湯呑みを温め、置いた湯を湧かし直すような手間は毎回掛けてくれないんじゃないか
と思う。少なくとも俺ならそうだ、面倒すぎる。グラハムの手によって目の前に置かれた
湯呑みを眺めて、良い買い物じゃないかと俺は思った。

 次の週末が来て、俺はやっとゆっくりと家で休みが取れる事になった。怪我をした事で、
毎週のようにあった接待や営業のゴルフの予定が全部キャンセルになり、俺は少しほっと
していた。別にゴルフが嫌いなわけじゃないが、どちらかというとインドア派だと自分は思う。
 一方、グラハムは、合間を見て少しつづ教えたかいもあり、掃除機や洗濯機の使い方、ゴ
ミを出す日、一日に用意する食事の量やタイミング諸々、我が家の生活をかなり覚えてき
ていた。最初は心配していたつぶれグラハムとの仲も悪くはないようだ。
 今夜は俺の指導でグラハムに夕食を作らせようと、午後に買い出しに出る事にした。片手
がまだ不自由な俺は、運転と荷物持ちをさせる為にグラハムも買い出しに連れて行く事に
する。素材の選び方を教えれば、日々の買い出しだってグラハムにさせる事も可能だろう。
出かける準備をしていると、ソファーの上で、最近グラハムと作ったと言う俺の積みプラ
のHGレジェンドガンダムとガチャポンで出したグフとを戦わせて遊んでいたつぶれが、
「私も連れて行くよね!」
 と言って、ソファーから飛び降りて来た。両手にはレジェンドとグフを持ったままだ。
「グフはいいけどレジェンドは置いてけよ」
 と俺は言って、つぶれも連れて行く事にする。
「私のフラッグを持って行っても良いかよ?」
 と聞いてきたが、それは駄目だと禁止した。買い物に行くのにフラッグに乗られたら危
険でしょうがない。

元々は屋内で乗り回すような物ではないのだ、他に人が居ないのを良い事に、家では室内
で乗り回させていたりするが、他ではマナー違反だ。
 近所のスーパーマーケットに着いて俺は少しだけつぶれを連れて来たのを後悔した。
つぶれは短い足で歩くのを嫌がって、グラハムに肩車をさせていた。ただでさえ目立つ容
貌をした長身のグラハムの後ろ頭に、それを縦につぶして小さくした容姿のつぶれが小さ
な手でグラハムの巻き毛を引っ掴みしがみついている。これはもう必要以上に目立ち過ぎ
ている。すれ違う人がほぼ全員振り返ってグラハムとつぶれを見るのがわかるのだ。せめ
てグラハムだけなら、ちょっと目立つ容姿の白人だ、くらいにしか思われないだろうに。
なんか凄い羞恥プレイを受けている気分だ。せめて知り合いに遭遇しませんように! いや、
でも知り合いならつぶれの事は知ってるだろうし、どちらかというとグラハムを誰だ? 
と訊かれるような気がする。とにかく早く買い物を済ませて帰るぞ、この好奇に満ちた視
線はなんか居たたまれない。
 そんな俺の心の内など知ったことではないつぶれが、グラハムの上から、
「ジャガイモはキタアカリが食べたいんだよね! それと今日のおやつはドーナツなんだ
よね!」
 と意気揚々と指示を出してくる。
「ドーナツはどこのがいいんだ?」
 と俺がきくと、
「マスターが作ったのが食べたいんだよね!」
 とにこにこ笑いながら答えてくれた。俺が作った事があるドーナツは、ホットケーキミッ
クスをこねて丸めて揚げた上に砂糖を振りかけただけの簡単な物で、それがどうしてつぶ
れのお気に入りになったのか正直俺には分らなかった。
「じゃあ、今日はドーナツの作り方もグラハムに教えるかな」
 と、食材の他にホットケーキミックスの購入を決めた。
 製菓用品の棚の前で物色中のその時だ、
「あら名無し商会の社長さん?」
 いきなり声を掛けられた。俺が心底びびって振り向くと、そこに居たのは知り合いの業
者の奥さんだ。
「こ、こんにちは、奇遇ですね」
「まあ、本当に、こんな所でお会いするなんて、よくこちらにはいらっしゃるの?」
 そう話す彼女の視線は、俺ではなく後ろのグラハムとつぶれに釘づけだ。

「よく来ますよ、近いんで。まあ休みの日より、平日の夜とかの方が多いんですけど」
 彼女がもの凄く俺の連れの事を知りたそうなのは目に見えたが、俺は何か言われない限り、
グラハム達について自分からは話さない事にした。
「後ろの方達はお連れさんかしら?」
 やはり訊いてくるのか……。
「はい、俺んちのお手伝いさんです」
「お手伝いさん?」
「何ぶん独り暮らしで、家の隅々までは中々手が回らない物ですから、それに、怪我しちゃ
いましてね」
 もうギブスははずれていたものの、まだ上手く動かせない左腕をさすりながら俺は答えた。
「まあ、そういえば聞きましたわ、怪我をなさって入院されたとか」
「ええ、もう先週退院しました。そんな大げさなものじゃなかったんですけどね、肘にひ
びが入ってしまって」
「それは不便ですわねぇ」
「ええ、それで家に来てもらったんです」
「まあそうですの、お知り合いか何か?」
「いえ、アンドロイドですよ」
「まあまあ、そうなんですの、人かと思いましたわ、本当によく出来ていて」
 と彼女は一層声を高くして、感心したようにグラハムを見て話した。
「まあ、そうなんですの。可愛らしいのはうわさに聞くつぶれちゃんかしら?」
 俺のつぶれ愛好はそんな所でまで有名なのか……。
「はい、つぶれグラハムと言います。賢いんですが口が悪いんですよ」
「賢いのは合っているよね! しかし口が悪いわけではないんだよね!」
 俺の言葉に反応したつぶれが予想通りの主張を始める。
「まあ、そんなに賢いの、さすがねぇ」
「何も知らないくせに何で君はそんな事が言えるのかよ?」
 つぶれが社交辞令というおべっかに特に敏感に反応するのは、散々体験してきている。
これには最近慣れてきたが、最初は冷や汗をかいた物だ。
「こら、つぶれ、褒められて毒づくな、だから口が悪いって言うんだぞ」
「私は素直なだけなんだよね! 別に毒づいてないんだよね!」
「すいませんねユニークな性格で。まあこいつの事は気にしないで下さい」

 いきなりのつぶれからの攻撃に、彼女は顔を引きつらせて言葉を失っていた。ここは早々
に退散しよう。
「じゃあ、また、ご主人によろしくお伝え下さい」
 俺はおざなりの挨拶を済ませて、その場を離れた。きっと家に帰ったならば彼女は、
突然のつぶれの失礼な言い様を、家の者に語って聞かせるのだろう。そうか、そうやって
俺のつぶれグラハムは有名になるわけだな。やっと少し理解した。でもつぶれのおかげで
彼女が興味津々で見ていたグラハムについてはあまりつっこんで訊かれなくて済んだ。
早く帰ってドーナツを作ってやろう。

 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ トリアエズココマデ ツヅキハマタコンドダヨネ!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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