試練:新訳
更新日: 2011-04-29 (金) 23:54:27
試練:新訳の学者と医者の会話から。1/2
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「もう屍人にもあんたにも懲り懲りだ。」
目の前の男は怪訝な顔をする。それもその筈だ、彼には日本語が通じない。
日本語も喋れない癖に、この石油危機のご時勢で呪われた村に観光とは
何て呑気な奴なんだろう。全く、厄介なお荷物を背負い込んだものだ。
こんなにトロくて鈍い奴がいたら、ますます死に難くなっちまう。
俺は勘付かれない様に心の中で悪態を吐いた。
†
『お疲れのようだ……少しお休みになられた方が良いですね』
『いや…』『しかし息も荒い、熱が有るかもしれません。』
それは元からだ、と口に出す前に彼は予告無しに近づき、熱を測ろうと額に手をやった。
いきなりの事に心臓が跳ね上がる。至近距離で彼を見るのは初めてだ。
彼の蟲惑的な美貌は薄暗い照明に良く映えていた。
彫像の様な整った顔立ちとアジア系特有のきめ細やかな肌、
その顔が快楽に喜び、また苦しみ歪んだりする時も有るのだろうか、
このすべらかで冷たい皮膚の下に、私達と同じ暖かい血が通っているのだろうか、
―学者の潜在的本能かも知れないが、私は徐にそれを暴いてみたいと思った。
『熱は無いみたいですが…ん?私の顔に何か付いていますか。』
『いや』
私は慌てて視線を逸らす、変に思われていなければ良いが…
そして彼は、無理はしないほうが良いと言い元の場所に戻ってしまった。
…"しまった"?これでは彼が離れた事を惜しんでいるみたいじゃないか!
同性愛者じゃ有るまいし、こんな事を考えるなんて常軌を逸している。
一応私は妻子持ち(2ヶ月前に離婚)のダディだ…きっと悪い夢でも見てるのさ。
別の話題にでも集中すればこの悪い夢は覚めるに違いない。
『そういえば、君の後ろに飾ってある絵はどういう絵なんだい?』
『これは昔から飾ってあったので私にも…近くで見ても良いですよ。』
『ありがとう』
私は席を立ち、あの奇妙な絵画に近づくと、運とタイミングが悪いのか、
連続のくしゃみが始まってしまった。バランスを失った私はよろけて
椅子の足に引っかかり、倒れこんだ拍子に体を打ってしまった。
『くそっ!相変わらず運だけは悪い…』
『大丈夫ですか。』『ああ、すまない。大丈…!!』
全身の血が逆流する。
すぐ下で彼が私を見上げていたのだ、どうやら彼の椅子の上に倒れこんだらしい。
憎らしくなる程の無表情で彼は、緊張の余り硬直してしまった私を冷ややかに見ていた。
『さっきから動きませんが、ぎっくり腰ですか?』『いや…まさか!まだ37だぞ。はは…』
『ならその重い体を退けてくれ。』
皮肉めいた突っ込みと冷たい視線に焦って、返す言葉を見つけられない。
怪しい男と思われたろうか…彼は不機嫌そうな表情で何やら(日本語で)呟くと、
いつまでも戻らない私を嗜める様に、私の体を押し上げようとしていた。
何故か、私はこの感覚に覚えが有った。この村へ来たのは初めての筈なのに、
遠い昔からこの男と、村で起きた一連の現象を知っていた様な気がするのだ。
黒電話のベルも鳴る気がしていた。が、鳴る筈のベルは鳴らなかった。
―何故私は電話のベルが鳴る事を確信していたんだ?
この時の彼は、ベルが鳴らなかった事を深く考えようとはしなかった。
しかし、彼の知らない所で"輪"が一定で変化している事は確かだ。
そして"輪"の存続が自身に委ねられている事を、彼はまだ知らない。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
初投稿です。オチは皆さんの妄想に任せます。
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