秘密
更新日: 2011-05-03 (火) 14:07:08
他のヤツに抱かれたら少しは気持ちがまぎれるだろうか。
毎日苦しい想いを抱えなくてすむだろうか。
どの女を抱いても結局気持ちがまぎれなかったのだから、それが抱かれるがわになっても同じかもしれないけれど。
「オレの部屋で飲まへんか?明日休みやろ?オレも休みやし」
「でも隊長、下戸なんじゃ」
「ええねん、飲みたい気分なんや。それに酒弱い言うだけで全く飲めへんわけやないんやで?」
「ならいいですけど」
コンビニで薄いカクテルと、こいつ用にビールを数本買った。
これで酔ってたからとでも何でも言い訳はつく。
「かんぱーい!」
アルコール5%の酒を口につける。ぐらりと眩暈がしてきた。あまり飲むと呂律が回らなくなるのを通り越して吐き気が止まらなくなる。
「大丈夫ですか?もう顔が赤いですよ?」
「ああ、平気や。あのな、さっき満喫でオレが途中で言いかけた続き言うわ。あのな・・・、オレ、オマエの童貞貰ってやろか?」
「え?」
「あー、何でもあらへん。酔ってるんや、酒の席ちゅーことで聞かなかったことにせぇへん?」
目を逸らして自嘲する。誰でもええなんてこいつにも失礼だ。
飲み慣れない酒を口に運ぶ。体が熱くなってきた。
「隊長!」
その場でがばっと抱きついてきた。そしてそのままキスされて、口の中に舌を入れられる。
下手やなぁ、こいつキスも慣れてへんのか。
口の中で舌を動かしてリードしてみる。ああ、少し気持ち良くなってきたかも。
そう思っていると尾形がオレから唇を離し、ぜえぜえと荒い呼吸をしている。
「アホやなぁ、鼻で息せぇよ」
「そんなこと言ったって、AV見てもそんなの分からへんやないですか」
「あ?もしかしてキスも初めてか?」
「そうですよ」
「34まで生きてきて、彼女いたことあらへんの?」
「俺が生まれた時はおかんからキスされてると思うんですけど、記憶には無いですし」
「あー、そっか。そうやな。っつかオレでええん?ファーストキスが男って普通に気持ち悪いやろ」
「むしろ隊長だからしたいんです!俺、隊長が好きです、だから隊長に童貞貰ってほしいんです!」
「ほんまにオレでええの?」
「やっぱりあの人以外のヤツにされたいと思いませんよね」
「オレは別に」
「俺ではあの人の代わりにはなれませんけど、それでも俺は隊長を置いて先に結婚するとかないですから」
「シャワー浴びてくるわ。ベッドで待っとれ」
「・・・はい」
シャワーを浴びながら穴の中まで綺麗に洗浄する。あいつが結婚してから男としたのが一切無いからこれも数年ぶりだ。後ろを洗っているうちに勃起してしまい、これからすることを思って更に体が熱くなる。
オレは後輩を利用しようとしている。後輩を巻き込もうとしている。
「オレは・・・」
あいつの笑顔が浮かんだのと同時に射精した。
あまりの最低さに思わず苦笑した。
適当に頭をバスタオルで拭き、居間に戻って残りの酒を飲む。
眼鏡を外しているのでただでさえぼやけている視界が更に歪む。
そして寝室に行くと、こいつは携帯をいじっていた。
「ブログの更新か?」
「ええ、今日行ったラーメン屋のアップです。もうすぐ終わります」
「ふぅん」
どっちにしても眼鏡が無いと見えへんし。というか待ってる間手持ち無沙汰やったんやろな。
しっかしこいつの体、ガリッガリやな。ちゃんとメシ食うとんのか。痩せすぎやで。
あいつから体重10キロぐらい貰えばええんや。
ってまたあいつのコト考えとる。やっぱオレ、ダメやな。
「送信、っと。終わりました」
「あんな?」
「はい?」
「オレ、オマエに恋愛感情正直無いねん」
「知ってます」
「オレを抱いても心まではやれへんで?」
