Top/38-11

野球 東北楽天ゴールデンイーグルス 岩隈×草野

※ナマモノ注意!杜の都の牛タン球団 
ガラスのエース(21)×ちっこいおっさん(12)

※前回37で投下しましたが容量オーバーのため続きが書き込めませんでした;
改めて投下します。初投稿です、よろしくおねがいします!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

★ ★ ★

昨日は真夏のような暑さで、今日は真冬のような寒さだった。
一体今は何月で、そして日本の季節でいえば今は何なんだろうかって、
疑問に思う。
まして、ここは遠く離れた場所。
我が球団の本拠地からも、そしてあの人がいるであろう場所からも、
もっと遠く、遠くの。

『おう、元気か?そっちはどうだ?』
すっかり夜も更けて、部屋の外から聞こえていた喧騒が寝静まったころ。
電話をかけるには、相手を気遣わなければならない時間であったにもかかわらず
それを忘れさせてしまうような元気な声が、耳に響いてきた。
相変わらず、こっちの都合なんか考えちゃいない。
でもそれが何とも、この人らしくて
俺は思わず声を挙げて笑ってしまった。

『なんだよ、何か可笑しいことでもあったのか』
「いいえ、別に何でも。それより、そっちはどうですか?」
『俺か?俺は元気だよ。今日は雨で試合が中止になったけど』
そうか、どうりで。こっちも寒かったから、きっと向こうはもっともっと寒いだろうと
思っていましたよ。その言葉を喉の奥にとどめてから、
俺は小さな声で呟くように言葉を零した。
「こっちは、試合ができました。
ただ、明日は雨の予報なので中止かもしれないですね」
『そうか。じゃあ、マーはそのまま投げるのかな』
「それはわかりませんけど・・棚可は、やる気十分みたいですよ。
馳世部くんが合流して、いい刺激になっているようです」
合流して、という言葉の前をあえて濁してしまったことに気がついて、
俺は軽く手のひらで口を覆った。
馳世部くんが来たから、この人がここにいないわけではないのに。
急に黙ってしまった俺を気にする風でもなく、
電話の向こうの人物はのんびりとした口調で言葉を繋いでいた。
内容のほとんどが棚可を心配しているような言葉だったので、ため息一つ吐いてから俺は、噛みしめるようにその名を呟いた。

「・・草乃さん」
『ん?なんだよ』
「俺には、何か言うことないんですか?結果、知ってるんでしょう」
我ながら、意地の悪い問いかけかもしれない。
それでも俺は、草乃さんの言葉が聞きたかった。
いつものように笑いかけてくれて、いつものように励ましてくれた存在が
グラウンドにもベンチにも今日はいなかった。
一人のチームメイトが二軍に落ちただけ。
それだけのことで、無様な投球をするわけにはいかない。
エースという称号を背負ってしまっている以上は、そんなことは百も承知だった。
だからせめて、向こうでがんばっているであろうこの人に自慢できるような
投球をしたかったのだ。
ほんの少し沈黙が舞い降りて、電話の向こうからため息とともに言葉が響いてきた。

『岩熊・・』
「・・はい」
『お・・おまえって奴はぁああああ!!!
なんだ、あの6回のピッチングは!お前、相手を舐めてかかってんじゃねぇぞ!』
夜中ということもあって、てっきり小声で褒めてくれるのかと思っていた俺は
受話器に耳を近づけすぎていた。
だからなおさら、草乃さんの大声が耳をつんざくように響き渡ってきて
俺は腰かけていたイスからずり落ちそうになってしまった。
『いくら大量援護があったからってな、気を抜くにも程があるぞ!
そういう態度を相手に見せちまうと、
お前にスキがあるんじゃねぇかって勘ぐるだろうが!
だから、あんな連打ばっかり撃たれちまうんだぞ!』
電話の向こうの草乃さんは、きっと近所迷惑も省みないような勢いでがなりたてている。
受話器からツバが飛んできそうな気がして、
俺は握りしめていた電話を耳から遠ざけてしまうが、
怒っている草乃さんの姿を想像してみたら何だか可笑しくなって
きてしまって、こみ上げる笑いを噛みしめながらいつしかその言葉に耳を傾けていた。

あぁ、まったく変わってない。いつもの、あのグラウンドでの草乃さんだ。
それが嬉しくて、怒られているのに嬉しくなって、俺は笑いが止まらなかった。
『だいたいお前は・・って聞いてんのか?!クマ!!』
「え?あ、はいはい。聞いてますよ。
全くをもって、草乃さんの言う通りですね。
エースたるもの、油断を見せちゃいけないんですよね。はい、その通りです」
『・・岩熊』
「それに、投手陣の柱として後輩に無様な姿を見せちゃいけないんですよね。
ははは、いっつも草乃さんに言われてることなのに」
胸の奥が妙にくすぐったい。別に悲しいわけではないのに、
まるで泣いてしゃくりあげるような勢いで、もう言葉が止まらなくなった。
忘れたことなんて一度もない。いつも、言われ続けていた言葉はずっと胸に
刻まれ続けている。あの、穏やかな口調と、はち切れんばかりの笑顔まで、
すぐに思い起こせるほどに。
胸が疼くように痛くて、俺は笑いを止めることができなかった。
草乃さんは、何も言わずに黙って聞いてくれていた。
こんな時のタイミングも、変わらなかった。どうしても、精神的に崩れそうになって
吐きだしたくてたまらない時、この人はいつも、ただ黙って俺の話を聞いてくれて。
そして、いつもこう言ってくれたのだ。

(クマ、よく聞け。お前はいつだって、一人じゃない)
『クマ、よく聞け。お前はいつだって、一人じゃない』
(俺は、いつでもお前のそばにいるから)
『俺も、すぐにお前のそばに行くから。だから待っててくれ』

遠く遠く離れた、天気も季節も違う場所にいる、
ただ一人のチームメイトの存在がここにいないことが、たまらなく寂しくて。
そしてたまらなく愛おしくなって俺は
いつのまにか目尻に涙を貯めて電話を握り締めていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ちっこいおっさん一軍復帰おめでとう!
でっかいクマーがじゃれつく姿がたまらなくハァハァで
勢いで書いてしまいましたが反省はしてない。
お目々汚し失礼しました!


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