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シンプソンズ セシル→ボブ→バート『殺人狂兄弟』

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                     | シンプソンズ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 棚37に書いたセシル→ボブ→バートの続きです。タイトルは何となくつけただけ 
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兄さんが変わったと気づいたのは、例の件で二人そろって刑務所にぶち込まれた後だった。
うぬぼれてて、イヤミで、根性曲がってて、威張ってて、きどってて、怒りっぽくて、
嘘つきのくせに単純でおだてに弱くてドジでマヌケなところは子供の頃から僕の知っている兄さんなんだけど・・・・
でも違う。娑婆であの数日一緒に暮らしていたときは全然気づかなかったけど。
兄さんは、あのオーディション以来の僕の知らない間に、ものすごく変わってしまったのだと、今ではわかる。
・・・・兄さんとはもう口もききたくないと、ずっと思っていた。
クラスティーショーはずっと見ていたけれど、兄さんが画面に映るたびに僕の心臓は針に刺されているような気がした。
すごく面白かったんだけどさ。
兄さんがパイを投げつけられたり、クラスティとバカみたいな殴り合いをしたり、大砲で撃ち出されたりするたびに、思わず笑ってしまった。
あの人間大砲は最高だった。
けれど見終わった後、僕はいつもあの日のこと、あの飛び散ったパイのクリームを思い出して、泣いた。
つまり毎週一回は泣いてたってこと。
あの日のニュースを見たとき。兄さんが最初の犯罪、あのコンビニ強盗で捕まったとき、僕はもう本当に、心の底から、ためらいなく笑った。
その後のふたつの殺人未遂と、選挙法違反と、失敗した爆弾テロと、兄さんが捕まるたびに僕は大笑いした。
なにもかも僕より優れていると思っていた兄さんは、ドジな悪党にすぎなかった。
いや、ドジなことは昔から知っていたけれど、それでも兄さんは頭がよくて、行動力があって、声がきれいで、足も僕より大きくて、
とにかく僕は兄さんに絶対にかなわないと思っていたから、この転落はもう本当に愉快だった。
兄は犯罪者。
僕は水力エンジニア。
こりゃ愉快。傑作だ。
まあ、今じゃあ僕もドジな犯罪者だけどね。本当に町を破壊するのってむずかしいよ。
憎い相手を殺すこともね。

・・・・まあともかく、兄さんは変わってしまった。
「兄さんは変わったよね」
刑務所の食堂で食事をしながらそう本人に言ったら、こんな返事。
「監獄にいれば人間は変わるものだ。私のような紳士でも、周りに合わせて獣にならねばならない時もある」
だって。
「たとえばこんな時?」
僕は兄さんのトレーに入っている、おいしそうに焦げ目の付いたウインナーにフォークをのばした。
ダンッ
「あだぁぁーっ!!」
兄さんが僕の足を踏みつけたのだ。しかも思いっきり。
「な、なるほど・・・・よくわかったよ兄さん」
足がじんじんする。ちくしょう、冗談じゃないか。どこが紳士だ。100%ケモノだろ。
やり返したかったけど喧嘩すると看守が飛んで来るのでやめておいた。
僕は兄さんをにらんだけど、兄さんは表情ひとつ変えやしない。
「でもそういう事じゃないんだよ。兄さんが変わったっていうのはさ、ようするにあのこと」
「なんだ?」
「バート・シンプソン」
僕がその名前を口にすると、兄さんは眉間にシワを寄せて目をそらした。
「・・・・・・・・」
「ねえ、まだあいつを殺したい?」
兄さんはそわそわと目を泳がせた後、ため息をひとつついて答えた。
「あの子を愛している。だがやはり・・・・殺したい」
「バートが憎い?」
「ああ。あの子供に出会ってから、たしかに私は変わったよ。憎悪に取り付かれてしまった。あいつのことを考えない日は無くなってしまった」
「それでも愛してるわけ?」
「愛していることも憎んでいることも、どちらも本当の感情なのだ。だが、私があの子を愛しても、どうにもならないだろう。だから・・・・殺すしかないな」
そう言って兄さんは、紙パックの牛乳をすすった。
理不尽だ。僕はそう思った。なんだよその理屈。
バートはなんだか可哀想だ。まだ小さいのに、こんな身勝手な男に命を狙われて。
昔はこんなムチャを言う人じゃなかったと思うんだけど。
兄さんは狂ってしまった。

