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↑便乗

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 カルの腕を掴み、力をこめて握り締め、そして引き寄せる。
 その手はいつもより冷たかった。
 いつもそうだった。 DSの手は、肌は、唇さえも、冷ややかで冷たい。
 そこに浮かぶ笑みさえも。
「…ダークシュ…」
 言いかけたとき、ふいに抱き寄せられた。冷たい唇が、カルの口をふさぎ、押し開ける。
 DSは、受け入れるいとまさえ許さなかった。有無を言わせず押し入った舌は、つむぎかけたカルの言葉を絡めとり、もてあそぶ。

「…」
 カルは、声にならない声をあげた。その胸を、冷たい指が滑り、そして突起へと触れていた。
「…」
 カルの全てをから娶っていた、舌がゆっくりと離れて行く。見上げるDSは、いつもの、酷薄な笑みを浮かべていた。
「深く流れる潮よ、血潮よ。鼓動と共に高なれ…」
「風の息吹よ、気の流れよ、我が元に集いて、力となれ…」
 反射的に、カルも呪文を唱えていた。DSがよくやるたわむれ。
 その腕で、カルを押さえつけ、その指で、カルを弄びながら、試すように呪いの言葉を呟いてみせる。
 たわむれ…DSにとってはただのたわむれかもしれない。けれど、DSほどの力もつ魔道師ならば、呟くどんな言葉も呪いの力を持つ。
「闇の奥底にて力を蓄えよ…」
「邪なる響きを阻み、うつろの中へと捨て去れぇ…」
 冷たい指は胸の突起から、滑るように動いていた。
「赤き血潮…」
 指はみぞおちを走り、
「黒き吐息…」
 裏返って冷たい爪でカルの腹を、撫でて行く。腹筋の一つ一つの膨らみと、くぼみとを行き過ぎ、
「秘めたる力…」
「…うず、巻きてその響きを捨て…」
 そして、その先の茂みと、カル自身へと触れた。
「我が導きに応え…」
 起立するそれを嬲るように触れた後、
「我が求めに応えよ」

「!」
 ふいに、カルの足が、引き上げられた。DSの指が、痛いほど強く、カルのももを掴み、そして肩も届けとばかり、押し上げていた。
「…ダーシュ…」
 どんな辱めも、戒めも、恐れた事は無かった。
 カルの全ては、DSのためにあった。誰にも求められず、誰にも必要とされず、疎まれ、封じられ、そこでただ生きる事さえ許されず、母の手を持って滅ぼされようとした、この身だった。
 そして、ただ一人の肉親さえ、見分ける事も無く滅ぼしたこの力だった。
「カル・ス」
 DSは、冷たい笑みを浮かべた。
 笑いに歪む口元から現れた舌が、思うところありげに、唇をうるおした。
「お前は、俺のものだ…」

END

調子に乗って便乗してみますた。


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