虚無への供物 ムレタと蒼兄さん
更新日: 2011-05-02 (月) 18:05:18
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| いつぞや見つけた虚無へのクモシネタ、今度はムレタと蒼兄さんだよ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| これは本編の前の話だね
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| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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パリへ、という相手の言葉に頷きながら牟礼田俊夫は目を細めた。
西日が強いのは趣味ではないな、とそんなことを考えながら再び首肯した。
「あちらに欧州総局があるんだよ。まあ、それの手伝いに駆出されるようなものさ」
「出発は?」
「再来週だな。暫く帰国できそうにないから、次にこうして君とゆっくり話すのはいつになるやら」
それは大変だ、と氷沼蒼司は呟いた。
何を大変と感じているのか、或いはいないのか。回答は牟礼田の理解の外に落とされている。
「――カーテンを閉めさせてもらうよ、どうにも西日が強くてね」
「どうぞ」
素っ気無くも聞こえる返答に肩を竦めてみせ、牟礼田は立ち上がり蒼司の背後に回る。
カーテンの飾り紐に右手を伸ばし、それを引っ張りかけてふと手を止めて視線を転じた。
蒼司のほっそりとした首筋は、血管が透けて見えるかと思えるほどに白い。
これを自らの目で見ることができないとは、蒼司には大いなる不幸であるはずだと牟礼田は考えた。
柔らかな髪とそれに隠れたうなじ、そこに触れたいという欲求に囚われ、それに身を委ねた。
指先に伝わってくる感触は背中に達し、それはやがて震えへと姿を変えて牟礼田を絡め取ろうとする。
蒼司は逆らおうとする素振りは見せないものの、さりとて牟礼田に一切を委ねようとする気配もない。
まるで人形のようだ――そう考えて牟礼田は口元に苦笑を閃かせた。今更何を、と思えたのだ。
幼い頃から蒼司に魅せられ続けてきた。柔らかな皮膚と奥深い瞳、控え目に微笑む血の通う人形。
それが蒼司だった。少なくとも、牟礼田にとってはそうであり続けた。
或いはその深さを誰も知らぬ湖か。風が吹けば湖面に漣が走る。蒼司の感情の動きがまさにそれであった。
心の奥底では激しい炎が白光を放って燃えがっているとしても、それが表面に立ち上ることは皆無。
憤怒の情を表す時ですらひたすら物静かに、だがそれが却って空恐ろしくすらある。
――湖の水面には決して走らぬ大波を生じせしめたい。
――表層しか覗かせてはくれぬ人形を思いの通りに動かしたい。
その欲望を抱き始めたのはいつのことか、既に定かではなくなっていた。
自分が勝手に誘惑を感じているだけのことと思えば可笑しくもあった。
何しろ、蒼司にはそのようなつもりは毛頭ないのだから。
今もこうして牟礼田の指に髪を梳かれながら、まるで自分のことではないかのような風情だった。
「……蒼司君」
応えはないが、それでよいのだった。君は恐ろしい人だ、と心の中で呼びかけた。
その恐ろしさに僕は魅せられ、雁字搦めに縛られた。やがてこの欲望に従うことになるかもしれない。
そうなった時、蒼司は何を思うのか。いや、そのような時は本当に訪れるのだろうか。
蒼司は数学者として身を立てていくであろうし、今のところ家業を継ぐ気などないように見える。
牟礼田は牟礼田で通信社の仕事を続けていくつもりであるから、二人の道が交わることはないように思われた。
「蒼司君」
再び呼びかける。これ以上触れていては自分の度を越してしまうという警告は理性の仕業か。
指の動きを止めようとした刹那、静かな声が牟礼田の鼓膜を揺すぶった。
「確かに、少し西日がきついかもしれない」
「――こんな窓際に座っていて、よくも平気なものだと思っていたところだよ」
「そんな場所にソファを置いたのは誰だろうね」
僕だな、と笑って牟礼田は身をよじった。左手を伸ばし、飾り紐をほどく。
カーテンはまるで抵抗するかのようにぎこちない動きで牟礼田に従って閉じられていく。
しゅる、と乾いた音が室内を満たした時、牟礼田は己が指先が一層深く蒼司の髪の中に沈んでいくのを感じていた。
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| | □ STOP. | | 何だかキャラが違っちゃったかも。
| | | | ∧_∧ ふう……
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