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マイナー邦楽 「いけないこと」

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
いつぞや揺揺定刻の六弦と四弦で投下した者ですが、今度はPと四弦で書いてみようだなんて無謀な挑戦。サイトに上げたやつを若干手直ししました。
ジャンルがジャンルなので、覚悟のある方のみどうぞ。

ああ、こんなにもイレギュラーな存在が「調和」を叶えようとしているだなんて。自分が産まれたことより君に出逢えたことより、この生命自体が奇跡に等しい。

「……」
「もう大丈夫?」
「…いしは…さ…」
「まだ、って顔だね。気にしないでいいからゆっくりして」

太股の上で優雅な曲線を描く黒髪とは対照的に、恐ろしく不健康な色合いに染まっている輪郭の内側。これが非日常の出来事でないのは、悲しい現実だ。どろどろと陰鬱な光彩を放つ痛ましい瞳。

「また無理した?」
「してない…」
「嘘つかない」
「ー僕は、あの時、自分に出来るだけのこと…やりました。…無理じゃない」

解っている、そんなことは。ただ君は自分で思っているより自分のことを把握出来ていない。そして彼らに対してー或いは、彼にー自身がどれだけ献身的かも知らない。認識する必要が無いならそれはそれで構わないけれど、例えばこんな時。
野良猫のように死に様を隠し通すつもりなんじゃないか、どこか確実に掴んでやらなきゃ違う次元に吹き飛んでしまうのではないか。幻想だか錯覚だか盲信だか、とにかくそう不安にさせる君はひどく現実的。そんなナリしといてさ。

「…やだ」
「どうして?」
「触らな…で」
「ー今日は雨だったね」

雨は嫌い。髪を不必要に湿らせる、古傷を疼かせる。結果、君は不機嫌になる。
だから、触れるべきでない、本当は。優しさで顔を背けてやらないと…彼のように。

「…泣くことないじゃない」
「嫌なんです、こんなの…自分の、体なのに…全然」
「指使いは相変わらず素敵だった」
「でももっと…丈夫だったら、良かったのに…」
(ーいけない子)

そんな風に振る舞うから、余計触れたくなるのに。例え神経を逆撫でするとしても君を独占出来る唯一の機会。雨は嫌いだけど、そこだけは。
顔を覆う手を取ると、余程弱気になっているのか、珍しくゆるりと絡んでくる指。

「サカモトくんは、そんな人じゃない。君が一番知ってるよね」
「……」
「例え死んだって君は何処にも行けないんだよ。ーこんなことじゃ離れられない。揺らいだりしないから」

この冷たい皮膚の裏側に、ベースを歌わせる源がある。自分がもう少し力を込めれば、きっと容易く折れてしまうそれ。
…渇いた音、断末魔の悲鳴。そして、どうなる?

(いけない子、だね)

空いた手で髪を梳くと、抗議の証拠に固く閉じられる瞼。湿気なんて杞憂に過ぎないと告げても聞く耳を持たない。

「ーイシハラさん、嫌い」
「それだけ言えたらもう平気だね」
「……」
「多分もうすぐみんな帰って来るよ」
「目、が」
「大丈夫、赤くなってない」

目の縁を拭って微笑むと、色はまだ薄いけど漸く緩む唇。

「久しぶり見たな、カメカワくんの泣き顔」
「ー見ないで、下さい」
「今隠してどうするの…」

ねえ、君はもっと発散したって構わないんだよ、どうあっても決して此処から逃げられないんだから。居場所なんて腐る程作ってあげるのに。

(…そしたらこっちが倒れるか)
「…ー」
「ん?」

袖口を掴まれ、漆黒の海になだれ込んでいた意識が引き戻された。噛み合わない視線、見え隠れする舌先。

「ありがとうございます…」
「ーいいえ」

うっすらと、雪原に一滴だけ血の雫を落としたように、頬が赤らんだ。…卑怯なんだよ、この短時間で色とりどりの毒を目に刺してきて。もうこれ以上は耐えられない。

「…もうじき雨も止むから」

そろそろ普通に話をしよう。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
貴重なスペースありがとうございました。


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