僕にはもう一つ、不思議なことがあった。
「ねえ、兄さんは僕を恨んでないの?」
「お前を恨む?なぜだ」
本気で不思議そうに兄さんに聞き返された。ええー・・・・だって、だってさあ。僕は…
「僕は兄さんを殺そうとしたじゃないか」
「お前はまだ私を恨んでいるか?」
・・・・・・・・・・・・どうだろう。
なにを言おうか迷っているうちに、兄さんは話を続けた。
「お前が私をどう思っているか知らんが、この大犯罪者サイドショーボブがお前みたいな半人前を恨むなんてことがあるものか」
「…どういう意味さ」
「お前は犯罪者としちゃあ半人前だよセシル」
「ぐぐぐぐぐ・・・・」
むかつく。あからさまに人を馬鹿にした薄笑いで言われるから、よけいに腹が立つ。
いや、理性では、犯罪者として一人前と言われるよりマシだとわかってるんだけど。
「でも僕は兄さんを追いつめたじゃないか。結果的に僕の横領のせいでダムは崩壊して町は水びたしになったし」
「町を水没させるぐらいホーマー・シンプソンでもやった。しかも奴のほうが規模は大きかったぞ?」
「兄さんを殺しかけたことは?」
「だが殺せなかった」
「兄さんだってセルマやバートを殺せなかったじゃないか」
それを言ったのがまずかった。次の瞬間、僕はグイッと襟を両手で掴まれて、ものすごい形相をした兄さんの顔を間近で見せられていた。
「あの悪魔が私にしたことを思い出させるな!!」
兄さんの凶悪なまなざしはまっすぐ僕に向いていた。
僕ではなく幻のバートを見ているのだとしても、背筋が震えた。
暗い目。
憎しみと殺意のこもった目。
「ごめん・・・・」
僕がやっと言葉を振り絞って謝ると、兄さんは正気に戻ったようだった。
「あ・・・・すまないセシル」
そういって襟を掴んでいた手を離した。
「痛くなかったか?お前を怯えさせてしまったか?」
兄さんは心底悪かったというような顔をして、僕の肩をさすった。
「いや・・・・ちょっとびびったけど、大丈夫。気にしないで」

いやあ、本当はかなりびびった。まだ心臓がバクバクいっている。
「おいそこ!喧嘩してるのか?」
振り向くと、看守の一人がこちらに近づいてきていた。
看守というのは何かあるとすぐ反抗だの懲罰だの、ネズミが騒いでいても暴動と言い張りかねない面倒くさい奴らだから、こういうときは適当にごまかす。
「いえ、何でもありませんよ、ちょっと弟と議論していたんです」
「そうそう、その・・・・国際情勢について。やだなー兄さん熱くなっちゃって」
看守は僕らをうさんくさげな目でみまわした。
「・・・・無駄なことしてるなお前ら」
そうだね。なにが悲しくて堀の中で国際情勢について話し合わなきゃならないんだ。野球って言った方がよかったかな。でもそれもなんかなあ。
どっちがより悪党かで喧嘩してるよりマシかもしれないけれど。
それでも看守は納得して向こうへ行ってしまった。僕たちは変わり者と思われているからだろう。とくに兄さんが。
その兄さんはなんだか落ち込んでしまったようだった。
「ウインナーやるよ、セシル」
「ありがとう兄さん」
遠慮無くもらっておく。
「・・・・怒鳴ってしまって悪かった」
「大丈夫だってば。それより僕こそ謝るよ。傷をつついて悪かったね」
「出来ることならバートのことなど忘れてしまいたい。愛も、憎しみも。だがそれが出来ないんだ」
「わかるよ兄さん」
それこそ僕が十年間兄さんに対して抱き続けていた感情だ。兄さんは知りもしないけど。
でなきゃ殺そうとなんてするものか。
たった一人の、僕の兄さん。愛してるよ。
いつからか、・・・・それはもうずっと昔からだと思うけど・・・・兄さんを、そう、今現在兄さんがバートに対して使っているような意味で愛していることに気づいた。
だけど、日常のある瞬間に、本当に突然、無性に憎くなるんだよ。
オーディションのことは、兄さんが悪いんじゃないのはわかってる。
でもどうしようもないんだ。ホント身勝手だよね。わかってるよ。
僕も狂っている。
これはビョーキだ。僕と兄さんの、共通の病。
だけど、兄さんは僕の病気を知らない。兄さんは僕を見ない。
僕はその事を、このまま隠していようと思う。

「セシル」
「なに?」
兄さんは机に肘を乗せて頬杖をつきながら僕をじっと見つめていた。
「お前がまだ私を恨んでいるとしても、私はお前を愛しているよ」
「!!!!!!?」
僕は吹き出してしまった。
「なんだってえ!?」
いきなりなにを言い出すんだよ!
「なにを驚いているんだ?さっきの話の続きだよ。お前を恨んでいるかと、私に聞いただろう?」
「そうだけど・・・・」
愛しているかどうかなんて聞いてないよ。
「お前が側にいてくれると気が楽なんだ。お前が相手なら私も知的レベルを考慮せずに話すことができるし、乱暴な言葉を使わずにすむし」
兄さんが他の囚人、スネークやアイスピックなんかと話すとき、意思の疎通がうまくいかないことがあるのは知ってる。慣れれば気のいい奴らだけど、デュマやシェークスピアやオペラや古典建築の話はあいつらとはできない。
僕はそういうのにあまり興味は無いけど、兄さんの趣味の話につきあえるだけの教養はある。たとえプリンストン大のランクがイェールより下だとしてもだ。
「なにより、お前は私の弟じゃないか。殺されかけたが、愛情は変わらないよ」
「・・・・ありがとう」
僕はなんだか照れくさくなって、顔を下に向けた。
同時に、少しだけ悲しくなった。
兄さんが僕を愛してくれるというのは、兄さんがバートを愛する感情と全然違うんだ。
でもこれも理不尽な悲しみだ。
僕はバートに嫉妬しているのかな。どうなんだろう。
それでもやっぱり兄さんに愛していると言われると、嬉しいところもある。
あんな酷い事をしたのにね。

兄さんがバートを殺さないことを祈っている。
僕も今のところ、兄さんを殺したくないから。

「セシル」
「なに?」
「ウインナー、食べないなら返せ」
「やだ」
僕は急いでウインナーを口に詰め込んだ。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 我ながら捏造乙。 一番上、また番号入れ忘れちゃった・・・
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