「それも分かってます」
「正直、気持ち悪くなったら途中で帰ってええからな?」
「俺は隊長が好きなんです。ずっと隊長とこうしたかった、でも隊長はあの人が好きだし、絶対無理だと思ってました。だから俺、身代わりでいいんです。身代わりにはなりえないと思いますけど」
「ごめんな」
「謝らないで下さい」
こいつの体の一つ一つに口付けを落としていく。頭の中がどんどん醒めてクリアになっていく。酒が入っているはずなのにもう酔いを感じない。むしろその方が尾形を利用することへの罰になるか。
中心を咥え、口の中で亀頭を転がすように舐める。青臭い臭いと味。深く咥えると喉の奥に当たって少しむせた。
「けはっ」
「大丈夫ですか?」
「ああ」
フェラを続けると尾形の息があがってきた。そろそろか。
立っているところにゴムを被せる。
「あのな、目ぇ逸らした方がええで。あんま見ても綺麗なもんやないしな」
「隊長がする事なら俺、全部見たいです」
「・・・・・・」
指にツバをつけて入りやすいように後ろをほぐす。それからゆっくりと中心に体を沈めていく。
「ぐっ・・・痛・・・」
「隊長、無理しないで」
「ええねん、大丈夫や」
全身からあまりの痛さに汗が噴き出す。数年ぶりのせいか、使ってないからか中が狭くなっている。
けど痛いのは分かってたから。むしろもっと痛くなればええ。もっと。
「はぁー・・・はぁー・・・」
なんとか全部入った。見ると結合しとる部分から血がだらだらと流れている。
流石にこれだけきついと中で少し切ったかもしれない。
「はぁー・・・はぁー・・・」
なんとか腰を上下に動かす。繋がってる部分から水の跳ねる音がぴちゃぴちゃと聞こえる。
「隊長・・・隊長・・・っ!」
尾形が繋がってるまま上半身だけ起こし、抱きついてきた。そのまま歯がぶつかるような激しいキス。
ぴちゃぴちゃとした音がぐちゅぐちゅと卑猥な音に変わり、痛みだけでなく気持ち良ささえ混じってくる。
「ああっ・・・も、出るっ」
「俺も・・・!隊長、愛してます・・・!」
頭が真っ白になって、体の奥に入ってるものがびくびくと跳ねた。
「はぁー・・・はぁー・・・」
シーツも真っ赤。腰もがたがた。明日休みで本当に良かったと思う。
「良かったです・・・。こんなに気持ちいいと思わなかったです・・・」
「そりゃ良かったな」
腕枕されて、こいつの胸から鼓動が早鐘のように聞こえてくる。
「あの・・・隊長さえ良かったら本当に付き合いませんか?」
「どんなにオマエに愛されても、オレはオマエを愛してやらへんと思うで。それでもええの?」
「構いません。愛してます」
「ごめんな、なんか」
「何で謝るんですか」
「オレは・・・」
オマエを愛してないから。
その気持ちを紛らわすようにオレからキスをした。
3度目のこいつとのキス。それは涙の味がした。
最初の時よりキスが少し上手くなったように感じた。
何も知らないヤツに一から教えるのはそれなりに楽しい。
真っ白いキャンバスを汚していく後ろめたさと心地良さ。
もうこいつはまともな恋愛は出来ないだろう。
そんなオレも既に後戻りは出来ないだろう。
それでも抱かれてる間は心が麻痺出来るから。
「あはははははは・・・!」
誰かオレを殺してくれ。
誰かオレが何も考えずにすむようにしてくれ。
誰かオレを・・・助けてくれ。
そうしてオレは何食わぬ顔して仕事であいつに会う。
知っとるか?オレの秘密を。
なぁ?
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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