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野球 千葉ロッテマリーンズ 「君が行く前に」

ナマモノ注意。
需要がないのは分かっているが今日だからこそ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ロッカーのベンチに、着替えもせずにじっと座っている。
ガリガリと右手の爪を噛んで、叱られた小学生みたいに拗ねて膝を抱えている。
着替えようとアンダーシャツを脱いだ俺の背中を、ベチンと音を立てて手のひらが叩く。
「いってえ!」
音の割りにはそれほど痛くなかったが、俺は大声で叫んだ。
何も答えないので、振り返ることはしなかった。
ベチン。
「いってえ!」
また俺は叫んだ。それでも何も言わない。今度はちょっと痛かった。
でもやっぱり、振り向いても掛ける言葉はないから、俺は背中を向けたままだった。
ベチン。
「いってえ!」
3回目は、かなり痛かった。俺の背中は手のひらの形に赤くなっているだろう。
寄ってきた人影が、小柄な身体を屈めてベンチの上の顔を覗き込んだ。
「悔しい?」
「うー」
「泣きたい?」
「うー!」
「ですって」
そう言って、肩を竦める。さすが宇宙人、猫の言葉が分かるらしい。

俺はため息を吐いて、振り向くとバスタオルを頭から被せてやった。
ついでに、泣きやすいように思い切り頭にげんこつを落とした。
 ゴチン。
「うー!」
バスタオルの端をぎゅうっと掴んで、猫が叫んだ。
まだ足りないらしい。背中のもみじのお返しだ、あと2回分は殴ってもいいだろう。
ゴチン。
「うー!」
少し俯いて、叫んだ。もう1回。
ゴチン。
「うー!・・・っう、え・・・」
ようやく足りたのか、大きく息を吸い込んだ。そのまま、肩が震える。
「っひ・・・うっ・・・う・・・」
ぐすん、と鼻を啜る音が聞こえた。バスタオルを強く握ったままの指先が、白くなっていた。
ついでのように、小柄な手のひらがバスタオルの上からぐしゃぐしゃと頭を掻き混ぜた。

「うー・・・」
俺たちはため息を吐いて顔を見合わせた。
手間のかかる奴だ。
北京で打たれたら、誰の背中にもみじを作るのだろう。誰に猫語を通訳してもらうのだろう。
他人事ではあるが、何となく心配になって俺はバスタオルを引っ張った。
取られまいと抵抗する頭が、タオルごと俺の胸に収まった。
今度は手のひらで、軽く頭を叩く。隣からも手が伸びて、同じように頭を叩く。
「うー・・・っ」
浅い呼吸を繰り返して、猫が唸る。
俺は頭を叩きながら、言った。
「・・・今度は、俺たちに投げさせろな」
小さく、頷いた。
「俺たちが、いるんだから」
隣で呟く声にも、頷いた。
強化合宿まで、あと1回しか登板機会はない。そこで勝てなければ、こいつは自分を失ったままだろう。
せめて7回まで投げきれば、後は何とかしてみせる。お前に勝利を挙げてやる。
どんな時も、俺たちがついてるぜ。
いつもライトスタンドに響く歌を、俺は小さく呟いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すっきり勝って旅立ってもらいたいなあ。


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