オリジナル【届かない声流れていく季節】
更新日: 2011-05-03 (火) 12:39:07
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 久々にオリジ。精神系注意
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 病ンデレが好きなんだ…
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
彼は掴み所のないひとだった。まるで風に舞う木の葉のように、
一瞬一瞬で進行方向を変えてゆく。万華鏡のように、様々な表情を見せる。
けれどその中にひとつ、変わらぬ芯を持っている。
そんな彼に俺は惹かれていたのだと思う。
彼と俺とは友人だった。始まりは覚えていない。
いつの間にか出会い、妙に気が合った俺たちはなんとなく一緒にいた。
彼の隣は居心地が良かった。彼も俺の隣を居心地が良いと感じてくれていただろうか。
今となっては知る由もない。
彼は眠っている。
それはある晴れた日の事だった。本屋へと向かう途中、
滅多に着信を告げない俺の携帯がけたたましく叫んだ。
何故かどきりと跳ねた心臓を抑えつつ見たディスプレイには、彼の名前が表示されていた。
「もしもし、どうした?」
すぐに返事は返って来なかった。ただ、小さく呼吸音がしていた。
嫌な予感が増して口を開こうとした直後、彼が笑うのが聞こえた。
「なぁ、……だなぁ」
いつもの彼とは違う、掠れて小さな弱々しい声。
途切れ途切れでよく聞き取れなかったが、なんとなく胸騒ぎがした。
「今どこに居るんだ」
本屋へ向かっていた足を止め、問いかける。
家に居る、と答えを聞くと同時、彼の家へと歩き始めた。
「……何か有ったのか、大丈夫か?」
胸騒ぎが止まらない。問うとまた彼が笑った気配がした。目の前の信号が赤になる。
これを越えて次の角を曲がれば彼の家なのに。イライラして舌打ちをひとつ。
「……眠い。寝ていいかな」
やがて信号が青になり、道路を渡りきった時、しばらく黙っていた彼が言った。
眠いから声に力が無かったのか、と溜め息を吐く。
「寝ればいいけど、俺を家に入れてからにしてくれ」
「……眠くて無理…もう動けないや」
ふぁう、と欠伸が聞こえてくる。相変わらず気紛れなやつだ。そっちから電話してきたのに。
「わかったよ、じゃあしっかり寝てろ」
「…んー…おやすみ、じゃあね」
それだけ言って、ぷつんと通話が切れた。
彼の家――と言ってもマンションの5階の1室だが――の前まで来てしまっていた俺は
もう一度溜め息を吐く。本屋は反対方向だ。面倒だがどうしても必要な本があるから仕方がない。
ついでに彼の集めている本の続編をチェックしてやろう。
本屋から帰ってきて、続編が出ていたと教えてやろうと彼に電話をした。
電話に出たのは彼の母親で、そして俺は彼が自殺しようとした事を知った。
彼の母親が帰宅してみると、血溜まりになったバスタブの中で裸の彼がぐったりしていたらしい。
手首に深い傷痕があったと聞いた。リストカット。
彼の携帯は開かれたまま、俺への通話記録を映していたそうだ。
彼が最期に話す相手に選んだのは、親でもなく兄弟でもなく俺だったのだ。
俺は居てもたっても居られなくなって、彼の居る病院を聞き出してすぐに向かった。
近所で一番大きな病院。面会時間に間に合うだろうか。
汗だくで辿り着いた病室の中で、彼は真っ白な顔色をして眠っていた。
傷を縫合したのだろう、手首には厚く包帯が巻かれている。
肘の内側には点滴が繋がれ、静かに息をしていた。
彼は生きている。
安堵した俺は、久しぶりに声を上げて泣いた。
彼を罵倒しながら、さらさらの髪を撫でた。彼はすぐに目を覚ますのだと思っていた。
それから1ヶ月以上が過ぎた。彼は目覚めない。
医者が言うには身体的には何の問題も無く、脳波に異常もない。いつ目覚めてもいいはずだ。
それなのに彼はひたすらに眠り続けている。
現実の世界を拒否するかのように。俺の事すら拒否するかのように。
手首の傷はとうに塞がって、白い筋が一本付いているだけだ。
彼の寝るベッドの傍の椅子に腰掛け、そこをそっと撫でた。暖かで柔らかで、生きている彼。
「……なあ、あの時なんて言ったんだ。どうして俺に電話したんだ」
俺の問いかけは届かない。答えが返る事も無い。
それでもきっと、いつか彼が目を覚ました時には答えてくれる。
そう信じて俺は、今日も明日も彼の元へと通うだろう。
俺に彼女が出来たとしても、俺が家庭を持ったとしても、
俺たちがじーさんになったとしても、彼を俺の一番に据えよう。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オメヨゴシシツレイシマシタ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
このページのURL: