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ゼノギアス ラムサス→シグバル

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                     |  ゼノギアス ラムサス→シグバル
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  終盤につきネタバレ注意
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ シグバルなのにシグ出ないよ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )( ゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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俺の半生を語る上で砂は欠かせない。
俺が18年の歳月の大半を過ごしたユグドラシルは最新鋭の潜砂艦だったが、どうしてもどこからか砂は入り込んじまう。
艦内はいつも砂っぽかった。
そんな砂とマブダチな俺の人生の一緒に過ごしてきたのが、
シグと爺……もういねぇがミロクのおっさんに代表されるユグドラクルーだ。
だが実を言うとこの大戦、というかフェイと会ってからの一連の事件が起こるまで、俺は筆頭に上げた割にはシグの過去を全然知らなかった。
少しずつ世界の全容だとかを知っていって、
その過程で俺が知らなかったシグの過去やソラリスに拉致されていた間のことなんかを知ることが出来た。
この戦いはいい事ばかりでもなかったけど、俺を色々と成長させてくれた。
デウスとの最終決戦を前に雪原アジトではいま着々と準備が進められている。
ユグドラのことはシグに任せ、俺はあいつを呼び出した。
メルカバーでのあいつは殆ど壊れかけていたが、先生によると「彼はもう大丈夫ですよ」とのことだ。
一体何があったか知らないが先生がそう言うからには間違いはないのだろう。
あいつに用がある、といった時珍しく先生はビックリしたような顔をした後、眼鏡をくいっとかきあげた。
それはそうだろう、普段の俺ならソラリスの奴に話すことなんて何もない。
それどころかよくも今まで地上を好き勝手してくれてたなと殴りかかるところだ。
けど生きて戻れるか分からない戦いの前に、そんな事をしてる暇はない。
今すべきことは心残りを少しでも減らしておくこと。
そんなワケで俺は今、屋上庭園であいつが来るのを待っている、雪が降る中でよ。
ブレイクダブリク生まれ砂漠育ちの俺は本当に寒さに弱い。
砂漠も夜の寒さはきついが、この雪の冷たさとは種類が全然違う。
右手のグローブを外して深深と幾つも降り続ける雪を一つ手のひらに掬ってみる。
痛いくらいに冷たいそれは、じんわりと俺の体温で溶けていき、水となった。
砂漠ではあれほど補給に困る水がこんなに簡単に手に入ることに、世の不条理を感じずにはいられない。
アヴェでは時にそれは人を紛争に巻き込む理由になるというのに、
アヴェから遠く離れたこの地では逆に暖かさを求めてちょっとした諍いが起きる。
「カミサマってやつはまったくよ……」
「デウスのことか?」

突然聞こえた声に驚いて振り向くと、俺が先生を介して呼び出した男、
カーラン・ラムサスが石畳の階段をゆっくりと上ってくるところだった。
さすがゲブラーの総司令官だけあって、気配を殺すのがうまい。
この俺でも声をかけられるまで気付かなかったほどだ。
奴はいつものゲブラー士官服に外套を纏い、しっかりと着込んでやがる。
「デウスとは違う、なんてーか、もっと抽象的なカミサマだ」
「うん?――それよりどういう用件だ。ヒュウガからおまえが呼んでいると聞かされただけで内容までは聞いてない」
階段を上りきったラムサスは俺の横に並ぶと苛立たしげに足を踏み鳴らした。
思わず顔を見ると眉根を寄せて、ここにいるのは本意でないと全身で表現していた。
そのガキっぽさに思わず笑いそうになっちまったが、ここで我慢できなかったらこいつはそのまま帰り、
二度と俺とこうした人気のない場所で会ってくれないだろうと思ったので必死にこらえた。
「いやー俺、ラムサスに言いたいことがあって、それで先生に言付けを頼んだんだ。忙しい所悪いな」
「分かっているならさっさと話せ。くだらぬ内容だったら途中で俺は帰るぞ」
「短気な奴だな……わわ悪い!えーと俺は、その、お前にだな……あー……て!ちょ、帰るなって!」
無言で背を向け階段に向かうラムサスの背中に殆ど怒鳴るように俺は言った。
「お前に礼を言おうと思ってたんだよ!」
その言葉にラムサスは足を止める。あいつが見てないほうが伝えやすいと思った俺はそのまま怒鳴り続けた。
「あのハゲにマルーが捕まった時もお前はあいつに優しくしてくれたって言うし、それと、シグのことも!」
シグの名を出した瞬間ラムサスは勢いよく振り向いた。
その顔は怒ってるような、どうすればいいのか途方にくれたような、そんな表情だった。
「ずっと不思議だった、なんでシグはあんなにうまくユグドラやエーテルを使いこなせるのか!
なんでシグは色々知ってるんだろうって!それに……あいつのピアスの場所とか。
シグは俺が尋ねると辛そうな顔をしたから、ずっと聞けなかった。
でもこの戦いの中でソラリスについて俺が知るとあいつは教えてくれた。俺が知らない間何があったか、何をされていたか」
「それが何故俺への礼に繋がると言うのだ!自慢か、シグルドを手に入れた貴様の、持てる者の驕りか!」

「違うっての!人の話は最後まで聞けこのすっとこどっこい!」
「すっ……一体どういう意味だ?」
「いいから聞け!被験者として薬漬けにされてボロボロになって俺の事もわからないのにそれでも脱走ばかり繰り返して、
本当に死にそうな所だったってシグは言ってた!お前が、カールが居なかったらそのまま死んでたって!
今の自分があるのはあいつのおかげだって、言ってた」
「……」
「……あ、ありがとう、ラムサス。シグを助けてくれて、本当にありがとう」
そして深く頭を垂らして、嘘偽りないことを示した。
王たるもの容易に他人に頭を下げてはなりません!、と教育係を長年務めた爺は言っていたが、ここは下げねばらぬ場所だ。
それがラムサスからシグを奪った形になる俺から通す筋ってもんだ。
「――別に、お前の為にシグルドを助けたわけではない。俺にあいつが必要だったからだ。
それなのにあいつは記憶がもどった途端俺を捨て、お前の所へ去っていった」
思わず顔を上げたくなったが、堪えた。きっとあいつは俺の顔を見ると途中で話すのをやめてしまうだろうと思ったから。
「ずっと、裏切り者だと憎んでいた。そうでも思わないと去られた悲しさで押しつぶされそうだった。
シグルドがいなくなって俺は他人を信じるのが怖くなった。
セラフィータたちを拾った時も、もしかしたら彼女らもシグルドと同じように俺の元を去っていくのかと不安だった。
そして俺は目に見える愛に、ミァンに縋るようになっていった。彼女に愛を求めた、求めすぎた。
その結果は――お前も知っているな」
そこで初めて顔を上げた。ラムサスの声に自嘲じみた笑いが混じっていて、なんとかしないといけないと思った。
「けど、今はお前はセラフィータたちの愛を疑ってはいないんだろ、愛を手に入れたんだろ?」
「そうだ。フェイによって愛を奪われたりしないともわかっている。けれど……やはり心の奥底で疼くものがある」
ラムサスにとってシグルドの存在ってのはこうもデカいものだったのか。
俺は驚いたが、今更奴にくれてやるわけにはいかねぇし、どうしたもんかと頭を悩ましていたら、ラムサスは言葉を続けた。

「だが、ソラリスに居た時と今のお前の傍にいるシグルドでは、悔しいが今のほうが奴は満ち足りているのだろう。
奴の薬物中毒が治ったのも結局はお前のおかげだ。
2年側に居た俺が治せないことも、お前の危機という情報だけで奴は自力で治してしまったしな。
本当はわかっている……シグルドはお前の側にいるのが幸せなんだと」
そこで言葉を切ったラムサスはひたと俺の目を見据えた。鋭く貫くような、強い眼力で。
俺は真っ向からそれを受け止める。何か、こいつは本当に大事な事を告げようとしているとわかったからだ。
「必ず生きて帰れ、バルトロメイ。シグルドの為に、そして何よりお前の為に」
「ああ――おうよ!」
「その時にまた、お前の礼を聞こう。先ほどのは聞かなかった事にする」
「なんだと、おい!ラムサス!」
俺が恥ずかしいのに根性出して言ったってのに、それを聞かなかったことにだとぉ!
だがラムサスはさっさと階段を降り始め、足を止めそうな気配はない。
野郎、マジで聞かなかった事にするつもりだな。
「おい、ラムサス!お前も天使にやられんなよ!帰ってきた時、礼を言う相手が居ないってのもしょぼくれてっからな!」
分かったとでも言うのか、うるさいとでも言うのか。奴は右手をヒラヒラと頭上で振った後、見えなくなった。
まったくこれじゃあ一体何をしにきたのかわかりやしねぇ……。
でもまぁ、これで決して死ぬわけにもいかなくなったな。元からそのつもりもねぇけど。
グローブを外したまんまの右手はすっかり冷たくなって赤くなっちまった。
なんとなしにその手を顔に当ててみるが、特に冷たくねぇ。
こりゃ相当冷え込んじまったな。シグの顔でも見に行きがてら、爺の茶でも飲みにいくか。
神との決戦に向け補給を急ぐユグドラシルへ俺は一時の暖を求めて足を向けた。

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 | |                | |           ∧_∧ 以上です。アーカイブス最高ォ!
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